気象集誌. 第2輯
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48 巻, 5 号
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  • 佐々木 嘉和, ルイス ジョンエム
    1970 年 48 巻 5 号 p. 381-399
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    風の水平と垂直成分,気温,気圧,水蒸気の初期値分布を大気境界層モデルを用いて客観解析を行った.客観解析は佐々木の数値変分解析法(1969a,b)による.この方法は観測データと同時に現象を記述していると思われる力学的,熱力学的支配方程式を用い初期値を定めるものであり,4ケの連立偏微分方程式を附随した境界条件の下にとくことにより完全に初期値分布を定めるものである.その連立方程式はリチャードソンの緩和法で数値的にといた.
    上述の初期値とそれを用いた予報を1968年6月10日にアメリカ中西部におきたスコールラィンによるSevere weatherのデータに応用した.地上から1.5kmまでの境界層と水平にはほぼ2000×2000km2の広さの地域を対照にした.水平の格子間隔は.190km,つまりNMCグリットの半分,垂直には200m毎に格子点をとった.初期値をきめるとき予報方程式に組合せて使用した観測データは次の二通りである:1) ラジオヅンデの観測網からえられた風と湿度,2) NMC解析からえられた気圧と気温観測.気圧と気温のデータはラジオゾンデの記録からのみとって用いると同じデータ ソースであるのでもっとコンジステントなデータの組合せになると思われるが,上のデータソースの混成は数値変分解析法の融通性を示す一例としてなされた。混成にあたりそれそのデータの信用度により最初の変分方程式に含まれるウエイトを適当に選択する,"Severe Storm index"つまり上昇流の速度と水蒸気量の積,を境界層の中間のレベルで計算しその初期分布,3時間後と6時間後の予報された分布を地上から観測されたSevere weatherの報告とくらべた
  • 小倉 義光, 津 宏治
    1970 年 48 巻 5 号 p. 400-404
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    レーリー数(R)が臨界値(Rc)より大きい場合,外的条件は同一であっても有限振巾の定常対流セルの縦横比はいつも同じとは限らない.その縦横比があらかじめ作った初期の擾乱のモードによってどの程度支配されるかを室内実験により調べた.その結果(a)流体(シリコンオイル)を下部から一様に加熱した場合R=45Rcにおいてセルの縦と横の比は2.3である.(b)初期のセルの縦と横の比が6,1.5,及び1.3の場合にはセルの形状は時間と共に変化し,R=45Rcにおいてこの比が1.8と2.6の間の領域におちつく,(c)初期の比が3,2.4及び2の場合にはモードの変化は起らない,などのことがわかった.
  • シュクラ J., サバ K.R.
    1970 年 48 巻 5 号 p. 405-410
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    実測の風から導いた流線函数をバロトロピック•モデルに適用して,印度地域の500mb面の風の場の予報を試みた.流線函数を求める際の境界条件は,流線函数から得られる風の運動エネルギーを極大にし,かつ実測の風と流線函数から求められた風との間のルート•ミィーン•スクエヤ•ベクトル•エラーを最小にするに適したものを用いた.
    このテストでは,特にモンスーン•低気圧の移動がどれ位予報されるかに焦点をおいて48時間予報を試みた.流れの場の24時間予報は実測の風の場と比較してかなりよく予報されているが,48時間予報は実測値に較べてかなりのずれがあった.風の非発散部分の実測値と予報値との間のルート•ミィーン•スクエヤ•ベクトル•エラーは24時間予
    報に対しては,3.5m/sec,48時間予報に対しては6.0m/secであった.モンスーン低気圧の中心の位置の予報値の実測値からの平均のはずれは24時間予報で140km,48時間予報では205kmであった.
  • ブルツアールト ウイルフリート
    1970 年 48 巻 5 号 p. 411-416
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    相似性の考え方により半経験的乱流拡散理論の渦動拡散率テンソル成分の比は次式で表わせることが分った.Kxx/Kzz=(u2)2/(w2)2, Kyy/Kzz=(v2)2/(w2)2, Kxz/Kzz=-(uw)2/(w2)2 ここでu, v, wは風速の変動でそれぞれ主風向x, 横方向y, 垂直方向zの成分である.Kyy/KzzはPrairie Grass and Green Glowのプロジェクトで得られたデータより計算した山本,島貫(1964)の(中立状態における)値とよく一致している.Kxz/KzzはZubkhovski and Tsvang(1966)が熱の乱流輸送量の測定より求めた値と大きさの程度は合っている.
  • 山本 義一, 島貫 陸, 西宮 昌
    1970 年 48 巻 5 号 p. 417-424
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    落下速度が等しい粒子から成る線源から,非断熱大気中への拡散を研究した.風速分布と拡散係i数はKEYPSの式の修正として,山本•島貫が提案したものを用いた.そのようにして作った拡散の式を,湧源の高さ,安定度,粒子の終速度のいくつかの組合せに対して解いた.更に粒子の地面への付着率を,下流の距離と湧源の高さと安定度との関数として求めた.
    しかるのち,大きさの異なる粒子が混っている場合の拡散も考えた.
  • 仲本 賢次, 上代 英一, 伊東 隆哉
    1970 年 48 巻 5 号 p. 425-439
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    数百メートルの水平距離における平均気温および風速の測定に音速度を利用する方法が考えられる.
    吾々はこの音響的方法の実用的可能性を調べるために,音響出力20Wの観測装置を試作して測定実験を行なった.
    測定の方法は気温に対して500m,風速に300mの基線を各々取り,各スパンの両端の地上2.5mの高さに,送受音器を置き2種類のパルス信号を同時に送信し,それらの伝播時間から気温および風速の値を求める方式を採用した.
    実験は館野の高層気象台構内で常用気象測器と音響装置とを展開して両者の比較を行なった.温度の比較基準としてスパンに沿って設置された6個のサーミスター温度計の算術平均値を使用し,またスパン内の2個所に設けた三杯風速計の10分間平均風速の空間的平均値を音響風速値の比較基準とした.また高さに対する気温傾度の測定にサーミスター温度計数個を使用した.
    高さに対する気温傾度および風速の影響に関する補正実験式を求め,これらの実験式を使用して音響装置の記録値の補正を行なったのち基準温度との相関々係を求めた結両者のよい一致をみた.併し風速の影響については音響装置の設計の際に考慮された量よりもはるかに大きな補正量を必要とすることを知った.気温傾度の補正についてはそ
    の傾度を正負に分類して解析した.
    音響風速の記録値は300mという長さにも拘らず三杯風速計の平均値とよくあっていた.
    音響信号に2波の周波数を使用したことは交互通信における混信をさけることができて観測精度の向上に大いに貢献した.
    地上数米の高さでかつ音波伝播時間の基線に550mを使用して高い精度で平均気温を測定するには尚一層音波伝播に関する多くの問題を究明しなければならない.
    音響的方法による実用的気温の測定には吾々の実験した距離550m以下に選ぶ方がより効果的であると思われた.
  • 権田 武彦, 駒林 誠
    1970 年 48 巻 5 号 p. 440-451
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    低温槽の中にヘリウムとアルゴンの混合気体を入れ,ヨウ化銀煙をたねまきして水飽和の条件下で氷晶を成長させた.温度は-3℃から-20℃まで変えた.低温槽の底へ落下した氷晶の形と大きさを底のガラス窓を通して直接に測定した.レプリカ法を使用しなかった.この実験の結果,以下に述べるように氷晶の形と大きさがヘリウムとアルゴンの混合比とともに系統的に変ることが明らかになった.ただしここでは平均分子量をもってヘリウムとアルゴンの混合比を表現することにする.
    1.板状結晶も柱状結晶もともにa軸とc軸の両成長速度とも平均分子量が小さいほど大きかった.
    2.板状結晶の中央部に見られる表面構造のない部分の大きさは,平均分子量が小さいほど大きかった.
    3.板状結晶は成長してある臨界の大きさに達すると六角板の隅から枝を出し始めたが,その臨界の大きさは平均分子量が小さいほど大きかった.
    4.上記項目1,2,3のすべてについて平均分子量29のヘリウム•アルゴン気体中に成長した氷晶と空気中に成長した氷晶とは良く一致していた.
    5. -7℃,水飽和でヘリウム中に成長した柱状結晶は小さな凹み(hollow)を伴っていたが,アルゴン中に成長した柱状結晶は凹みを伴っていなかった.この事実が結晶成長に関する形状不安定性の理論と矛盾するかどうかはまだわからない.
    6.水飽和の条件下で,氷晶の形は温度に依存するばかりでなく,ヘリウムとアルゴンの混合比にも依存していた.
    7.ヘリウム•アルゴン混合気体の分子粘性は両気体の混合比によってほとんど変化せず,大体一定の値をとることが知られている.したがってこの実験から見出された氷晶の成長のヘリウム•アルゴン混合比に対する依存性は落下状態の差異に起因するものではない.
    8.ヘリウム•アルゴン混合気体の水蒸気拡散係数と熱伝導率は両気体の混合比で大きく変るから,この実験の結果は氷晶の成長の様子が気体の水蒸気拡散係数と熱伝導率などの物理常数に依存することを示すものと解釈することができる.
    9.なおヘリウム•アルゴン混合気体の全圧を1気圧から適当にさげることによって,水蒸気拡散係数が一定で熱伝導率のみが異なる場合およびその逆の場合について実験をおこなって両因子の氷晶の形に対する効き方の差異を見出すことができたので,別の論文に発表する予定である.
  • 菊地 勝弘
    1970 年 48 巻 5 号 p. 452-460
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    1968年2月から1969年1月まで南極昭和基地(69°00'S,39°35'E)においてField Mill大気電場計を用いて,大気電場の連続観測を行なった.
    その結果,次のような興味あるデーターが得られた.
    (i)静穏電場に顕著な日変化が認められなかった.
    (ii)正電場の増加と風速との間には正の相関があり,それは卓越風向が第1象限の時に限られた.
    (iii)10m/s前後の南風では特徴的な静穏電場を示した.
    (iv)低い地吹雪,高い地吹雪に伴う特有の電場の変化.
    (v)急激な風速増加の5~20分前に正電場の急激な増加が認められた.
    (vi)電場にノコギリ歯状の特徴的なパターンが月に1~2度認められ,それは風向,風速の記録にも同時に認められた.
    (vii)快晴,無風時に静穏電場の数倍程度の正電場の擾乱が度々観測され,それ等のあるものはオーロラ活動の影響と考えられる.
  • 池辺 幸正
    1970 年 48 巻 5 号 p. 461-468
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/05/27
    ジャーナル フリー
    乱流拡散係数の高度分布にある条件を与えて,222Rn(ラドン)及び220Rn(トロン)の垂直分布を解折的に求めた。これらのエマネーション濃度と風速との理論的関係を求めて野外測定で得た資料と比較したところ,比較的良い一致が得られた。理論値と観測値とを比較することによつて,222Rn及び220Rnの散逸率を求めた。大学構内では222Rnは1.2×10-16Ci/cm2•sec,220Rnは9.2×10.16Ci/cm2•secと推定された。
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