■ランキングまるわかり
政策の企画や立案を担うキャリア官僚になるには、国家公務員採用総合職試験に合格する必要があります。「官僚といえば東大」のイメージがあるかもしれませんが、最近は東大生の志願者が減少し、他大学からの合格者が増えています。合格者数ランキングから現状を探ります。(写真=Getty Images)
東京大学の合格者数が大幅に減少
人事院が2023年6月に発表した23年度国家公務員採用総合職試験(春)の結果によると、申込者数は1万4372人で、合格者数は2027人。倍率は7.1倍と狭き門です。国公私別では、国立大学1292人(63.7%)、公立大学86人(4.2%)、私立大学634人(31.3%)、その他外国の大学など15人(0.7%)となっています。そして出身大学別の合格者は以下のようになっています。

1位の東京大学は、1877年日本最初の官立大学として設立され、長年、キャリア官僚が多く輩出してきた歴史を持ちます。しかし、最近はキャリア官僚の志願者が減る傾向にあります。年度によって数の増減はありますが、2023年度の合格者193人に対し、例えば11年前、2012年度の合格者は451人ですから、大幅に減っています。
大学通信 情報調査・編集部の井沢秀部長は、次のように話します。
「長時間労働などの職場環境が敬遠されているようです。以前はキャリア官僚を目指していた学生たちが、IT企業やコンサルティング会社など、民間企業に就職しています。一方、他大学では東大のような減り方は見られず、私立大学からの合格者も増えています」
合格者数で見ると、やはり国立大学が強い印象を受けます。2位京都大学、3位北海道大学と続き、10位以内には国立大学が6校入っています。10位以内の国立大学の合格者数を合わせると、584人になります。
「国立大学の学生は大学入試で5教科7科目をしっかり学び、総合的な学力が身についている人が多い。これが国家公務員試験の合格者数につながっているという面もあるでしょう」
実は国家公務員一般職の合格数も多い岡山大
国立大学の中でも、井沢部長が特に注目しているのは8位の岡山大学です。
「旧帝大を含む難関国立大学が並ぶ中、準難関大といわれる大学は岡山大学が唯一です。岡山大学は公務員試験対策に力を入れており、一般職の合格者も多い。22年度の国家公務員一般職試験の合格者数は1位です」
岡山大学法学部のホームページによれば、卒業後の進路として公務員を目指す人が多く、卒業生の約半数の100人程度が官公庁に就職しています。国家公務員のほか、地方公務員を目指す人も多くいます。キャリア支援として、大学生協や大学が行う公務員試験対策講座などもあります。
「国家公務員採用総合職試験合格者数が多い大学は、これまで培ったノウハウを生かして効果的な支援ができるのだと思います。国家公務員総合職の試験勉強は、大学1、2年からスタートすることが多いです。岡山大学では、学部の授業と公務員試験対策講座をダブルスクールのように受けている学生もいるようです。両立は大変だと思いますが、同じ目的を目指して切磋琢磨(せっさたくま)する仲間が多ければ、頑張れるのではないでしょうか」
サポートが充実している私立大
私立大学では、4位早稲田大学、5位立命館大学、7位中央大学、9位慶應義塾大学が健闘しています。
「中央大学が入っているのは意外に思った人もいるかもしれませんが、中央大学法学部は法曹志願者だけでなく、国家公務員総合職の養成にも力を入れています。法学部が多摩キャンパスにあった時は、司法試験や公務員試験を目指す学生が『炎の塔』と呼ばれる専用の自習室で、夜遅くまで勉強していたことがよく知られています」
「炎の塔」では、個人の専用席とロッカーを安い費用で借りることができます(入室試験に合格することが条件)。23年4月に法学部が茗荷谷キャンパスに移転後も、同じスタイルの自習室がつくられました。
年々合格者を増やしている立命館大学も、井沢部長が注目している大学です。
「大学をあげてかなり前からさまざまな公務員養成支援を展開しています。大学全体で国家公務員総合職を目指す学生を育てている、というイメージがあります」
立命館大学のホームページによると、1、2年生を対象に国家公務員としての志や資質を養成する「立命館霞塾」を開設しています。現役の国家公務員総合職による講演会やディスカッション、政策立案ワークショップなどが行われています。また、大学の成績が一定レベル以上で、指定された講座を受講しているなどの条件を満たしている学生には、「公務員自習室」として個別自習用の机やイス、パソコンなどを一定期間、安価で提供しています。これは中央大学の「炎の塔」に似たシステムといえます。
「このほか、ランキング表にはありませんが、12人の合格者を出した近畿大学(37位)なども、大学のサポート体制が充実しています。国家公務員総合職は国にとって必要不可欠で、多忙ではありますが、やりがいもあるでしょう」
なお、23年度国家公務員採用総合職試験(春)の女性の合格者数は全体で683人で、合格者数全体に占める女性の割合は33.7%となっています。3年連続で3割を超え、女性の合格者数、割合ともに過去最高となっています。国家公務員を目指したい人は、このようなランキングや大学のサポート体制について調べてみるといいでしょう。
(文=狩生聖子)

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