国立がん研究センター東病院 私のがん診療録
医療・健康・介護のコラム
高度化するがん医療をオンラインで遠隔地にも 患者の地元の医師や看護師らとの連携必要
2人に1人ががんを経験するといわれています。がん患者と向き合う医療者は、日常の診療の中で何を思い、感じているのでしょうか。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医師らが、患者さんとのエピソードを語ります。今回は、名誉院長で一般社団法人がん医療創生機構理事長の大津敦さんです。
遠隔診療に必要なこと
若い頃、地方の病院に勤務していた時のことです。当時は「がんは不治の病」と広く認識されていました。ある時、十分に治る段階のがん患者さんに手術を勧めましたが、「どうせ治らないんだから、俺は痛い思いはしたくない」と拒まれました。奥様と何度説得しても変わらず、その後来院されなくなりました。
数年後、再来院された時には手の施しようがなく、医師として無力感にさいなまれた経験がありました。
その後、時代と共にがん治療も大きく進歩し、「がん」に対する世間の認識も変化しました。がんセンターには、進行していても「何とか治したい、よくなりたい」と期待して多くの患者さんが来院します。難しい状況でも、新しく開発された薬などの治療で改善し、患者さんと喜び合えることも少しずつ増えています。
日本で未承認の薬の投与を求めて海外に行く患者さんがいれば、逆に、日本で先に承認された薬を求めて海外から来る患者さんもいます。一方、通院などの時間的・距離的理由で来院を断念する方もいます。
コロナ下では、在宅勤務やオンライン会議が急速に普及しました。医療の分野でも「オンライン診療」が徐々に普及しつつあります。海外はさらに進み、いずれオンライン診療や遠隔手術などが一般化していくかもしれません。
その時に、かつてのあのような患者さんにオンラインで十分な説明と診療ができるか、とても不安です。地元の病院の先生方や看護師さんたちと信頼関係を築いた上での協同作業が必要と感じています。
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