気象集誌. 第2輯
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気象庁における現業領域モデルのための変分法データ同化システム
幾田 泰酵藤田 匡太田 行哉本田 有機
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2021 年 99 巻 6 号 p. 1563-1592

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抄録

 気象庁の領域データ同化システムでは、非静力学モデルasucaをベースにした変分法データ同化システム(asuca-Var)を採用している。本論文では、asuca-Varの構成と現状についてレビューする。asuca-Varの制御変数には、解析変数と予報変数の整合性を考慮して、地中と基本的な大気の変数が含まれる。この制御変数に基づく背景誤差共分散は、日変動や海と陸における代表的な誤差共分散構造を適切に反映するために、3時間毎に海陸別の格子点上で計算される。評価関数は、完全な二次形式として設計されるが、基本場更新法によって観測演算子や数値天気予報モデルの非線形性をインクリメンタル4次元変分法(4D-Var)の最適化問題に組み込むことができる。インクリメンタル4D-Varでは、asucaを基にしたアウター・インナーモデルが使用され、それぞれの解像度及び線形化に適した実行設定が用いられている。asuca-Varの観測演算子は多種多様な観測に対して実装されており、外部シミュレータをカプセル化して統一されたインターフェースも備えられている。そして、変分法品質管理と変分法バイアス補正が変分法システム内部での高度な処理として導入されている。asuca-Varでは並列化により随伴計算などの計算効率が向上されている。また、観測感度解析手法のひとつであるDegrees of Freedom for Signalにより同化した観測の影響評価が可能となっている。さらに、現業利用を目的としたシステムとして、持続的な開発を可能とするよう設計されている。本論文では、asuca-Varの現業実装例としてメソ解析と局地解析のワークフローを紹介し、この実装によって広範な検証指標での予測の改善がもたらされたことを示す。asuca-Varの今後の主な改良点としては、流れに依存した背景誤差の導入、水物質の制御変数化などがある。これらの実現によって現業領域モデルの予測精度のさらなる向上が期待される。

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© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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