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冬季うつ病 食欲旺盛、体重増加、眠気 体験を漫画で発信する女性…「ダメ人間」と自己否定する感情も
冬になると、気持ちがふさぎ込み、心身に不調が生じてしまうという人はいませんか。もしかすると、「冬季うつ病」(季節性感情障害)かもしれません。一般的なうつ病とは、症状の出方が少し違うといいます。どのような病気なのでしょうか。
着る服を選べない
漫画の執筆や雑貨作りを手がけている高田ナッツさん(38)は、24歳で結婚。それから1か月ほどたった12月以降、ぼーっとすることが増えた。物事の判断も難しくなり、外出時に着る服や、食事の際に食べるものを決められない。誰かと会った後には「あんなことを言わなければよかった」などと後悔して、自分のことを責めてしまう。
冬になると食べる量も増える。ほかの季節では、体調に合わせて量を調整できるのに、おなかがいっぱいになっても食べるのをやめられない。
当時、美術館でアルバイトをしていたが、帰宅するとぐったりして、休みの日はソファに体を沈めて動くことができない。「役立たずのダメ人間」。そんな自分を否定する考えも浮かぶようになった。
2年ほどたったある時、別の悩みの相談をしていたカウンセラーに、「冬季うつ病」ではないかと指摘された。一般的なうつ病と異なり、冬の間だけ心身に不調が出る。眠気に襲われたり、食欲が増して体重が増えてしまったりする点も、一般的なうつ病とは違う。「話を聞いて、すべて当てはまり、自分はこれだと思いました」と振り返る。
高田さんの場合、10月中旬から調子が悪くなり、気持ちが落ち込むようになる。4月中旬になると体が楽になるという。「片頭痛が出やすくなるのが、冬季うつ病の始まりのサインです。4月中旬になると、冬の間は散漫だった集中力が増すようになったと感じます」と説明する。
朝に太陽の光
高田さんは今、精神的な不安を和らげる漢方薬などを服用している。
規則正しい生活を心がけ、毎日、朝8時にNHKの連続テレビ小説を見ながらストレッチをして体をほぐす。その後、午前中に買い物がてら、1時間程度、散歩に出かけて太陽の光を浴びる。
食事にも気を配る。気持ちを安定させる神経伝達物質「セロトニン」の材料となる必須アミノ酸「トリプトファン」が含まれているチーズや豆乳、バナナなどを積極的に摂取する。「石狩鍋やひっつみなど、寒い北海道や東北地方で食べられているものもレシピに加えるようにしています」と話す。
目標は低めに設定
高田さんは、自分の体験を漫画に描いてブログで紹介している。「周囲に同じ状況の人がいなかったため、冬季うつ病の人と情報を共有したいという思いがありました」。すると、「同じ症状がある」などというメッセージが相次いで届き、一人じゃないという思いを強くできたという。
冬季うつ病の症状が出るようになり、14年がたった。「今は、体調が悪くなる前兆に気づくようになりました。無理をすると動けなくなってしまうため、1日にやり遂げるべき目標も低めに設定し、それで満足するようにしています」。病気の特性を理解しながら、冬季うつ病と付き合っている。
20~30歳代女性に多い
冬季うつ病について、精神科医でむさしクリニック(東京都小平市)院長の梶村尚史さんは、「冬になると日照時間が短くなり、セロトニンの分泌量が減ることが発症要因の一つと考えられています」と説明する。意欲低下や 倦怠 感が主な症状で、女性がなりやすく、20~30歳代で発症する人が多いという。
セロトニンの分泌を増やすには
症状の改善を図るには、セロトニンの分泌量を増やすような生活を送ることが大切だ。梶村さんは「朝起きたら太陽の光を浴びて、体を動かします。曇りの日でも、セロトニンの分泌を増やすのに十分な量の光があります」と強調する。
セロトニンは、心の状態を安定させる働きがあるほか、夜になると睡眠を促すホルモン「メラトニン」の材料になる。また、運動することで体に疲労感が蓄積し、夜の眠りにつながる。
食事は、「バランス良く」取る。肉や魚、牛乳・乳製品などには、セロトニンの材料となるトリプトファンが含まれている。また、トリプトファンが脳内に取り込まれる際には炭水化物が必要になる。さらに、セロトニンを作るためには、ビタミンB6が欠かせない。
ストレスをためない
冬季うつ病は、日中でも眠くなってしまうことが多いため、睡眠時間のコントロールも重要だ。梶村さんは、「適切な睡眠時間は諸説ありますが、15歳は8時間、25歳は7時間、45歳は6時間半、65歳は6時間と考えてよいと思います。睡眠時間が長くなると、深い眠りが少なくなって睡眠にメリハリがつかず、日中もずっと眠たい状態が続きます」と説明する。
日中、どうしても眠くなってしまったら、15分程度、昼寝をする。ただし、(1)横にはならない(2)午後3時以降はしない――といった工夫が必要だ。
生活習慣を見直しても症状が改善されなければ、薬物療法を行う。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬などを服用し、脳内でセロトニンの量を増やすようにする。
梶村さんは「ストレスをためないことも大切です。心身ともに不調だという場合は、例えば、大掃除などは年末年始にやろうとせず、体調が戻った春以降に行うといったことも考えてほしいと思います」と話している。(読売新聞メディア局 利根川昌紀)
高田ナッツさんが描いた漫画を読む(クリック)
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