【大学受験】小論文を「1日1つ書く」 倍率7倍の学校推薦型選抜と一般入試を両立した方法

2024/09/16

■特集:多様化する年内入試

学校推薦型選抜の入試は倍率が高いため、一般選抜の入試と両方を目指す高校生は多くいます。第1志望の福岡県立大学看護学部に合格した石田有美さん(仮名)も、「チャンスは多いほうがいい」と考えて両方を受けることを決め、高校3年の夏休み後からは特に小論文対策を徹底したそうです。学校推薦型選抜と一般選抜の準備を、どのように両立したのでしょうか。両立するために苦労したことなどを振り返ります。(写真=入試対策に毎日かならず書いた小論文、本人提供)

教員と看護師の資格を取りたい

――学校推薦型選抜を意識したのはいつごろでしたか。

高校2年の夏休みです。看護学部がある大学のオープンキャンパスを回ったことで、「福岡県立大学に行きたい」と思うようになったのがきっかけです。入試方式などを調べるうちに、福岡県立大学の入試には学校長の推薦をもらって出願する学校推薦型選抜があることを知って、挑戦しようと思いました。ダメなら一般選抜があるので、「チャンスは多いほうがいいかな」と考えたんです。

看護学部を志望したのは、高校1年のときに医療系のテレビドラマ「ナイト・ドクター」(フジテレビ系)を見て医療に興味を持ったからです。波瑠さんや岸優太さんたちが演じていた夜間勤務専門の救急科の専門医が、葛藤を抱えながらも自分なりに頑張っていくところに親近感を覚えました。

――医師に憧れたものの、看護学部を志望するようになったのはなぜですか。

 ちょうどそのころ、体調を崩してしまうことが多く、学校の保健室に行くことがたびたびありました。養護の先生の人柄がとても素敵で、人間関係の相談も親身になって応じてくれて、「先生のようになりたいな」という憧れの気持ちを抱くようになったんです。養護教諭の仕事について調べていくうちに、「看護師の免許も持っていると、仕事に役立つ」ということを知り、教員と看護師の両方の資格を取りたいと思いました。

――養護教諭の先生からは、進路についてのアドバイスはありましたか。

先生は「生徒が元気になった姿を見たり、近い距離で接したりできるときが楽しい」と言っていました。また、養護教諭になるには、まず免許が必要なことなど具体的に詳しく教えてもらいました。

大学内に「フリースクール」がある

――福岡県立大学に行きたいと思った理由は、どんなところにありますか。

養護教諭と看護師の両方の資格を取れるからです。しかも福岡県立大学は、不登校の子どもたちの支援についても学ぶことができ、自分の興味のある分野を深く学ぶことができると思いました。福岡周辺では、養護教諭の免許を取れる唯一の国公立大学だったことも理由の一つです。

――オープンキャンパスではどんなことがわかりましたか。

大学側の話を聞くほど、自分の学びたいことと一致していると感じました。日本で唯一、学内にフリースクールが設置されていることも大きなポイントでした。学校に行けない中学生が大学内のフリースクールに通っていて、希望すれば学生もサポーターになって、子どもたちに勉強を教えたり、遊んだりする活動に従事できます。学生のうちから、実践的な経験を積むことができるのは、将来につながると感じました。

――福岡県立大学の学校推薦型選抜に出願するには、どのような要件がありましたか。

成績の要件があったかどうかは忘れてしまいましたが、英検の準2級と2級以上のスコアを持っていると、優遇されたことは覚えています。私は「いつか役立つだろうな」と思って英検2級を取っていたのですが、それが思わぬ形で役に立ちました。ほかに必要だったのは、学校長の推薦書でした。

――学校推薦型選抜の試験はどのようなものでしたか。

試験は11月で、毎年度、看護に関連した800字の小論文を2時間で書く試験が課されていました。小論文といっても資料型で、グラフや図表などの視覚的な資料を読み取って、それに対する意見を述べる内容です。厚生労働省など公的機関の資料が7つぐらい出されて、それをすべて使って書くというのがルールです。

――情報を選び取っていく力が試されるのですね。どう対策したのですか。

オープンキャンパスで過去問が配布されたので、それに何回も挑戦したり、赤本に載っている問題に取り組んだりしました。小論文は「1日1つ書く」と決めて取り組むようにしました。

一般選抜対策との両立に苦心

――対策を進めていくうえで、大変なことはありましたか。

小論文を1日1つ書くとなると、見直しも含めて3時間くらいかかります。そのぶん一般選抜の対策をする時間が減ってしまうので、一般選抜に絞って対策している受験生に後れをとってしまいそうで不安でした。

――800字の小論文に毎日取り組むというのは、大変ですね。

高校の先生に毎日、添削してもらいました。福岡県立大学の過去問のほかにも、先生が見つけてくれた他大学の資料型小論文にも取り組みました。一般選抜の勉強はいつも計画倒れに終わっていたので、高2の夏に個別指導形式の学習塾アクシブアカデミーに入りました。そこでも小論文の添削をしてもらいながら、学習計画を立てたり、勉強法のアドバイスをしてもらったりして、オンラインで指導を受けながら受験対策を進めました。

ただし例年、学校推薦型選抜の倍率は7倍と、狭き門です。学校や塾の先生からは「あまり推薦に期待しすぎないように。受かったらラッキーというぐらいの気持ちで受けた方ほうがいいよ」と助言を受けて、そのように努めました。

――そうして臨んだ11月の試験では、どのような小論文のテーマが出されましたか。

小論文のテーマは「中学生によるスマートフォン利用の現状と家庭での取り組み」について、どのように考えるかということでした。提示されたデータや資料をもとに、ネット依存の危険性について述べ、それを踏まえて、小中高の養護教諭としてスマホの危険性についての授業を実施するとか、ルールを家庭で決めるといった解決策を示す論文を書きました。合格発表は12月だったので、その間は一般選抜の対策を続けました。

文章力がついて、自信に

――12月の合格発表のときは、どんな気持ちでしたか。

合格できて、とてもうれしかったです。母親と2人で、インターネットで合格発表を見たのですが、母が泣いて喜んでくれました。今までのつらかったことや大変だったことが認められ、「頑張ってよかった」と思いました。両親は日頃から、勉強には口出しをせず、つらいときなどに親身になって話を聞いたり、励ましたりしてくれたことがありがたかったです。

――大学生活が始まって半年。大学生活はいかがですか。

今は看護の概要や歴史を学んでいるところです。課題も多くて大変ですが、充実していて、楽しい日々を送っています。学校推薦型選抜で合格した学生は、より計画性をもって授業に取り組んでいる印象がありますね。

大学受験で小論文対策を頑張ったおかげで、入学後の課題レポートが書きやすく、文章力がついたと思います。それは、大きな自信につながっています。今はまず、目の前にある看護学の勉強を頑張りたいと思っています。

>> 【特集】多様化する年内入試

(文=加賀直樹)

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