去る8月22日(木)明治記念館にて、選考委員・磯﨑憲一郎氏、斎藤美奈子氏、町田康氏、村田沙耶香氏により、第56回文藝賞の選考会がおこなわれました。
その結果、受賞作が宇佐見りん「かか」、遠野遥「改良」の2作に決定いたしました。
受賞作・選評・受賞の言葉は、10月7日(月)発売の「文藝」冬季号に掲載されます。
尚、授賞式は、10月中旬、明治記念館にて執りおこないます。
受賞者には、正賞として記念品、副賞として賞金50万円が贈られます。
受賞作「かか」宇佐見りん
(400字×139枚)
宇佐見りん(うさみ・りん)
1999年、静岡県生まれ。
20歳。現在学生。神奈川県在住。
【内容紹介】
《かか、かか、憎いくらいかあいそうなかか。
うーちゃんが救ってあげるかんね。》
19歳の浪人生うーちゃんは、大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになってしまった。脆い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位 自分を縛るすべてが恨めしく、縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。
彼女はある祈りを抱え、熊野へと旅立つ――。
20歳の野性味あふれる感性が生み出す、独特の語り。
人が人として生まれ生きることの核心に立ち向かった、痛切な愛と自立の物語。
受賞作「改良」遠野遥
(400字×122枚)
遠野遥(とおの・はるか)
1991年、神奈川県生まれ。
28歳。慶応義塾大学法学部卒業。東京都在住。
【内容紹介】
《どうして、私は美しくないのだろう。
女の格好をして、私はなぜ美しくなりたいのだろう。》
お気に入りのウイッグ、ニット、スカートを身につけ、「美しく」なるためのメイクに勤しむ大学生の私。
メイクが上達してゆくにつれ、ある欲望が芽生える。このまま外に出ても男だとわからないのではないか? コールセンターのバイト仲間のつくねと、いつも指名するデリヘル嬢のカオリ――希薄な人間関係にすがりながら、美への執着心の果てにもたらされた暴力とは ......。
冷徹な文体で、現代を生きる個人の孤独の淵を描き出す。男であること、そして女であることを決めるのは何か?
新世代のダーク・ロマン、誕生。