まだ盛り上がってない大阪・関西万博を「動かす側になりたい」 関西大の万博部は部員140人

2024/11/09

■特集:大学新時代

1970年に開催された大阪万博から55年。「大阪・関西万博」の2025年4月の開幕が近づいてきました。課題点ばかりが指摘されていますが、関西の大学では学生たちが万博に向けて様々な活動を活発化しています。(写真=2023年に発足した「関大万博部」の部員たち。関西大学提供)

大阪・関西万博を「動かす側」に

大阪・関西万博に向けて、関西大学に2023年に発足した学生コミュニティー団体は、その名も「関大万博部」。24年春には約120人の学生が新規に入部して部員数が一気に7倍になり、現在は約140人に。「万博のワクワク感を伝えたい!」との思いのもと、9つのプロジェクトに分かれて活動しています。

プロジェクトは、言葉の壁を乗り越えて絵文字によるコミュニケーションツールの開発などに取り組む「エモジケーション」、食品ロスの軽減と防災意識を高めるために独自の非常食アレンジ弁当を開発・販売する「未来の私たちへ」などで、学生たちの関心事やSDGsの観点からアイデアを出しました。

関大万博部内のプロジェクト「エモジケーション」。絵文字だけを使って言語の壁を越えた意思疎通を試みる(写真=関西大学提供)

発足時から参画する商学部2年の岡田崇佑(そうすけ)さんと、環境都市工学部2年の佐久間由飛(ゆうひ)さんは、数ある学生団体の中から「関大万博部」に入部した理由をこう話します。

「もともと万博に興味があり、日本で開催する貴重な機会に参加したいと思っていました。大学の講義でこの団体の存在を知り、僕も動かす側になりたいと思いました」(岡田さん)

 「僕たちが3年になる年に万博が開催されるため、在学中に最初から最後まで関われるのは貴重だと思いました。出身が神奈川県なので、地元や関東にいる友人たちにはできない体験を味わえるのではと思ったのも理由の一つです」(佐久間さん)

クラフトビールに「やろ、やろ、やろ!」

2人が所属するのは、オリジナルのクラフトコーラとクラフトビールの開発を通じてコミュニケーションを生み出す「關杯(かんぱい)」プロジェクトです。最初はクラフトコーラの開発のみでしたが、同時期にクラフトビールの開発に取り組んでいた「関大ブリュープロジェクト」の活動が関大万博部に統合されました。

“SDGsクラフトビール”を製作する「関大ブリュープロジェクト」では、今年の卒業式に、ビールの原料となるホップを苗植えするセレモニーを行った(写真=関西大学提供)

20人のメンバーを引っ張るリーダーとして活動中の2人は、万博が開幕する頃にはお酒が飲める20歳に。「万博部にビールのプロジェクト加入の話が入ってきた時、『やろ、やろ、やろ!』と推しました」と佐久間さんは笑います。

クラフトコーラを試作中の関西大学2年の岡田さん(右端)と佐久間さん(右から2番目)。「お笑いが好きで、大阪には劇場がたくさんあることも関西大学を志望した動機の一つです」と神奈川出身の佐久間さん(写真=関西大学提供)

ビール造りは、原料となるホップの割合や、フレーバーの有無などのパターンの中から味を選んでいきます。一方のクラフトコーラ作りはより複雑で、何種類もあるスパイスや果物などをどう配合するかで味ががらりと変わるため、50回以上の試作を重ねました。判断基準としたのは、「万人受けする味」です。

クラフトコーラには多数のスパイスが入っている(写真=関西大学提供)

2人は「最終的には味は多数決で決めました。レモンとスダチを入れる予定なので、後味はスッキリしていて飲みやすい。イメージでいうとレモンスカッシュのような感じです」と話します。

万博開催地での盛り上がりは?

アイデアが形になっていく中で、気になるのは万博開催地の盛り上がりです。2人は「最近では街中でよくポスターを見かけるようになったものの、万博自体の盛り上がりはまだ今一つ」と率直な感想を語った上で、「万博の印象を良い方向に転換させるためにも、自分たちがまずは盛り上がらないといけないと思うようになりました」と言います。

「最初は万博に乗っかる形で活動しようと思っていました。でも今は万博を盛り上げるための商品作りではなく、自分たちの商品を盛り上げることが万博の盛り上がりにつながるはずとの考え方に変わりました。万博は自分たちの活動の通過点だととらえています」(岡田さん)

関大万博部の「關杯(かんぱい)」プロジェクトのメンバーたち。「關」は関西大学の「関」の旧字体を用いた(写真=関西大学提供)

商品化に向けての産学連携の取り組みの中で、企業の情熱やパワーに触れ、3年次から始まる就活に対する考え方も変わったといいます。大企業への就職に関心があった岡田さんは「自分の裁量で企画を立てられたり、様々な場所に足を運べたりするベンチャーや中小企業のほうが働きがいはあるかもしれないと思い始めています」と言い、佐久間さんも「自分は理系で、もの作りに興味がありましたが、自分のアイデアを生かしてゼロから何かを作り上げる経験ができるかどうかを、会社選びの軸にしたいと考えるようになりました」と話します。

ビールのラベルが完成し、次にコーラのラベル作りを進めていく段階で、万博時に販売することを最終目標に、チーム一丸で活動を進めています。

大規模なオンラインオーケストラ

大阪・関西万博に向けて活動する学生団体は、ほかにもあります。

立命館大学万博学生委員会「おおきに」は、社会課題の解決に関心のある学生約120人が参画し、食班、環境班、多様性・異文化理解班など10のグループに分かれて活動しています。24年5月には、同大学の大阪いばらきキャンパスで開催された地域交流イベント「いばらき×立命館DAY2024」で各班がブースを設けました。その中で「日本文化班桜」は、和柄のフォトフレームを作成するワークショップを実施しました。また、万博で実施される「世界同時1000人やぶさめ立射演武チャレンジ」のPRを担当しました。

大阪大学2025年日本国際博覧会推進委員会学生部会に所属する学生団体「a-tune(ええちゅーん)」 は、音楽を通じた国際交流を企画し、万博への出展を目指しています。遠く離れた海外のオーケストラとオンラインでつながる「遠隔合奏」を通じて、音を奏でることで一つになる「e-Symphony」の活動をしています。24年3月には、万博開催まで400日になったことを記念し、「e-Symphony for 2023~realize~」を大阪府池田市で開催。大阪、ドイツ、ベトナム、フィリピン、沖縄の5拠点を繋ぎ、10カ国の学生たちがオンライン上で一堂に会して演奏する「オンラインオーケストラ」を開きました。万博では、100カ国の学生とオンラインオーケストラを実現することを目標としています。

こうした学生たちの活動が、大阪・関西万博を盛り上げるのに一役買いそうです。

>>【特集】大学新時代

(文=小野ヒデコ)

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【写真】まだ盛り上がってない大阪・関西万博を「動かす側になりたい」 関西大の万博部は部員140人

関大万博部内のプロジェクト「エモジケーション」。絵文字だけを使って言語の壁を越えた意思疎通を試みる(写真=関西大学提供)
関大万博部内のプロジェクト「エモジケーション」。絵文字だけを使って言語の壁を越えた意思疎通を試みる(写真=関西大学提供)

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