パン(Pan)・チルト(Tilt)・ズーム(Zoom)の3機構を備えたカメラを、俗に「PTZカメラ」という。遠隔地に固定して、ネットワーク経由でコントロールできるため、監視用途などの業務向けとして長らく使われてきたが、昨今は放送に耐えられる品質のものが増えている。
用途は同じく遠隔操作だったわけだが、昨今は発展目覚ましいAI技術と組み合わせることで、もはや人が操作しない、自動撮影カメラという方向へ進化してきている。ここではInter BEE 2024で見る事ができた、PTZカメラの進化についてまとめてみたい。
ソニーのPTZカメラは、映像制作向けとしてBRCシリーズがあるが、それ以上だともう次はCinema Lineの「FR7」になるという、極端に間が空いたラインアップだった。そこを埋める形で2024年11月にリリースされたのが、「BCR-AM7」である。Inter BEE2024での展示では、実写コーナーにポツンとあっただけなので、気が付かなかった人も多かったと思う。
レンズは35mm換算24〜480mmの光学20倍ズームレンズで、絞りはF2.8〜4.5。超解像領域まで含めれば、4K解像度で30倍、フルHDで40倍の高倍率ズームが使える。さらに大きな特徴として、電子式可変NDフィルターを搭載している。撮像素子は1.0型ExmorRS CMOSイメージセンサーで、有効画素数は約1400万画素。画像処理エンジンは最新のBIONZ XR。
こうしてみると、カメラ部は24年9月にリリースされたハンディカムコーダ、NXCAM「NXR-NX800」およびXDCAM「PXW-Z200」とほぼ同スペックである。つまりソニーは1回の光学設計で、実にカメラ3モデルを展開したということになる。
「NXR-NX800」およびXDCAM「PXW-Z200」ついては以前のコラムでもその立ち位置の変化を詳しく述べたところだが、共通する技術としては、AIによるオートフレーミングを搭載したことにある。ハンディカメラ自体は自動で動かせないので、4K解像度で人を自動で追いかけながら、的確な構図でHD解像度の画角に切り出すという機能だ。同様の機能はすでに21年発売の「α1」に搭載されている。
一方PTZのオートフレーミング機能は、α1の登場を待たずともすでに19年には映像制作支援ユニットとして、ボックス型の「REA-C1000」を商品化している。AM7ではAIオートフレーミング機能は内蔵となっており、ハンディカムコーダと違いPTZで追従するので、4K解像度のままでオートフレーミングが可能だ。
さらにAM7は、ボディー側の仕様もZ200とほぼ同じなので、2つのメモリカードスロットを備えており、なんと本体収録ができる。ネットワーク伝送も可能なのは言うまでもないが、本体収録ならネットワーク伝送では不可能な、ハイスピード撮影もサポートしている。「PTZはライブカメラ」という常識を打ち破ったカメラだ。
これはスタジオ収録だけでなく、ロケ撮影でも利用したくなる。最近は食べ歩き番組も多いが、飲食店内に設置してオートフレーミング撮影させれば、場所も取らないうえに、サブのディレクターカメラやタレントカメラは不要になる。電源はバッテリー式ではないが、コネクターがDC12VのXLRの4ピンなので、市販のVマウント電源プレートを使えば動かせる。LibecからはPTZカメラ用三脚も製品化されており、電動で上下動できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR