「東大はやめたい」息子の志望校変更に、父「就職に不利になる」 親子戦争、どう解決した?

2023/11/02

先輩パパ・ママの受験体験記 

志望校を巡って、父親と意見が合わずに衝突を繰り返す次男との間で、神奈川県の山中里江さん(仮名)は板挟みになって大変な思いをしました。大学受験へのストレスが高まったのは、新型コロナウイルスの影響で、外出自粛のため家族が密になりすぎたことも原因でした。「なんでもひとりで決める次男」が臨んだ難関国立大学受験の結果は?(イラスト=Michiko Nishikawa)

「目指せ東大!」の超進学校 部活も勉強も欲張った

長男の高校が自由な校風だったので、次男が進学した「目指せ東大、旧帝大!」という高校の雰囲気に最初はびっくりしました。ただ、本人が「勉強もサッカーも頑張る」と選んだ高校だったので、週5〜6日の部活動にも手を抜かず、通学のすき間時間を活用して毎日の小テスト対策をしていました。例えば、先輩の公式試合の応援に行っても、合間にみんなで輪になって参考書を読むといった、ちょっと周りからは引かれるようなことも(笑)。チームでは中心選手として活躍でき、いよいよ最後の大会へ向けてラストスパートという時に、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発令されました。2020年春のことでした。

突然の緊急事態宣言 「勉強に集中できない」と涙の訴え

緊急事態宣言が発令され、登校も部活動もできないまま、次男はサッカー部を引退しました。休校となった時点で覚悟ができていたのか、受験へと大きく舵を切って受験勉強に専念し始めました。しかし、外出自粛生活はかなりのストレスでした。

夫はテレワーク、長男は大学のオンライン授業のために、家族全員が一日中、家の中にいる状態でした。コロナが広がる直前にマンションへ引っ越していたので、共有スペースからは子どもたちが走り回る音や大声も聞こえ、もともと音に敏感な次男は勉強に集中できないと苦しんでいました。

コロナ禍で不安なうえ、勉強が遅れているのではないかという焦りもあり、次男から「どうしてこんなところに引っ越したんだ。みんなは静かな環境で勉強ができているのに、僕はうるさくて集中できない」と泣いて責められたこともあります。夫と次男の言い合いが増え、私はひたすら調整に努めました。

そこで、次男は静かな夜間に勉強し、昼間は睡眠に充てるという昼夜逆転生活に変えました。一時しのぎの勉強スタイルでしたが、息子には合っていたようで、騒音問題が解決し、成績がグンと伸びる好結果につながりました。

第1志望校の変更で父子戦争が再び勃発

もともと次男は、なんでも自分ひとりで決めるタイプ。秋に入り、いよいよ受験校を確定する段階になって、何気なくボソッと「東大はやめて、東北大学を第1志望にしようと思う」と私にだけ打ち明けてくれました。

外出自粛期間中、テレワークのイライラが募っていた夫と、受験勉強が思うように進まない次男は何度も衝突し、秋になっても父子関係は修復できていませんでした。それもあって、志望校の変更を最初に相談したのが私だったようです。「コロナ禍で受験勉強を続けるのはつらいから現役合格を目指したい旧帝大の東北大は設備が整っているうえ東大と入試傾向が似ているため対策が立てやすいと説明してくれました。

しかし、次男が志望校を変更したことがわかり、異議を唱えたのが夫です。

夫は「家から通える首都圏の大学はたくさんあるのに、わざわざ地方の大学に進学する意味がわからない。将来の就職を考えたら不利になるのは明らかじゃないか」と主張しました。

しかし、次男は一度決めたら周囲から何を言われても信念を曲げない性格です。夫も次男の気持ちを理解するようになり、入試の直前になってようやく折れました。「本気で受けようと思っているなら仕方ないな」と仙台の住居探しなどの協力をしてくれるようになりました。

滑り止め受験を拒否 その気持ちを変えてくれたのは……

次男は、大学入試センター試験から大学入学共通テストに変わった最初の受験生で、試験内容や仕組みがなかなか定まらず、振り回された学年でした。次男も緊張からか、「あまり眠れない」と漏らしていました。でも共通テストでは大きな失敗もなく、目標点数に達し、予定通り第一志望の東北大へ出願しました。

親としては滑り止めとして私立大も受験してほしい気持ちがありましたが、次男は「受けなくても大丈夫」の一点張り。そこで、塾の先生に相談したところ「受験本番は緊張するから、慣れるために安全圏の大学も受けたほうがいい」と説得してくれました。そして実際に私立大学を3校受けて2校に合格。次男も今では「あの時、私大の合格があったから、自信をもってその後の受験にも臨めた」と振り返ります。つらい受験期間を支えてくれた、塾の先生との信頼関係があったからこそ、アドバイスにも素直に耳を傾けることができたのでしょう。リラックスした気持ちで臨んだ第1志望の東北大は無事、前期日程で合格することができました。

子どもの決断を信じる 自分で決めたら納得

現在、次男は大学3年。学祭の実行委員会に所属し、忙しくも楽しい毎日を送っています。最初は学部4年で卒業して就職することも考えていたようですが、就職先や生涯賃金を比較したところ大学院へ進んだほうがいいと判断し、今は大学院進学の準備を進めています。まだ、将来何になりたいかは定まっていない様子ですが、大学の研究施設で月に1回アルバイトをしており、実験などを通じて専攻している物理への興味も一層わいているようです。

大学受験を通して、私が親として心がけたは、こちらの意見を押し付けないようにすることです。自分自身で考えて進路を選んでほしいという気持ちで次男に接し、夫にも理解してもらおうと伝えてきました。親の意向を強要してしまうと、もしその選択が子どもにとってベストではないとわかった時、本人は納得できないと思います。逆に、自分で決めたことであれば、失敗しても納得ができるのではないでしょうか。だれに言われたからではなく、自分自身で決断してほしい。その気持ちを大事にし、親子で受験期を乗り越えました。

>>先輩パパ・ママの受験体験記

(文=山本知美)

1pxの透明画像

記事のご感想

記事を気に入った方は
「いいね!」をお願いします

今後の記事の品質アップのため、人気のテーマを集計しています。

関連記事

注目コンテンツ

入試

お悩み

大学のいま

NEWS

  翻译: