【ランキング】「学生が取りたい資格」は? 公務員に代わって人気が上昇している2つの資格は?

2024/07/27

■ランキングまるわかり

「資格」と一口に言っても、取得しなければその職に就けない資格や、多くの企業で取得を推奨している資格、将来、独立開業を狙える資格など、さまざまなものがあります。学生にはどのような資格が人気なのでしょうか。資格の専門学校TAC(タック)が集計している「学生に人気の資格ランキング」から見ていきます。(写真=Getty Images)

中高生で公認会計士を目指すケースも

TACの「学生に人気の資格ランキング」は、2014年から毎年、公表しています。同校で実施している60余りの資格講座(23年10月現在、通信講座も含む)から、資料請求(インターネットから請求)があったものを、「学生」に絞って請求数の多いものから順に並べています(23年1~10月のデータから算出)。なお、学生には短大生も含まれます。

学生に人気の資格ランキングの1位は、「公務員」です。公務員には国家公務員と地方公務員があります。公務員試験に合格しないと仕事に就けないため、希望する人は大学入学後、早い段階から試験勉強を始めることが少なくありません。ただし、「公務員の人気は22年度と比べて下がっています」とTACマーケティング事業部スクールマーケティング部の三柴陽一郎さんは言います。「公務員は昔から、景気が悪いと人気が上昇し、逆に景気がいいときには人気が下がります。23年からは景気がよくなり、就活生にとって民間企業の売り手市場だからでしょう

公務員に代わって人気が上昇しているのが、2位の「公認会計士」と、3位の「税理士」です。

公認会計士も税理士も、「AIによってなくなる仕事」と言われることがあります。しかし、三柴さんは「公認会計士や税理士には税務相談やコンサルタント業務など、AIではできない業務がたくさんあります。また、これらの仕事は将来、独立して開業できることも、人気の理由でしょう」と話します。

公認会計士の合格率は22年が7.7%(公認会計士・監査審査会)と、難度は高いですが、受験資格はなく、だれでも受けられます。22年の年齢別合格者を見ると、20歳以上25歳未満が63.8%で最も多く、学歴別合格者は大学在学者(短大も含む)が最多です。

コロナ後、受験者が低年齢化している傾向があります。大学入学前の高校生や、中には中学生が親御さんと一緒に受講の相談に来ることもあります。コロナ禍の行動制限が解除され、やりたいことの一つとして、『難しい資格に挑戦しよう』という思いがあるのかもしれません」

「税理士」は、さらに人気が急上昇しています。

20歳以下の資料請求数は、22年度と比べて約1.5倍になっています。大きな理由として、23年度の試験から受験資格要件が見直されたことがあります」

税理士になるには、会計学2科目、税法3科目の計5科目の合格が必要です。このうち会計学科目(「簿記論」と「財務諸表論」)については受験資格要件が撤廃され、年齢は関係なく、だれでも受験できるようになりました。税法科目の受験資格要件も緩和されました。

簿記論と財務諸表論に合格していれば、税理士事務所で実務ができる力があるとみなされます。大学2年までに税理士試験に合格できれば、3年からの就職活動に間に合うので、税理士試験に挑戦する人は増えていきそうです

7位の「米国公認会計士」の受験資格は州ごとに異なります。
「4年制大学を卒業していることを要件にしているところが多いですが、大学在学中や高卒、短大卒でも受験可能な州もあります。日本の公認会計士よりも易しい試験といわれているので、英語が得意な方は検討してもいいかもしれません」

定番は「簿記、ITスキル、英語」

4位の「簿記検定」は年間約40万人が受験する人気の資格試験です。
「学生の間に身につけたほうがいいものとして、『簿記など会計関連の資格』『ITスキル』『英語(TOEICなど)』の3つが言われています。このため、簿記も人気なのだろうと予測します。ただし、就活に使うのであれば、2級は必要でしょう」

8位の「情報処理・パソコン」は、先ほどのITスキルに関する資格です。
「情報処理技術者試験という国家資格で、13種類の試験があります。このうちIT資格の入門、登竜門的な『ITパスポート』の資格を目指す人が多いです」

情報処理推進機構によると、ITパスポート試験の23年度の応募者は過去最多の29万7864人、平成21年度の試験開始以来の累計応募者数は200万人を超えました。ニトリホールディングスは、「25年までに社員約1万8千人の8割にITパスポートを取得してもらうようにする」と公表しています。これからの就活には欠かせない資格となるかもしれません。

「不動産鑑定士」が人気の理由は?

6位の「宅建士(宅地建物取引士)」、9位の「不動産鑑定士」は、不動産業界で使われる資格です。宅建士は、不動産の売買や賃貸物件の斡旋などを行う専門家で、不動産事務所では5人に1人の割合で宅建士を雇わなければいけない決まりがあります。不動産鑑定士は、不動産の市場価値や評価を専門的に行う仕事です。

「宅建士試験の合格率は15~18%と難しい資格ですが、不動産鑑定士試験はもっと難しい。1回の試験ではなかなか合格できません。資格業界では不動産鑑定士は弁護士、公認会計士と並ぶ、文系3大難関資格とされています」

不動産鑑定士は、今回の調査で初めてベスト10に入りました。三柴さんによれば、10位の「中小企業診断士」と同様に、コロナ禍以降、人気が高まっています。

「中小企業診断士は国が認める唯一の経営コンサルタントの国家資格です。経営戦略や人事、マーケティング、財務・会計、法務、製品管理など経営全般の知識が問われます。だれでも受けられる試験ですが、従来は企業のエリート層に人気の資格で、学生が受けることはまず、ありませんでした。実は不動産鑑定士や中小企業診断士がなぜ学生に人気なのか、私どももまだ十分な分析ができていません。ただ、難しい資格に挑戦する学生が増えているのは事実です」と話します。

一方で、「くれぐれも資格は万能ではないことを知ってほしい」と三柴さんは警鐘を鳴らします。

「よく、『就職に有利な資格は何ですか』と学生から相談を受けますが、私たちは『では、あなたは将来、何をしたいのか』と逆に聞いています」

どんなに難しい資格を取得していても、その資格を使わない企業にとっては「響かない」ことを、三柴さんは企業の採用担当者などからよく聞いています。
「不動産業界の面接に行き、宅建士の資格をアピールできれば100点満点ですが、あまり関係のない業界では、逆に『えっ? なんで?』と聞かれる可能性もあります」

資格とは、「自分がやりたい仕事で社会に出ていくことを叶えるツール」です。自分にとって取得すべき資格は何かをしっかりと検討するのがよさそうです。

 

>>【連載】ランキングまるわかり

(文=狩生聖子)

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