【就活体験】「文系」東大生がエンジニア採用 大学では「古典」研究、ICT業界を目指した理由

2024/04/21

私の就活体験記

ICT業界というと、理系や情報系学部の出身者が目指すところというイメージがありますが、実際には幅広い学部の出身者が活躍しています。ICT業界で急成長し、有名人を起用したCM やSNSを活用した採用活動で認知度と人気が上がっているS k y株式会社には、アプリ開発に携わっている入社間もない文系出身の社員もいます。大学で古典を学んだ学生が、エンジニアとして採用されました。そうした社員は、大学時代にどのように学び、同社への就職を決めたのでしょうか。(写真=S k y株式会社提供)

文系からモノづくり

業務系システム開発などを手掛けるS k y株式会社の2023年度の新卒採用は178人。出身大学の学部は理系57%、文系43%で、文系出身者が意外と多いことがわかります。22年に入社した塚田陽太郎さんは社内システムを開発する部署で、ウェブアプリケーションの開発を担当しています。技術職は理系や情報系学部の出身が多いイメージですが、塚田さんは東京大学文学部の出身です。大学では古典を読み解く研究室に所属していました。ICTとはずいぶんかけ離れた分野ですが、この業界に興味を持つようになったのはなぜでしょうか。

「大学3年の夏ごろから就活に向けて動き始めて、広告業界などのインターンシップに参加しました。現場で社員の方と接するとすごいなと感じる部分があって、そのまま広告業界に絞って就活をしようと思っていました。しかし、4年の春ごろにエントリーシートを書き始めたら、自分の中でしっくりくるような志望動機が書けなくて。もう少し視野を広げて他の業界についても研究しようという気になりました」

就活サイトで業界についての情報収集をしたり、改めて自分が本当に好きなことは何かといった自己分析をしたりする中で、興味が出てきたのがICT業界でした。

「『自分たちでモノを作る』というところに魅かれました。ICT業界の仕事の一つは、ソフトウェアを作ってその価値をお客様に届けることです。幼少期から工作などモノ作りが好きだったので、自分にもできそうだなと感じて、ICT業界のエンジニアになろうと決意しました」

開発職で採用された入社2年目の塚田陽太郎さん(写真=S k y株式会社提供)

就活エージェントで紹介

文系出身ですが、エンジニアを目指すことに不安はなかったのでしょうか。

「就活をしつつ、プログラミングについて学び始めたら、楽しいし、もっと知識を深めていきたいと感じられたので、ネガティブには考えなかったですね。もちろん入社後は、大学で専門の知識や技術を身につけている同期よりも勉強しなければならないという覚悟はしていました

ICT業界に志望を定めてからは、就活エージェントを活用し、面談で自分の希望などを聞き出してもらい、条件面や雰囲気などが合う企業を紹介してもらいました。その中で、S k y株式会社に魅力を感じたのは、人材の育成や評価に力を入れていることでした

入社後は2~3カ月間、職種別の研修期間があり、技術に特化した研修を受けられるので、プログラミングなどに触れてこなかった自分にとっては安心材料でした。また、年に2回ある査定は、直属の上司だけでなく、後輩や他部署の社員など多角的な評価によって実績や努力を正当に評価してもらえる点が、自分の性格に合っていると思いました」

大学時代の塚田さん(写真=本人提供)

古典の読み解きに通じる就活

業界・企業研究や自己分析を進める中で役立ったのが、大学での学びです。

「大学では古典の白文(句読点や返り点などがない漢文)を読み解く機会が多かったのですが、文法や漢字の意味など一つひとつを丹念に調べて分析し、ニュアンスなども理解しなければ、解釈することができません。就活でも、業界や企業に関するさまざまな情報を得たうえで、自分に合うところを判断していく過程は、白文を読み解く作業と根幹は同じだったと思います」

就職を決めた後、同級生から「文学部出身でもエンジニアとして就職できるんだ」と驚かれることもありました。

「ICT業界のエンジニアといっても、仕事中ずっとアルゴリズムと向き合っているわけではなく、ビジネスとしてサービスや商品を生み出して利益を得ることを考えなければいけません。そのことに気づけたので、文系出身でも障壁がないと理解することができました。面接でも業界の本質を理解できている点などを評価してもらえたのではないかと思います」

大学ではアカペラサークルに所属(写真=本人提供)

職場で求められるのは技術だけではないということは、入社してより強く感じているそうです。現在の仕事でも、大学で白文を読み解いた経験が生きているといいます。

「一つひとつのプログラミング言語などを深く理解しないままシステムを開発すると、壊れやすく、品質のよくないものになります。背景の理解をおざなりにしないという大学で学んだマインドが、今の仕事にも生きています

入社してしばらくは、理系や情報系出身の同期に対しても、劣等感を抱くことはなかったそうです。

「スタートラインでは差は感じませんでしたが、入社後2年経って、よりプロフェッショナルとして、数学や情報学的な知識が求められるようになってきたと感じています。文系出身だと不足している知識があるので、これから勉強して補っていきたいです。さらに技術を深めることができたら、今後は生成AIなど先進的な技術と社内のデータを組み合わせたシステム開発を進めていくことが目標です」

大学で学んだことがしっかりと身についていれば、その力は業界や職種を問わず、社会人になっても生かされるのです。

>>【連載】私の就活体験記

(文=中寺暁子)

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