■ランキングまるわかり

秋は多くの大学で学園祭がにぎわう時期です。大学の学園祭は学生たちの力で開かれ、高校までの文化祭とは開催規模も企画の多様性も別次元です。キャンパスの雰囲気を肌で感じ、リアルな大学生活を知る絶好の機会となるため、大学受験を考える高校生は、ぜひ訪れたいもの。2023年度に学生からの評価の高かった学園祭をランキングで紹介します。(写真=レッツエンジョイ東京提供)

国内唯一の学園祭ランキング

大学の学園祭は、さまざまなイベントが開かれるほか、多彩な飲食屋台や展示ブースが並び、多くの人でキャンパスがにぎわいます。コロナ禍では入場制限をしたり、オンラインで開催したりする大学がほとんどでしたが、2023年以降はコロナ前の形で学園祭を行う大学が増えています。

大学に関するさまざまなランキングデータがありますが、学園祭の魅力や特色は数値化するのが難しく、あまりランキング調査は行われていませんでした。そんな中、09年に始まったのが、首都圏で開催される学園祭のナンバー1を決める「学園祭グランプリ」です。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県にある大学キャンパスが対象で、09年の第1回の参加キャンパスは23校でしたが、年々規模が大きくなり、23年には過去最多となる152のキャンパスがエントリーしました。首都圏にはおよそ250のキャンパスがあるので、その半数以上がエントリーした注目度の高いイベントです。

最終プレゼンテーション(二次審査)の様子(写真=レッツエンジョイ東京提供)

学園祭グランプリの特徴は、学生の投票によってその年のナンバー1を決定することです。イベントを主催する株式会社レッツエンジョイ東京の武智弘樹さんは、審査の透明性について次のように説明します。

「書類と動画による一次審査では、エントリー大学から各1人ずつ選出された審査員がオンライン投票によって二次審査に進む大学を選出します。二次審査では、イベントのステージでプレゼンテーションを行い会場に集まった学生が審査員としてリアルタイム投票に参加します。組織票の影響を減らすため、自分の大学に投票することはできません」

23年度は審査基準として、「大学の独自性」「地域活性化」「国際視点」「SDGs視点」の4項目を設定し、部門ごとに投票を行い、総合得点で順位を争いました。下の表が二次審査に進んだ4つのキャンパスの得票とランキングです。

2023年度に行われた「学園祭グランプリ」の結果。会場にいる100人の審査員が各大学の項目ごとに1~3点で評価する。

「早稲田祭」が初のMVP

総合710点を獲得し、MVPに輝いたのは早稲田大学「早稲田祭」です。最も高く評価されたのは大学の独自性(234点)で、他大学に100点前後の差をつけています。

MVPに輝いた早稲田大学「早稲田祭」(写真=佐溝眞行さん提供)

早稲田祭が行われる11月初めの2日間は、早稲田キャンパスと戸山キャンパスを結ぶ道路を歩行者天国にしてパレード企画が行われます。「車両規制など、警察や地域の方々との強固な連携が早稲田大学ならでは」と審査員から高い評価を得ました。また、食屋台や近隣飲食店の廃油を再利用したエコキャンドル企画や、ゴミを分別回収してリサイクル率70%を達成するなど、SDGs視点でも部門別2位に評価されました。

23年の早稲田祭は「ユメヒビケ」というテーマで開催(写真=佐溝眞行さん提供)

「早稲田祭2023」運営スタッフ代表として約700人の運営スタッフを率いた佐溝眞行さん(政治経済学部4年)は、早稲田大学として初のMVPを受賞した喜びを語ります。

「4年ぶりに入場者を制限することなく開催でき、2日間で約20万人が来場しました。早稲田大学には外国人留学生を含めて4万人の学生がいて、部活動やサークル、ゼミを通じた学生の自主活動も活発です。大学の多様性や学生街としての地域とのつながりといった『早稲田文化』の魅力が認められ、うれしかったです」

早稲田キャンパスと戸山キャンパスを結ぶ道路を歩行者天国にしてパレード(写真=佐溝眞行さん提供)

「らしさ」表現した企画が高評価

第2位には、総合704点の東京外国語大学「外語祭」が選ばれました。国際視点(279点)では断トツの得票を集め、地域活性化でも高い評価を得ましたが、総合得点でわずかに及ばず、通算4度目のMVP獲得を逃しました。外語祭は学生が専攻する地域の料理店の出店や、専攻言語を使った「語劇」の上演など、国際色豊かな企画が豊富で「30種類の国と地域の食を体験できるのは外語祭だけ」と高く評価されました。また、世界の民族衣装体験、外国語の絵本の読み聞かせなど、子どもを対象にした体験型コンテンツにも大学の特色が反映され、地域活性化でも部門別トップの191点を獲得しています。

第3位には、個性豊かな研究発表で「さすが理系大学」と学生審査員をうならせた東京工業大学(現・東京科学大学)「工大祭」が選ばれました。大学の独自性で「大学祭における『学び』のコンテンツに関しては群を抜いている」という高い評価に加え、SDGs視点で部門別トップの201点を獲得。地域の人が出品するフリーマーケットや商店街とのコラボレーション企画など、地域活性化でも部門別2位と健闘しました。

第4位には、大学の独自性と国際視点の2部門で2位の得票を集めたお茶の水女子大学「徽音祭(きいんさい)」が入りました。「附属校に通う児童・生徒が多く集まる温かい学園祭」「食物栄養学科など珍しい学科の出店や、工作企画など来場者への配慮が行き届いている」など、大学の校風を表す多彩なコンテンツが、多くの審査員の支持を集めました。

大学を知るきっかけに

かつては人気タレントを招いて、ステージ企画を中心とした「華やかなお祭り」という印象が強かった学園祭ですが、近年は大学の特色を前面に出し、学生活動の発表の場として原点回帰する傾向があるようです。

「街を挙げて盛り上がる早稲田祭、国際色豊かな外語祭など、23年の投票結果からも、大学の魅力や特色をコンテンツとして表現することがトレンドになっていると感じます。コロナ禍で制限された学園祭を経験し、学生たちが改めて学園祭を開催する意義を考えるようになったことも影響しているのではないでしょうか」(武智さん)

実際に学園祭の会場を歩くと、多種多様なサークルや部活動、ゼミが展示発表をしていて、大学進学後の学生生活を垣間見ることができます。所属学科での学び以外の「好きなこと」に熱中し、深掘りしている大学生の姿を目にすることは、高校生にとってリアルな大学を知り、世界を広げるきっかけにもなります。

2023年度の代表、佐溝眞行さん(写真=本人提供)

「大学を知るイベントとしてオープンキャンパスがありますが、学園祭の方がより学生が主体的に活動しているので、オープンキャンパスでは伝わらないリアルな学生生活を感じることができます。志望校選びのヒントや受験に対するモチベーションにもつながると思うので、ぜひ学園祭に足を運んでください」(佐溝さん)

学園祭グランプリは今年度から各大学の学園祭実行委員会とコラボし、学園祭PRイベント「学園祭応援プロジェクト わたしたちの学園祭2024」へとリニューアル。10月には、学習院大学・駒澤大学・上智大学・津田塾大学・日本大学芸術学部・一橋大学・明治大学・立教大学が参加し、サークルや団体によるパフォーマンスも交えて、各学園祭の魅力をアピールしました。

>>【連載】ランキングまるわかり

(文=加藤 徹)

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【写真】「学園祭グランプリ」 首都圏ナンバー1大学はどこ?

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