昨年100周年を迎えた阪神甲子園球場。阪神が本拠地にしており、毎年春と夏に高校野球の全国大会が行われるなど、言わずと知れた野球の聖地だ。高校時代に野球部だった人に限らずファンなど、野球に関わるほとんどの人が「人生で1度は立ってみたい、野球をしてみたい」と憧れる場所だろう。
阪神の取材で甲子園に来ていた昨年11月26日、野球の聖地の前には石川県からの観光バスがとまり、甲子園には運動後と思われる人たちが多く来ていた。
「何があるのだろう?」と気になり、声をかけた相手は金沢日曜野球連盟の酒井信一理事長(62)だった。同連盟には石川県内の草野球チームが所属しており、所属チームはリーグ戦を行っており、大会などにも参加している。
過去には東京ドームなどを使用しており、連盟の50周年に甲子園で試合を行う予定だった。予定を取れなかったなどの都合で、55周年を迎えた昨年、ついに聖地に立つことができた。約30人の6チームが参加し、計3試合で180人が楽しんだ。打席に入った小学生もいた。
当日はあいにく雨が降っている時間もあり、特に第3試合は厳しい条件の中だったが、酒井理事長は「皆さん楽しんで、スコアボードも使えたし、感動して試合をしていました」と振り返った。「1回打席立ちたいとか、守ってみたいとか、ここの球場でできるものじゃないからよかった」と感慨深い様子だった。
昨年の今日、24年1月1日には石川県で能登半島地震が発生した。酒井理事長の自宅周辺の被害は少なかったというが「今まで体験したことのない地震だった」と語った。
「僕らは毎週日曜日にグラウンドを借りてやっているんですけど、やっぱり今年、災害の復旧の関係で、どうしても今年参加できませんというチームもありました」
同連盟には、能登島漁師というチームがあり、能登島で漁師をしている人たちも加入した。「毎週野球までこっちに来ますから大丈夫ですよと。気分転換みたいな感じで試合をしていた」。この日も甲子園でプレーした。
1度目の大きな地震から1年後の今日16時10分には各地で黙とうが行われる。これまで取材した選手に、能登半島地震で「当たり前のありがたさ」を実感したことを口にした人もいた。それぞれ用事や都合等あり、思いのはせ方もさまざまだと思うが、今日は日常生活を当たり前に過ごせていることに感謝したいと個人的には感じている。【塚本光】