2021 年 99 巻 2 号 p. 437-448
平衡気候感度(ECS)は、気候モデルシミュレーションにおいてCO2の2倍または4倍増による全球平均地表気温の変化として定義される。この指標は気候予測の不確実性を示すのに用いられ、したがって、モデルチェンジのECSへの影響は気候モデル開発コミュニティにとって大きな興味対象である。本論文では、ECS、気候強制、および、フィードバックに対するモデルチェンジの影響を一つの図で示す、新たなグラフ手法を提案する。それはグレゴリーの線形回帰法に基づいている。この可視化手法を用いれば、(a)モデルチェンジや新モデル過程導入が地球温暖化を増幅させるか、減衰させるか、影響しないか、を定量化し、(b)ECS、気候強制、および、フィードバックが何%変化するか、を見積り、そして、(c)影響評価の不確実性の程度を定量化できる。ここでは、相互作用する大気化学過程を入れるか入れないかに関する気候感度実験を実例として、この手法の有効性を実証する。同じ実験(例えば、相互作用する大気化学過程か、定められた値の化学成分量を使うか、の比較実験)に対して、複数のモデルの応答を同時に評価するという複数モデル評価において、この手法は有効であり、モデルの相互比較と結果の理解が容易になる。また、第五次結合モデル相互比較プロジェクトのような多数モデル比較の枠組みで、多数モデル平均(または、ある1つのベンチマーク・モデル)に対して各モデルのECS、気候強制、および、フィードバックのばらつき度合いを調べることが、この手法により如何に容易になるかを例示する。さらに、一つのモデルを用いた多数アンサンブルシミュレーションにおいて、個々のアンサンブル・メンバーのばらつきを調べるのにもこの手法が有用である。