■特集:塾・予備校選び
「志望校合格」というゴールは同じでも、そこへたどり着くまでの道のりは、一人ひとり異なります。自身の勉強法やノート術をSNSなどで紹介し、多くの受験生の支持を集める東大卒の勉強法デザイナー・みおりんさんは、東大に「大差で不合格」になったあと、予備校に通わず浪人する「宅浪」を選択しました。「宅浪」することを決めた理由や、当時の勉強法を聞きました。(写真=本人提供)
不合格に「何だか腹が立った」
――大学受験で実践してきた勉強法や愛用の勉強グッズを紹介するSNSが人気を集めています。プロフィル欄には現役での東大受験は「大差で不合格」と書かれていますが、予備校や塾に通わない「宅浪」という方法を選択した理由は、何だったのでしょうか。
一番の理由は、志望校である東大に合格するためには何をすればいいかが、すでにわかっていたからです。合格のために必要な教材はそろっていましたから、それを活用しながら計画を立てて勉強すれば、理論上、合格できるだろうと思っていました。個々の生徒の理解度に関係なく、一定のカリキュラムに沿って進める集団授業がもともと得意ではなかったことや、予備校の授業料は家計の負担になること、それにただでさえ不合格で落ち込んでいる時に何度も勧誘の電話をかけてきた予備校には通いたくなかったこともあります。

――浪人生活のスタート時に、「やるべきことがわかっていた」というのはすごいですね。
いえいえ、現役の時は落ちていますから(笑)。敗因の一つは、情報収集が遅かったことだと思います。例えば、東大の合格体験談を読んで、「合格者の大半がやっている勉強法」を実践すれば確実に合格の可能性は上がると思うのですが、現役時代の私は本番直前まで、そういうことに気付きませんでした。だから不合格とわかった時は、悲しいと同時に、何だか自分に腹が立っちゃって。すぐに情報収集と1年間の計画作りを始めました。
教材ごとに必要な時間をリスト化
――浪人中の勉強の計画は、どのように作りましたか。
まずは教材ごとの勉強スケジュールと、模試のスケジュールを盛り込んだ年間計画を作り、その年間計画をもとに、直近の月のデイリーのスケジュールを決めました。

――計画を作る上で工夫したことは何でしょうか。
教材ごとに、勉強するのに必要な時間を調べたことです。現役時代の経験から、「これくらいでできるだろう」という希望的観測で学習を進めても入試までにやりきれないことがわかったので、実際に問題を解きながら時間を計り、「この問題集は全部で何章あって、1章読むのに何分かかるから、全部読むと何分かかる」といったデータを書き留めました。

とはいえ、日々の勉強の中では少しずつズレも出てくるので、毎週日曜日は「調整日」として遅れた分の解消に充てたり、定期的に計画を見直したりしていました。年間計画表も、1年間で3、4回アップデートしたと思います。

正解を導く「発想」をインストール
――勉強の仕方は、現役時代と変わりましたか。
変わりましたね。数学が苦手でしたが、現役の時は問題集に取り組んでも自力では解けず、答えを見て書き写すような勉強ばかりになっていました。でも、合格するために大事なのは、問題を何度も解き直して、自力で解答できるようにしておくということ。どんなにいい問題集をそろえてもこれでは意味がなく、結果的に力がつきませんでした。
浪人中に実践したのは、「問題を解くための発想方法を自分自身にインストールするやり方」です。解けない問題があった場合、解説を見れば「何となく意味がわかる」ものですが、自力で解く力を身につけるためにはそこから一歩進んで、「なぜこの解法で答えが出るのか」「この解法を思いつくためにはどのような知識が必要なのか」といったことを考えることが大切です。実際、このような勉強方法をするようになってからは、問題集の正答率も上がっていき、最終的にはほとんどの問題を自力で解けるようになり、本番に通用する力が身につきました。
合格体験談で情報収集
――同じ教材でも、使い方次第で学習効果が変わるのですね。
そうですね。それから教材は自分のフィーリングに頼って選ぶのではなく、徹底的にリサーチをした上で買うようにしました。現役の時は合格体験談で良さそうな教材を見つけても、とっつきづらいと思うものは避けて、カラフルで読みやすそうだとか、収録されている問題集が多いだとか、自分の直観で教材を選んでいたんです。
東大の出題傾向に合った教材を探すためのリサーチには、合格体験談を活用しました。よく読んでいたのは、「私の東大合格作戦」シリーズ(エール出版社)です。東進の合格体験談や、合格者のブログなども、よく読みました。
模試で自分の位置付けを確認
――浪人時代は模試をかなり受けていますね。
6月の駿台全国模試から、年明け2月に行われる河合塾の東大本番プレテストまで、大手予備校のマーク式模試と東大模試を中心に、合計14回受けました。予備校に通っていれば、小テストの結果などから自分の位置付けが何となくわかるのでしょうが、宅浪の場合は、普段の勉強では自分がトップなのか、めちゃくちゃ下の方なのかもわからないので、模試がとても重要です。また、定期的に模試を受けていると、「次の模試までにこの単元を完成させよう」というように、勉強のペースを管理しやすくなるメリットもあります。
――模試を受けた後は、どのようにしていましたか。
1日で終わる模試ならば終わってから1日かけて、2日にわたって行われる模試ならば2日間かけて、丁寧に復習していました。解けなかった問題や間違えた問題の解き直しだけでなく、受験後に配布される解答解説の冊子を読むことも大切です。解説冊子は、大手予備校が総力を挙げて作っているだけあって、受験生にとっては役立つ情報の宝庫なんです。私は重要だと思うところにアンダーラインを引いたり、赤シートを使って暗記をしたりして、解説冊子をフル活用しました。
――予備校に通っていると、授業の予習復習もあり、模試の復習にはそこまで時間を割けませんね。
そうなんですよ。やるべきことがたくさんあって、そもそも予備校に行く時間的余裕がないんです(笑)。振り返ってみると、当初立てた計画の8割程度は実行できましたし、東大にも合格できました。私には、宅浪が合っていたのだと思います。
みおりん/県立高校を卒業し、1年間の自宅浪人(宅浪)の後、東京大学文科三類に合格。在学中から、自身の経験に基づいた勉強法などを紹介するブログの運営を始める。3年次の進路選択で法学部に進み、卒業後、IT企業勤務を経て独立。現在は日本唯一の「勉強法デザイナー」として、SNSなどを通じて勉強法に関するさまざまな情報を発信している。2020年に投稿を開始したYouTubeチャンネル「みおりんカフェ」のチャンネル登録者数は、16.3万人(2024年12月現在)。著書に『東大卒女子の最強勉強計画術』(Gakken)、『豆腐メンタルのわたしが宅浪で東大に入れた理由』(二見書房)など。
>>【後編】浪人中に失恋も経験した東大卒の勉強法デザイナー・みおりん 「宅浪」でのメンタル管理はどうしていたの?
(文=木下昌子、写真=本人提供)

【写真】東大法学部卒のYouTuberみおりん 予備校に通わない「宅浪」で合格した勉強法とは?
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