4月5日の海外株式・債券・為替・商品市場
欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は次 の通り。
◎NY外為:円が上昇、2014年以来の高値-介入リスクを警戒
5日のニューヨーク外国為替市場では円が対ドルで上昇。1年半ぶ りの高値をつけた。インフレ率の上昇を目指す日本銀行の金融政策に打 撃を加える恐れがある。
円は一時、1ドル=110円を抜いた。一部のストラテジストはこれ を節目とみなし、日本の市場介入リスクが高まったとみている。これよ り先、菅義偉官房長官が為替水準の動向を緊張感を持って注視していく と発言し、日本銀行の黒田東彦総裁も為替を注視すると述べた。また、 必要と判断すれば追加措置を講じるとあらためて表明した。
HSBCホールディングスの米通貨戦略責任者、ダラフ・マー氏 (ニューヨーク在勤)は「円は典型的なリスクオフ通貨となっている」 と述べ、「市場参加者が神経質になった時に行き着く先が円だ」と続け た。
ニューヨーク時間午後5時現在、円は対ドルで0.9%上昇して1ド ル=110円34銭。一時は109円95銭をつけた。円は対ユーロで約1%上昇 して1ユーロ=125円61銭。
アナリストは日本の当局者が円安を目指して行動を起こすかどうか 注目している。2月末時点で日本は2011年以降、為替に介入していな い。
HSBCのマー氏は1ドル=110円は「心理的に節目となる水準」 だと指摘し、介入をめぐって市場参加者は神経質になると述べた。円の 上昇は日本企業にとっては利益を損ねる要因となる。
一方で、通貨市場に不安定さの兆候がない中で差し迫ったリスクは ないと見る市場参加者もいる。BNPパリバの外為トレーディング責任 者、ピーター・ゴラ氏は電子メールで「介入への恐怖は常にある。しか し市場は秩序だった環境にあるので、介入はないだろう」と述べた。
また、野村ホールディングスのシニア為替ストラテジスト、チャー ルズ・サンタルノー氏(ロンドン在勤)は、相場が当局者の積極的な介 入を誘う水準に近づいているわけではないと指摘した。
円は今年に入り上昇している。中国減速の兆しが世界経済に影響を 与えているとの兆しが背景にある。この日の円高や日本の当局者の反応 は、市場が不安定な動きを示した際に安全逃避通貨国が直面する問題を 示している。
三菱東京UFJ銀行の外為ストラテジスト、リー・ハードマン氏 (ロンドン在勤)は円のバリュエーションからはまだ上昇の余地がある ことが示されていると指摘、「年初来から上昇しているが円は依然とし て割安だ」と述べた。円の過去5年間の平均水準は1ドル=約99円だ。
原題:Yen Surges to Strongest Since 2014 as Intervention Risk Weighed (抜粋)
◎米国株:S&P500種は4週間で最大の下げ-世界的な成長低迷懸念
5日の米株式相場は下落。S&P500種株価指数は4週間ぶりの大 幅安となった。世界的な成長低迷が深まるとの懸念が広がった。
この日は銀行株を中心に下落、逃避需要から米国債が買われ、利回 りが低下する中で銀行株は売られた。バンク・オブ・アメリカ(Bof A)が安い。ヘルスケア株は3営業日ぶりに下落。アラガンは15%安と なった。米政府が4日発表した企業のインバージョン(租税地変換)抑 制措置で、ファイザーとの合併が脅かされるとの懸念が広がった。
S&P500種株価指数は前日比1%安の2045.17。ダウ工業株30種平 均は133.68ドル(0.8%)安の17603.32ドル。ナスダック総合指数は 1%下げた。
ライノ・トレーディング・パートナーズ(ニューヨーク)のチーフ 株式ストラテジスト、マイケル・ブロック氏は「相場は失速しつつあ る」と指摘。「さらに円の上昇継続や、アラガンに大きな打撃となって いる米財務省の発表が状況を悪化させている。あす6日には米連邦公開 市場委員会(FOMC)の議事録が公表され、極めてハト派的な内容に なると見込まれている。もしハト派的でなかった場合は市場は混乱する かもしれない」と続けた。
S&P500種は2月に付けた1年10カ月ぶり安値から最大13%上げ てきたが、勢いを失い始めている。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事はこの日ブルームバー グテレビのインタビューに応じたが、世界経済の成長に対する不安を和 らげるような発言は聞かれなかった。同専務理事は下振れリスクが強ま ったとし、「上向きの要素はあまり見当たらない」と述べた。
シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数 (VIX)は9.2%上昇し15.42。2日間の上げとしては約2カ月で最大 となった。
この日の経済指標では、3月の非製造業総合景況指数が前月から上 昇。一方で2月の貿易赤字は拡大し、半年ぶり高水準となった。輸入の 伸びが輸出の伸びを上回った。
米連邦準備制度理事会(FRB)は6日にFOMC会合(3月開 催)の議事録を公表する。先物トレーダーらが織り込む4月の利上げ確 率はゼロ、12月でようやく50%以上に上昇する。
アッシュバートン・インベストメンツで100億ドル相当の資産運用 に携わるベロニカ・ペクラナー氏は「市場はファンダメンタルズ面の見 通しについて、もっと現実的な視点に戻りつつある」と指摘。「企業利 益に関しては一部の業種で引き続き圧力が見られる。ファンダメンタル ズの点から見て懸念すべき状況だ」と続けた。
S&P500種の業種別10指数は全て下落。公益や金融、ヘルスケア の下げが目立った。
原題:U.S. Stocks Retreat as Rally Falters Amid Global Growth Concerns(抜粋)
◎米国債:上昇、10年債は1カ月ぶり低利回り-世界経済の減速懸念で
5日の米国債相場は上昇。10年債利回りは約1カ月ぶりの低水準を 付けた。世界経済の成長が鈍化しているとの懸念が再燃し、比較的安全 な国債への需要が強まった。
ドイツの製造業受注は2月に予想に反して前月比で減少し、ドイ ツ10年債利回りが1年ぶりの水準に低下すると、米国債は上昇した。世 界の株式相場は2月以来の大幅安。世界経済見通しの悪化で米国の利上 げ観測が弱まったため、米国債の年初来のリターンは3.2%となってい る。
BMOキャピタル・マーケッツの債券ストラテジスト、アーロン・ コーリ氏は「米国は世界から隔離されているわけではなく、世界的な問 題は米国にも影響している。その混乱が継続するかどうかが大きな問題 だ」と述べた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月会合で世界的なリスクを 指摘し、2016年の利上げ見通しを下方修正。市場の利上げ見通しに近づ いた。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は先週、利上げ を「慎重に進める」ことは適切だと述べた。今後1年の価格変動見通し を示すバンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの指数は5営 業日連続で低下し、2014年12月以来の低水準を付けた。
ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによれば、ニューヨーク時間 午後5時現在、10年債利回りは前日比4ベーシスポイント(bp、1b p=0.01%)低下の1.72%。終値ベースで2月25日以来の低水準となっ た。同年債(表面利率1.625%、償還2026年2月)は12/32高の99 5/32。
金融政策に敏感な2年債と、物価・経済成長の見通しの影響を受け やすい30年の利回り差は4日連続で縮小。4bp低下の1.82%となっ た。
米商務省が5日発表した2月の貿易収支統計によると、 財とサー ビスを合わせた貿易赤字(国際収支ベース、季節調整済み)は471億ド ルと、半年ぶり高水準となった。輸出額が1%増と、昨年9月以来で初 めてのプラス。輸入額は1.3%増加した。
JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテ ジスト、ガブリエラ・サントス氏は第1四半期の米国内総生産 (GDP)統計について、この日の貿易収支が示した同じような内容を 多々反映すると指摘。「輸出が成長にかなりのマイナス寄与となり、投 資支出はなお若干弱い。それは世界的な弱さを一部反映している。その 結果、成長は現状を打ち破ることができない」と語った。
金利先物市場が織り込む6月までの利上げ確率は20%。FOMCが 声明を発表する前日の3月15日には54%だった。この算出は利上げ後の 実効フェデラルファンド(FF)金利が平均0.625%になるとの仮定に 基づく。
原題:Treasuries Advance as Global Growth Concern Boosts Haven Allure(抜粋)
◎NY金:反発、1週間ぶり大幅高-株価下落で逃避需要の買い強まる
5日のニューヨーク金先物相場は反発。1週間ぶりの大幅高となっ た。株価下落や世界的な景気懸念の高まりを背景に、米利上げの見通し が後退した。
RJOフューチャーズ(シカゴ)のシニアマーケットストラテジス ト、フィル・ストライブル氏は電話インタビューで、「投資家はS& P500種や他の株式などリスクの高い資産を手放しており、金のような 安全資産に注目している」と指摘。「マネーを置いておく場所として、 金は好ましい投資先のように見える」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は前日 比0.8%高の1オンス=1229.60ドルで終了。
銀先物5月限は1.2%上昇の15.116ドル。ニューヨーク商業取引所 (NYMEX)のプラチナは値上がり、パラジウムは下落した。
原題:Gold Rises Most in a Week as Equities Drop Boosts Haven Demand(抜粋)
◎NY原油:反発、イラン抜きでも生産合意は可能とクウェート
5日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インタ ーミディエート(WTI)先物が反発。クウェートはイラン抜きでも産 油量を1月水準で据え置くための合意は成立可能だとの見方を示した。 ドルが対円で約1年ぶりの水準に下げたことも、ドル建てで取引される 商品の魅力を高めた。6日発表の米エネルギー情報局(EIA)統計で は、米原油在庫の増加が示されると予想されている。
プライス・フューチャーズ・グループ(シカゴ)のシニア市場アナ リスト、フィル・フリン氏は産油国会合を控えて各国から出される発言 について、「あまり深読みはしないつもりだ。会合は開かれそうな気配 だ。開催されれば合意が成立する可能性は十分にある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は19セ ント(0.53%)高い1バレル=35.89ドルで終了。一時は3月4日以来 の安値となる35.24ドルに下げる場面もあった。ロンドンICEのブレ ント6月限は18セント(0.5%)上げて37.87ドル。
原題:Oil Rises as Kuwaiti Says Iran Isn’t Needed for Freeze Pact(抜粋)
◎欧州株:6週ぶり大幅安、軟調なドイツ経済指標を嫌気
5日の欧州株式相場は下落し、指標のストックス欧州600指数は約 1カ月ぶり安値を付けた。経済指標でドイツ経済の弱さが明らかになっ たためで、自動車株と資源銘柄を中心に売りが膨らんだ。
フランスの自動車メーカー、プジョーシトロエングループ (PSA)は6.5%の大幅安。支出が向こう数年にわたり利益を圧迫す るとの見通しを示したことが売り材料となった。ドイツの鉄鋼会社ティ ッセンクルップは4.7%下落。ヴァーレとのブラジル合弁事業で、ヴァ ーレ側の権益を買い取るとの発表が嫌気された。資源銘柄ではアルセロ ール・ミタルとグレンコアの下げが目立った。
ストックス600指数は前日比1.9%安の328.15で取引を終了。これは 2月24日以来の大きな値下がり。業種別指数は全てが下げた。西欧の主 要株価指数も総じて安く、ドイツのDAX指数は2.6%安となった。
MPPM(独エップシュタイン)のギレルモ・ヘルナンデス・サン ペレ氏は「景気減速の見方が裏付けられた」とし、「欧州中央銀行 (ECB)の前回会合以来、リスク志向は見られていない。投資家の信 頼感はまだ回復していない」と語った。
原題:Europe Stocks Fall Most in Six Weeks on Weak German Factory Data(抜粋)
◎欧州債:ドイツ債が続伸、利回り1年ぶり低水準-景気めぐる懸念で
5日の欧州債市場ではドイツ10年債が4営業日続伸。経済指標でユ ーロ圏経済の勢いが上向くには程遠いことが明らかになり、利回りは約 1年ぶりに0.1%を割り込んだ。
フランス10年債利回りも2015年4月以来の低水準に達した。スペイ ン10年債のドイツ国債に対する利回り上乗せ幅(スプレッド)は先月23 日以来の大幅拡大で、投資家らが保守的な志向を強めた兆しが表れた。
欧州全体の株安に加え、デフレ圧力の長期化見通しから欧州中央銀 行(ECB)が追加刺激策を維持または拡大するとの見方が強まった。 これが最も安全とされる債券の需要を支えている。オーストリアが発行 した2026年償還債の平均落札利回りは昨年5月以来の低さだった。
DZ銀行のアナリスト、クリスチャン・ライヒャター氏(フランク フルト在勤)は「世界経済をめぐる懸念がある」ことから「ドイツ国債 は依然として安全な投資先で、上げている」と指摘。「このような環境 では同国債が引き続き投資すべき対象だ」と語った。
ロンドン時間午後4時4分現在、ドイツ10年債利回りは前日比3ベ ーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の0.098%。一時 は0.081%まで低下した。これは過去最低となる0.049%を付けた15年4 月以来の低さ。同国債(表面利率0.5%、2026年2月償還)価格は0.33 上げ103.945。スペイン10年債とのスプレッドは7bp拡大の140bpと なった。
マークイット・エコノミクスがこの日発表した3月のユーロ圏総合 購買担当者指数(PMI)改定値は53.1と、2月の53.0を上回ったもの の、先月22日公表の速報値(53.7)から下方修正された。
フランス10年債利回りは2bp低下し0.44%、同年限のオーストリ ア国債利回りは3bp下げて0.31%となった。
原題:German Bund Yields Verge on Level That Helped Spark 2015 Selloff(抜粋)