衣川流域の信仰心伝え 薬師如来坐像(上寺田神社・奥州)など展示 平泉世界遺産ガイダンスセンター
県立平泉世界遺産ガイダンスセンターの2023年度第2回企画展「衣川の薬師如来~上寺田薬師神社~」は3日、平泉町平泉の同センターで始まった。明治期の神仏分離による難を逃れ、現代にその様子を伝える衣川流域の平泉文化にまつわる展示や資料の数々が訪れた人の関心を集めている。24年3月3日まで。
同神社は奥州市衣川字上寺田地内にあり、平安時代に慈覚大師円仁が創建したとされ、金龍寺と称した寺院が前身。神仏分離の際、仏教を廃する廃仏毀釈(きしゃく)の難を逃れるため神社に改宗したと推測されている。今回は仏堂の形を残した社殿内に安置された薬師如来坐像や十二神将像、毘沙門天立像のほか、衣川流域の接待館遺跡や衣の関遺跡からの出土遺物などを展示した。
このうち薬師如来坐像は寄木造りで像高50・7センチ。後世に加えられた修理のため詳細は不明だが平安時代の作と考えられ、同町の中尊寺金色堂内にある3体の阿弥陀如来坐像のうち、藤原基衡の時代のものとされる像と特徴が似ている。1969年に県文化財指定。
十二神将像はいずれも高さ約30センチの一木造り。現在の仏堂建立と同じ江戸時代の作と考えられ、いずれも顔立ちなどの造作の共通点から仏師以外の人物が仏堂建立時に奉納したと思われる。同センターの羽柴直人上席専門学芸員は「寺院から神社に改宗することで難を逃れたことからも、地域の人たちから厚い信仰を受け、守り継がれてきたことがうかがえる」と語る。
期間中は関連講座を来年3月まで計5回開催予定。初回は4日午後1時30分から浅井和春青山学院大名誉教授が「上寺田薬師如来坐像」をテーマに講演する。