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「界隈×ミーム」って何? SNSのトレンドや企業のマーケティングを振り返る【2024年】電通デジタルが読み解く、SNSマーケの最旬トピックス

» 2024年12月20日 08時30分 公開

連載:電通デジタルが読み解く、SNSマーケの最旬トピックス

デジタルマーケティングの世界では、大きな変化のうねりの中で日々、新たなアイデアやトレンドが生みだされ続けている。そんな中でも、特に生活者との重要なコミュニケーションの場になっているのがSNSだ。生活者の心を動かし、ブランドグロースや事業成長に寄与する施策はどんなものだろうか。また、SNSで話題になっては消えていくトピックスの中で、本当にキャッチアップするべきものをどう選別し、そしてどんな視点で解釈するべきか。日々さまざまなマーケティング施策やコンテンツに触れている、電通デジタルのメンバーがSNSマーケの最旬トピックスを解説していく。

 2024年も12月を迎え、終盤に差し掛かりました。今年もSNSマーケティングの分野ではさまざまなニュースやトピックスが生まれました。

 今回は、電通デジタルのSNSマーケティング専門集団であるソーシャルコネクトグループの3人が「ユーザー」「プラットフォーム」「広告活用」の3つの視点でSNSマーケティングを振り返ります。

SNSのトレンドや企業のマーケティングを振り返る(画像:ゲッティイメージズより)

「界隈×ミーム」とは? SNSトレンドを振り返る

 2024年のユーザー視点でのSNSトレンドについて、電通デジタル ソーシャルコネクトグループの樋口陵が紹介します。

 今年を象徴する言葉を選出する「現代用語の基礎知識選 2024 ユーキャン新語・流行語大賞」に「猫ミーム」「界隈」「BeReal」がノミネートされました。これらの話題になった言葉からSNSトレンドを読み解いていきましょう。


・ミーム

 ミームは、もともと1976年に生物学者リチャード・ドーキンス氏が提唱した言葉です。彼はこの言葉を文化的情報の単位として定義し、人々の間で模倣を通して自然に広がる概念や行動を指すとしています。

 SNSの普及により、ミームは画像や動画、キャッチフレーズなど視覚的で短い形式のコンテンツとして広く使われるようになりました。今年、特に話題になったのが「猫ミーム」です。これは猫や犬、その他の動物のリアクションに音声を組み合わせて日常生活を再現する短尺動画で、TikTok、YouTube、Instagram、Xなどで広まり、浸透しました。

・界隈×ミーム

 最近では「界隈×ミーム」としてSNSで話題になるコンテンツも増えています。界隈とは、もともと「地域」「近隣」を意味する言葉ですが、現代のSNSやインターネット文化では、特定の関心事や趣味を共有する人々が集まるコミュニティやその文化、またはその周辺を指す言葉として用いられます。

 例として「風呂キャンセル界隈」は、風呂に入ることを面倒に感じる人々を指し、「伊能忠敬界隈」は長距離を歩くことを好む人々や、長時間の歩行を仕事や趣味とする人々を指します。

 また、界隈×ミームにおいては「#ママ界隈」というハッシュタグを付けた動画も増えています。猫ミームに似た形式で、ケープハイラックスという動物の鳴き声と共に「何度も声をかけてくれたのに寝坊し、学校まで送れと要求する自分」や「スーパーでママを見失った時の自分」といった親への甘えや苦労、不満をユーモラスに描いた動画で、TikTokを中心に広がっています。

・BeReal

フランスで誕生したBeReal(画像:BeReal プレスリリースより)

 今年最も知名度を高めたSNSプラットフォームとしては、BeReal(ビリール/ビーリアル)が挙げられるでしょう。Z世代を対象にした調査の「2024年上半期で流行ったコト・モノ」ランキングで1位を獲得しています。

 BeRealで撮影した画像やBeReal風に編集した画像の投稿が他のSNSでも流行し、注目を集めています。BeRealはインカメラとアウトカメラを使って同時に撮影し、フィルターや補正機能を排除し、その瞬間の「本当の自分の姿」を共有することを目指しています。

 この「映えない」「盛れない」「ありのままのリアル」といったコンセプトが、Z世代を中心に支持されています。「盛れない」投稿が人気となっている背景には、SNS映えに疲れを感じている人々が増加している状況があるのかもしれません。

 さまざまなプラットフォームや界隈で生まれ続けるミームの現象を正確に理解することは、各世代とのコミュニケーションの理解を深める重要な鍵となるでしょう。

SNSプラットフォームを変えた2つの要素

 次に、電通デジタル ソーシャルコネクトグループの竹内春日がSNSプラットフォームの動向を紹介します。2024年における大きなテーマは「縦型動画」と「AI」の2つです。


・縦型動画

 Instagramではリール(90秒以内の縦型動画をシェアする機能)のアルゴリズムが大幅にアップデートされました。その結果、フォロワー規模にかかわらず、興味を持つ可能性が高いフォロワー外のユーザーにもコンテンツが表示されやすくなっています。

 TikTokは、縦型動画の流行を支えるためにクリエイターとの連携を強化。クリエイターに対して報酬を配分する「Creator Rewards Program」や、クリエイターと広告主をつなぐエコシステムである「TikTok One」を発表しています。従来はテキスト中心のメディアだったXについても、9月に初の縦型動画の予約型広告メニューである「イマーシブテイクオーバー」をリリースしました。

Creator Rewards Program(画像:TikTokプレスリリースより)

・AI

 縦型動画に加え、AIが存在感を示した1年でもありました。TikTokは生成AIを活用し、新たなクリエイティブソリューションである「TikTok Symphony」を8月にリリース。プラットフォーム内の膨大なコンテンツを学習し、最適なプラクティスやトレンドを容易に発見できるようになっています。

 Metaは4月、大規模言語モデル「Llama 3」をリリースし、グローバル市場に向けて「Meta AI」をアップデート。ダイレクトメッセージの自動応答や画像生成機能を強化しています。Xも大規模言語モデル「Grok」をリリースし、8月に「Grok-2」のベータ版をリリース。従来の会話対応やテキスト生成に加えて、画像生成にも対応しました。

企業によるSNSマーケのトレンド、どんな活用が増えた?

 最後に、企業によるSNSマーケティングの2024年のトレンドについて、電通デジタル ソーシャルコネクトグループの鈴木悠真が紹介します。

 特に注目すべきトレンドは「縦型動画の利用加速」と「クリエイター活用の進化」の2つです。これらのトレンドが企業のマーケティング戦略にどのように影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。


・縦型動画の利用加速

 先述したように、各プラットフォームでの縦型動画の進化が顕著であり、企業の利用も増加しています。TikTokでは、2024年上半期に「ショートドラマ」がトレンドとなり、この形式をマーケティングに応用する企業が増えています。

 ショートドラマは、視聴者に物語性を提供しつつ商品を自然に紹介する手法で、広告とエンターテインメントの境界を曖昧(あいまい)にすることでユーザーへの自然なプロモーションが可能です。TikTok Japan広報は日経クロストレンドの取材に対し、「ショートドラマが注目を集めるようになったのは21年ごろからで、特に24年の上半期はその勢いが一層加速した」とコメントしており、一層の盛り上がりが分かります。

 また、Instagramの縦型動画であるリールの活用も進展しています。コンテンツが興味を持ちそうなフォロワー外のユーザーにも直接表示されやすくなった結果、企業アカウントは新しいファンにリーチしやすくなりました。企業のオーガニック投稿でリールが半数以上を占める例も増えています。

・クリエイター活用の進化

 以前から人気だったインフルエンサーマーケティングに関しては、オーガニック投稿のみならず、クリエイターがSNSに投稿したコンテンツを広告として活用する動きが進んでいます。

 TikTokでは「Spark Ads」、Instagramでは「パートナーシップ広告」という手法が加速し、クリエイターが作成したコンテンツを企業広告として配信しています。これにより、ブランドはより自然な形で消費者へのアプローチが可能です。TikTokの「TikTok One」により、クリエイターとの連携がさらに簡単になり、Instagramでもプロモーションを行うブランドと施策に参加するクリエイターのマッチングを支援する「クリエイターマーケットプレイス」が日本でも利用可能になっています。

まとめ

 SNSは現在、人々の生活においてインフラとも言えるべき不可欠な存在になりました。そんなSNSを企業が効果的にマーケティング活動に使っていくには、目まぐるしく変化する「プラットフォーム」「ユーザー」「広告メニュー」の3つの動向に対応しながら施策を検討していくことが重要です。 2025年も、最新のトレンドをしっかり把握し、SNSマーケティングを一層効果的に活用していきましょう。

著者プロフィール

樋口陵

1987年生まれ。芸能事務所機能を持つマーケティング会社にてSNSを活用した新規事業開発やインフルエンサーの発掘育成、SNSの運用などを経験し2021年電通デジタル入社。電通デジタル ソーシャルメディアエクスペリエンス部門ソーシャルコネクトグループに所属し、TikTok・インフルエンサー施策のエキスパートとしてSNSを起点に企業が抱えるマーケティング課題の解決をミッションとし、SNS全体の戦略設計からプランニング、ディレクションまで幅広く従事。


著者プロフィール

竹内春日

1995年生まれ。インターネット広告代理店に入社し、アフィリエイト広告運用の業務を経験し2021年電通デジタルに入社。ダイレクト案件を中心としたDSP・ADNW全般の運用やメディア向き合いのセールス担当を経て、プラットフォーム部門ソーシャルプラットフォーム部 ソーシャルコネクトグループに所属。AD×オーガニック×データを活用した統合マーケティング支援や、SNSプラットフォーマーと連携したプロモーション支援、独自のソリューションパッケージの制作・拡販など幅広く従事。


著者プロフィール

鈴木悠真

1989年生まれ。PR会社・SNSマーケティング支援会社などを経験し2022年電通デジタル入社。電通デジタル プラットフォーム部門ソーシャルプラットフォーム部 ソーシャルコネクトグループに所属し、電通デジタルでSNSマーケティングにおける広告領域、プランニング・コミュニケーション領域、データ領域の統合的なビジネスプロデュース業務に従事。


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