安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件で、その場で逮捕された容疑者の犯行動機として報じられた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に注目が集まっている。NHKなどの報道によれば、容疑者は母親が多額の寄付をした結果、破産に追い込まれたという。
弁護士ドットコムには同団体に限らず、様々な宗教団体の信者となった家族とのトラブル相談が寄せられている。夫婦関係や恋人、パートナーとの関係にも大きな影響を及ぼす。その一例を紹介したい。
●入信を断ったら「入らないとバチが当たる」
交際中は大きな問題にならなくても、いざ結婚というところで、待ったがかかるケースは多い。
交際中の彼氏の母親から「結婚の話の前に宗教の話をさせてほしい」と言われ、会った女性は「彼とは結婚したいが、あの義母では…」と悩んでいる。
「入らないとバチが当たるとまで言われました。ニュースとかでも、あまり良い噂のない宗教で正直こわいです。そして私の両親もそれを理由に結婚反対となってしまいました。けれど彼とは別れたくありません」
●宗教を離れるなら「今までの養育費を払ってもらう」
相手の宗教を理解しようとしても、要求がエスカレートするケースもある。
彼氏がある新興宗教の信者だった人は、2人の間で「お互いに強制しない」と決めていたという。しかし彼の両親から「仮でも良いから入会してほしい」「入会したらすぐに結婚させてやる」ということを言われたという。
宗教を理解しようとしたものの、講習や会合に出席した上で、信者にはなれないと判断した。ところが相手の親は「嫁になるというのは、相手の家に従うこと」とまで言い出し、なんとか女性を信者にしようと脅すようになっていった。
息子である彼氏にも矛先が向かってしまう。「家を出ていくなら反社会的勢力を引き連れて連れ戻す。仕事も辞めてもらう。今までの養育費を払ってもらう」などといって、職場にまで押しかける事態になった。
●妊娠、出産後に呪いの言葉をかけられる
幸いにして結婚に至っても、子どもの信仰をめぐる争いに発展しやすい。
結婚後に夫とその家族がある宗教の信者だったことを知った人は、妊娠、出産後に呪いの言葉をかけられるようになったという。
妊娠中には「(宗教に)入らないなら嫁にいらなかった、あなたの親にはうちの宗教に入ったことを黙っていればわからない、などと言われ続け、毎週のように関係者の方が夜遅くに家まで訪ねてくる」などとその時妊娠していたこともあり精神的にとても辛い思いをしたそうだ。
さらにお宮参りでは、まさに騙し討ちのような目にあったという。
「入会はさせないかわりに、お宮参りを宗教団体の会場でしたいと言われたので、入会の儀式などでないことを確認し入会の意思がないことなどを伝えた上で会館につれていきました。儀式が終わったところで、入会の儀式はこれで終了です。と。その時に初めて騙されていた事がわかりました」
その後、正式な入会手続きを義理の両親がしていたこともわかり、離婚に至ったという。
●別居した姑が「宗教の仲間を連れて押し掛けて来た」
絶縁は無理でも、引越しするなどして距離をおいた場合でも、逃げ切れるわけではない。
ある宗教に入っている義母からの勧誘を避けるため、引っ越し先を伝えずに別居に踏み切ったが、その後も苦難は続いている。
「先日、主人の職場に宗教の仲間を連れて押し掛けて来たそうです。そして、昨日は職場に、物凄い剣幕で電話をしてきて『お前の(主人)昔の知られたくない事を職場にバラして働けなくしてやる』と言ってきたそうです」
関わっても地獄だが、逃げてもさらに追いかけてくるのが家族の宗教トラブルでよく聞かれることだ。
●実家の宗教を伝えずに結婚→「詐欺だから訴える」と別居に
結婚はそれぞれが育ってきた環境の中での「当たり前」が衝突するがゆえ、一方にとっては「何でもないこと」が、相手にとっては「許せない一大事」になることは多い。信仰はしっかりと事前に話し合っておかないと、大きなトラブルの火種になりやすい。
ある人は、新興宗教の3世として生まれ、「生まれた瞬間から親の意思でその宗教団体に入れられてしまった」という。しかし「宗教活動を一切しておらず、家庭のお金を宗教に使ったこともなく、嫁に宗教の強要もしておらず、仏壇すら置いていない」ことから、「信者ではない」と伝えていた。
しかし、実家の宗教を知った妻から「詐欺だから訴える」と言われ、別居が始まったという。相談者は離婚を望んでいない。
このケースのように「自分は信者ではないから」などいう理由で、親の宗教を隠した人が、後になって発覚し、修復不能な関係になったという相談は複数あった。
●宗教を知った相手義家族が「息子を身体で騙しやがって」と脅し
結婚時、相手に信仰を伝えるだけでは不十分かもしれない。相手の家族に伝えなかったことで、トラブルになるケースもあった。
「婚姻前にその宗教はやめていた」という相談者の女性は、相手とは授かり婚だった。夫には「今、宗教に入っていなければ大丈夫」と言われ、結婚している。
しかし入籍し、信仰がわかった途端、「この結婚は認められない、息子を騙してお金をとるつもりか、身体で騙しやがってなとど言われています」。夫との仲は良好だが、義家族との関係は話し合いすらできない状態で、今後に不安が募る。
●「宗教を子どもに強要するのは虐待ではないか」
交際、結婚、出産までのハードルを乗り越えた場合でも、子どもの宗教をどうするか。ここが宗教の異なるカップルで、最大の難関かもしれない。
自身は無宗教だが、妻がある宗教の信者だという男性は、子どもに宗教行為をさせる妻の態度に苦悩している。
そもそも結婚するにあたって「子どもに関しては子どもの意思を尊重したい」「子どもにはやらせない」と合意していた。ところが、仏壇の前で正座させてお経をあげるなどエスカレートし始め、次第に「一緒に修業をさせたい」「修業をさせることは、この子の使命」と言い出すようになった。
「子どもを守りきれないかもしれないという絶望感と、簡単に約束を破った妻への怒りで日々苦悩しております」。
妻とは話し合いが成立せず「正常に判断できる能力の備わっていない子どもを、親の強権でやらせる、もしくは断ることのできない状況に置いて宗教を強要するのは虐待ではないか」と考えている。
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