■私の就活体験記
学生が企業で就業体験ができるインターンシップは、業界や企業の理解が深まる、就活では欠かせない活動です。就活中の学生の8割以上が体験しています。損害保険会社の一つ、損害保険ジャパンのインターンシップは参加した学生の満足度が高いことで定評があります。金融業界を中心に50社以上の選考を受け、夏と冬合わせて30社近くのインターンに参加して、同社に入社した社員の就活体験を紹介します。インターンを経験することが、どのように就活に役立ち、学生の成長につながるのでしょうか。(写真=損保ジャパン提供)
インターンシップの選考が本番の練習に
損保ジャパンの2024年度の新卒採用は175人。損害保険の枠を超えて幅広い事業を展開しているほか、社員の挑戦を支援する人材育成プログラムも充実しています。23年度に入社し、仙台支店法人第一支社に勤務する赤井涼太郎さんは、早稲田大学法学部の出身です。大学3年の5月ごろから就活に取り組み始めました。
「1浪なので、現役で大学に入った高校の同級生はすでに4年生で、就活を経験していました。彼らからは『夏のインターンに参加するには6月くらいに募集が始まるから、とにかく早く動いたほうがいい』とアドバイスをもらっていました。インターンは50社以上の選考を受け、3年次の夏と冬を中心に30社近くは参加したと思います」
最初は志望する業界が決まっていませんでしたが、インターン先を選ぶ基準として、「参加するための書類や面接による選考があること」と「実際の業務を体験できること」としました。
「選考があると、本番の就職試験の練習にもなると思いました。最初はなかなか書類審査が通らなかったのですが、人事部の方は大量のエントリーシートを読んでいるということを意識して、最初に結論をもってくる、印象に残るエピソードを入れるなど、工夫するようになってから書類審査を通るようになりました」
インターンに参加するうちに、金融業界、なかでも損保業界に興味を持つようになりました。
「商品開発に興味がありましたが、そのためには人々のニーズをくみ取らなければいけません。でも自分にはまだその力がないと思ったので、まず営業でお客さまと関わり、ニーズをくみ取る力を身につけたいと考えました。損保会社は営業をしながらも、お客さまのニーズやリスクに応じて保険商品を提案するという面があります。やることは入社前に思い描いていた商品開発にも近く、魅力を感じました」
浪人の経験から、人が再起する役に立ちたい
それに、大学受験で浪人した体験も損保業界を志望する大きな理由になりました。
「現役で志望大学に落ちたとき、自分のふがいなさに絶望しました。でも、そこから立ち直って1浪で第1志望に合格できたのは、家族や塾の先生など周囲の人の支えがあったからです。今度は自分が支える側になりたいと、大学に入ってから塾スタッフのアルバイトをしたところ、非常にやりがいを感じることができました。損保会社は、損害を受けたお客さまの再起を支えることが大事な使命です。自分の浪人の経験から、だれかの再起の力になる仕事なら、やりがいを持ち続けたまま働けるのではないかと思いました」
損保ジャパンのインターンには、合計3回参加。営業や保険金の支払いといった基本的な業務のほか、新規事業を提案するグループワークを通じて企画業務を体験しました。
「インターンを通じて実際の業務をイメージできたほか、損保会社に抱いていた印象をいい意味で壊されました。損保ジャパンは損害保険事業を軸としながらも、カーシェア事業など、新しい事業にもチャレンジしていることを知りました。業界で初めてLINEを活用した事故の受け付けや対応を始めるなど、新しいことに挑戦していく姿勢に魅力を感じました」
さらに同社のインターンでのフィードバックの細やかさにも魅力を感じました。
「ワークの成果だけではなく、業務への取り組み方なども見てくれたうえで、強みと課題についてアドバイスをいただき、私自身の成長につながりました。1人の就活生に対してそこまで向き合ってくれるということは、社員一人ひとりの成長にも向き合ってくれる会社だということを感じることができました」
法的な思考力を生かす
大学では憲法、民法、刑事法、租税法など法律について幅広く学び、「特に法的な思考力が身についた」といいます。「法的な思考力」とは、ある事例に対して、過去の裁判例や学説などさまざまな情報を集めたうえで、論理的に考えて自分の判断を導き出す力です。その力は「塾スタッフのアルバイトや野球サークルでの活動でも生かされた」といいます。
「どちらもリーダーとしてメンバーをまとめていました。塾はバイトスタッフが離職しやすいという問題がありましたが、スタッフに課題をヒアリングしたうえでどうすれば辞めないかを論理的に考え、周囲の人に協力してもらいながら、改善することができました。損保ジャパンの面接ではその点をアピールすることができたと思います」
就活の面接では、面接担当者から「全然緊張していないね」と言われることが多かったそうですが、「本来は緊張しやすいタイプ」といいます。
「面接でも実際はめちゃくちゃ緊張していました。でも、それまでの圧倒的な練習量があったから、緊張が表に出なかったのだと思います。就活用の面接対策アプリを利用したほか、友人との練習で自分が面接担当者役になって視点を変えてみるという方法も取り入れました」
現在は仙台支店で法人営業を担当。営業先で保険商品を提案する際にも、法学部で身につけた論理的思考が役立っており、論理立てた商品説明が成約につながったことも少なくありません。
「最近は海外進出するお客さまに海外輸出に関する保険商品を提案して、成約いただくことができました。今後も新しい事業に挑戦するお客さまを支えられる存在でありたいです。例えば将来、宇宙のマーケットに挑戦するお客さまに新しい保険商品を提案するなど、ロマンがあっていいですね。一緒に課題を乗り越えていきたいです」
インターンシップは従来、学生が在学中に自分の専攻やキャリアに関連した就業体験を行うことを目的としていたため、企業はインターンで得た学生の情報を広報活動や採用選考活動に使用することはできませんでした。しかし、23年度から取り扱いが変わり、一定の基準を満たしたインターンで取得した学生の情報を広報活動や採用選考活動に使用できるように見直されました。インターンはすでに就活中の学生の8割以上が体験しています。就活の早期化に伴い、インターンの位置づけはさらに変わっていきそうです。
(文=中寺暁子)
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