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スポーツDr.大関の「ムーヴ・オン!」

 「する」「みる」「支える」のどの立場にあっても、スポーツは生活を彩り豊かにしてくれます。しかし、スポーツにけがはつきもの。けがを予防し、笑顔で楽しむために必要なスポーツ医学の知識を、整形外科医の大関信武さんが伝えます。

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WSを制した大谷翔平選手、癖になりやすい亜脱臼を手術、今後、気になることは?

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WSを制した大谷翔平選手、癖になりやすい亜脱臼を手術、今後、気になることは?

7回2死、2塁に滑り込むも盗塁に失敗し、立ち上がれずに痛がる大谷(26日、米ロサンゼルスで)=片岡航希撮影

 米メジャーリーグ野球のワールドシリーズ(WS)を制覇したドジャースの大谷翔平選手。WBCの制覇に続いての快挙です。50-50を達成したシーズンの活躍も素晴らしかったですが、ポストシーズンでもその存在感を見せつけました。左肩の亜脱臼に見舞われましたが、元通りに治りにくいのがこのけがの特徴。5日(日本時間6日)に関節鏡手術を受けたと発表しました。来年2月のキャンプには間に合うとのことです。亜脱臼について考えてみます。

WS第2戦の盗塁時に左肩を亜脱臼

 けがが起きたのはワールドシリーズの第2戦、先月26日(日本時間27日)。七回に出塁した大谷選手が二塁に盗塁した時でした。足からスライディングに行ってタッチアウトになりましたが、その直後、大谷選手は左上肢を動かすことができず、すぐに立ち上がれませんでした。スライディングの際に左手を地面についており、地面からの衝撃を肩が受けたということです。その後、発表された大谷選手の状態は左肩の亜脱臼でした。

 肩関節は図のように肩甲骨側の受け皿に上腕骨のボールが乗った剣玉のような構造です。球関節と呼びますが、同じ球関節の股関節と比べて、肩関節の受け皿の面積は小さく、くぼみが浅いため、広く動かすことができる一方、不安定になりやすい面があります。肩の亜脱臼とは、関節が一度ずれた状態になり、それが自然に修復された場合を指します。

関節につく軟骨などに損傷

 この関節で安定性を保つ重要な組織が、肩甲骨の受け皿の縁を丸く唇のように囲む軟骨、 関節唇(かんせつしん) です。関節を包む膜の関節包や 靱帯(じんたい) とつながり、複合的に機能します。関節がずれて脱臼すると、関節唇と靱帯の複合体が損傷します。関節で起きていることは脱臼でも亜脱臼でも基本的に同じです。

 シリーズ3連勝としたドジャースは、その翌日に第4戦を戦いましたが、大谷選手はいつもと同じように1番DHで出場しました。そして第1打席からフルスイングを見せ、第3打席ではヒットも打ちました。第5戦にも出場し、シリーズ制覇を決めています。

左肩をかばった走塁、スイングにも影響

 しかし、左肩をかばった走塁を見ても、大谷選手がこの3試合、いつもと同じスイングをできていたとは思えません。今回の左肩の亜脱臼が初めての受傷だったとして、その2日後に傷んだ組織が完全に治るということはないからです。損傷した組織からの出血が関節内にはまだ残り、炎症も起きていたでしょう。そして懸念されるのが、今後のプレーに影響が出ないかどうかです。

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学(現東京科学大学)勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

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