■この街で大学生活を送りたい!
国内で3番目の帝国大学として1907年に創設された東北大学。1913年には日本の大学で初めて女性の入学を認めました。そして2023年9月、国際的に卓越した研究の展開や経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が見込まれるとして、「国際卓越研究大学」の認定候補に唯一、選ばれました。農学部生物生産科学科海洋生物科学コース3年の田中明子さん(仮名)は現在、青葉山キャンパスで大学生活を送っています。(写真=東北大学提供)
志望校を変更し、地元に近く “ちょうどいい”仙台の大学へ
秋田市出身の田中さんは、中学時代に薬局で職場体験をした経験から薬剤師を志し、京都大学薬学部を第1志望にしていましたが、高校時代に東北大学の説明会へ参加してから、農学部に興味を持つようになります。
――京都大学薬学部から東北大学農学部へというのは、大きな進路変更ですね。
薬学部は将来役に立ちそうだし、「どうせなら高い目標を持とう」と思って京都大学を考えていました。ただ、環境問題にも興味があったので、高校時代に参加した東北大学の説明会で、幅広い研究のなかから柔軟に研究内容を選べることを知ってからは、いろいろなことに興味がある自分には合っているのではないかと思うようになりました。仙台は地元・秋田にも比較的近いですし、都会すぎないところにも魅力を感じていました。実際に住んでみて、自然が豊かな一方、便利で生活しやすく、満足しています。東北大学は国際卓越研究大学の認定候補に選ばれましたが、そういった部分でも大学のすばらしさを実感しています。進路志望を変更して進学できてよかったと思っています。
――青葉山キャンパスから徒歩3分の国際寮に入居しています。これはどのような施設ですか。
東北大学は留学生が多く、外国人と日本人の学生が共同生活できる国際混住型学生寄宿舎「ユニバーシティ・ハウス」を仙台市内に4カ所(計6施設)運営しています。私がいる寮は1フロア2ユニットで、各ユニットに個室が8室あり、キッチンやバスルームは共用です。寄宿料が月2万8千円と安く、理系学部が集まる青葉山キャンパスにも近いです。入居は原則2年以内ですが、私は後輩学生をフォローし、オープンキャンパスでの来場者対応やイベントなどの企画・運営を行うアドバイザーを担当しているので、引き続き入居を認められています。私が入居したときは新型コロナの感染が拡大して2年目で、人間関係の構築に苦労しました。後輩たちに同じ思いをさせたくないという思いで、入居者のサポートができるこの役割を担当しています。
――ご自身の学科やコースはいつ決めるのですか。
農学部では2年進級時に学科やコースを決め、4年次に研究室に配属されます。学部ではさまざまな勉強を通して、自分の研究内容を決めていきます。私は生物生産科学科の海洋生物科学コースを選択し、実験や実習が増えてきました。特色の強い研究室が多いなかで、私はクラゲに関する研究を行える研究室に入りたいと思っています。入学後に学びながら自分のやりたいことを見つけられるところは、東北大学の魅力のひとつです。普段の学生生活では、青葉山キャンパスにある「ラーニングコモンズ」という施設も重宝しています。Wi-Fiが使用でき、一部の座席にはコンセントがあるので、レポート作成や試験勉強で利用することが多いです。
財布のお金を常に把握 節約と工夫で上手にやりくり
――部屋の掃除や食事などはどうしていますか。
ユニバーシティ・ハウスでは、共用部分は清掃してもらえるので、自分の部屋だけをきれいにすればよく、そんなに大変ではありません。キッチンもあるので料理ができないわけではありませんが、私は外食や買ってきたものを食べることが多いです。
――お金の管理はどうしていますか。
家計簿アプリはつけていませんが、銀行口座の残高、クレジットカードの利用状況、財布の中のお金は常に把握して、支出は多めに見積もるよう心がけています。例えば、クレジットカードで4500円を使ったときは、5000円使ったものと切り上げて計算し、常にお金に余裕を持たせる、とか。時間の使い方も同様で、準備に1時間かかると思ったら早めに行動し、レポートの提出も取り組む曜日を決めて計画的に終わらせます。多めに見積もるのは自分の性格で、残高や締め切りまでの余裕がなくなり、気持ちが落ち着かなくなるのが嫌だからです。
その分、趣味にはお金をかけています。手芸の材料や服、漫画などを買うほか、好きなアーティストが何組かいて、アルバムやグッズ、ライブなどで月に平均して2万5千円くらい使っています。ライブは交通費や宿泊費がかさむので、チケットが当たったら、さらなる節約に励みます。今は月に3万円の奨学金と飲食店でのアルバイト代が入りますが、3年になって実験などで放課後の時間が読めないので、アルバイト先と相談しながらできる範囲で続けようと思っています。
――友人との交際費などはどうしていますか。
金銭面を理由に友達との飲み会や旅行などの機会をつぶすのは避けたいので、お金をかけずに楽しめるよう工夫を凝らしています。海洋生物科学コースで仲のいい4人がいて、仙台駅の近くにある「仙台朝市」で安くて新鮮な魚を仕入れ、さばいて食べたこともあります。友達も魚をさばける人が多く、私も地元にいたころから父と釣りに行ったりしていたので、魚は自分たちでおろしました。
――仙台から秋田までそう遠くはないとはいえ、帰省にもお金がかかりますね。
春や夏などの長期休みと年末年始には帰省しています。新幹線だと約1時間半ですが、いつも父が車で送り迎えしてくれます。車だと荷物もたくさん載せられて、ありがたいです。
カリフォルニアへの留学で身についた行動力
――専門的な学びも増えて、ますます忙しそうですね。
研究室に入るのは4年からで、大学院への進学を考えています。留学にも興味があったので2022年秋に米国のカリフォルニア大学に3カ月半、短期留学しました。「毒性学」といったニッチな分野の授業があり、面白かったです。語学力や行動力が身につきました。
東北大学は、興味のあることがあれば受け入れの選択肢が多く、たとえ学びたい分野が漠然としていても入学してから本当にやりたいことを突き詰められるので、とても自由で自分に合っています。この大学に進学してよかったと実感しています。
【家賃相場(月平均)の例】
家賃相場は、月4.7万円(東北大学青葉山キャンパス近隣の川内・荒巻青葉地区で算出)。
※東北大生協 住まい紹介センターにて、2023年度新入生が契約した一般アパートの「ひと月の家賃のみの平均値」です。
東北大学には、男子寮が5つあり、明善寮、松風寮、以文寮、霽風(せいふう)寮の寄宿料は月額4300円、日就寮は月額700円。女子寮は如春寮(月額寄宿料4300円)のほか、留学生も入居可能なユニバーシティ・ハウス(月額寄宿料2万1600円〜)があります。 ※寮には寄宿料のほか別途、諸経費がかかります。
※記事中のデータは特に記載がない限り、2023年9月時点の情報です。
(文=𠮷川明子)
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