大学受験の「年内入試」で求められる英語力 英検は何級を取っておけばいいの?

2024/08/04

■特集:多様化する年内入試

大学入試の多様化が進む中、総合型選抜や学校推薦型選抜など、12月までに合否が決まる「年内入試」が増えています。その出願要件として、英語の検定試験のスコアの提出を求める大学は少なくありません。年内入試で求められる英語力とそのポイントを専門家に聞きました。(写真=Getty Images)

大学受験の最重要科目は英語

「年内入試」では、高校時代の実績や学びへの意欲など、筆記試験では測れない力が評価されます。最近は私立大だけでなく国公立大にも広がり、すでに年内入試による入学者が、大学入学者全体の5割を超えています。

トフルゼミナールの加藤芳明・企画業務部長は、年内入試が拡大する背景についてこう分析します。
「少子化が進む中、多様な学生を早く集めたいという大学側の意図が表れています。最近は、東北大学が25年後に総合型選抜へ100%移行する方針を打ち出したことが話題になりましたが、ほかの大学が追随すれば、今後ますます増えるでしょう」

年内入試でポイントの一つになる重要科目が英語です。

「グローバル人材の育成のために、英語の重要性がますます認識されています。国際系の学部はもちろん、教養学部など文理融合型の学部では、特に英語力を重視する傾向にあります」

民間試験のスコアを活用

GMARCHや日東駒専など志願者が多い大学の年内入試では、英語の民間試験のスコアを活用する動きが広がっています。
「例えば青山学院大学文学部英米文学科の自己推薦入試は、英検準1級以上などの英語資格取得者を対象としています。順天堂大学国際教養学部では、英検1950以上(英検2級以上に相当)、ケンブリッジ英検140以上、TEAP225以上などが出願条件になっています。英語の面接試験を課したり、英語で論文を書かせたりする大学もあります」

高2の終わりまでに高スコアを狙う

加藤部長によると、現在、大学入試に生かしやすい民間試験は、主に実用英語技能検定(英検)、TOEFL、IELTSの3つです。求められるレベルは大学によります。国公立大の場合は、総合型選抜への全面移行を示した東北大学の動向がカギになりそうです。
「詳細はまだわかりませんが、英検準1級の合格ラインから少し上に設定される可能性が高いと見ています」

私立大の最難関校ではどうでしょうか。
「早稲田大学国際教養学部をはじめとする最難関校では、民間試験は活用せず、英語の筆記試験で受験生の英語力を測る傾向があります。とはいえ、合格者は英検1級、TOEFL100点~120点を保持している人が目立ちます。大学側は受験生の門戸を広げたいため、出願時にあえてその基準を外していると考えられます」

年内入試を見据えて、英語の民間試験に挑戦する場合は、計画的な対策が必要です。
「最難関クラスを狙うなら、高3になってから志望理由書の作成や筆記試験対策に時間を割けるよう、高2の終わりまでにTOEFL iBT100(120点満点)、IELTS7.0(9点満点)を取っておくのがおすすめです」

いずれも極めて高いスコアですが、早くから英語の民間試験の勉強に力を入れておけば、年内入試が不合格で一般選抜に切り替えることになっても、その英語力を生かしたり、他教科の勉強に時間を割いたりすることができます。高2の終わりまでに、できるだけ高スコアを取得することが、年内入試の大きなポイントとなりそうです。

文法の土台が大事

英語4技能(読む・聞く・書く・話す)の伸ばし方について、加藤部長は「日本の中高生は、母語で英語のルールを学び、文法の土台をしっかりつくった方が、のちに応用が利き、伸びやすい」と文法の重要性を説きます。

「現在の年内入試の英語筆記試験には、リスニングとスピーキングの要素がほぼありません。文法の基礎の上に成り立つリーディングとライティングの方が、優先順位が高いです」

英語面接を課す場合も、大学側が求めているのは流暢さではありません。「自分の言いたいことを一生懸命伝えようとしているか」「志望理由に論理的な一貫性があるか」といったことを大学側は見ています。

単語も大事です。部活や課外活動で忙しいでしょうが、1日3秒でもいいから、毎日同じ単語に触れる回数を増やしていくといいでしょう」

>>【特集】多様化する年内入試

(文=曽根牧子)

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