【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアするのは磯村勇斗初主演映画『ビリーバーズ』(2002年7月8日公開)です。漫画家・山本直樹さんの同名漫画の実写映画化で、カルト宗教団体をモチーフにした内容は、実写化不可能と言われていた問題作! 主演は、2022年出演作が目白押しの売れっ子・磯村勇斗さんが挑み、信仰心と欲望の間で葛藤する主人公を超熱演しています!
試写で観させていただいたのですが、衝撃的すぎてしばらく呆然としてしまいました……。では物語からいってみましょう。
【物語】
「ニコニコ人生センター」という宗教的団体に所属しているオペレーター(磯村勇斗さん)、議長(宇野祥平さん)、副議長(北村優衣さん)は「安住の地」に行ける日を夢見て、無人島で生活していました。
彼らは外界との接触を経ち、本部から送られてくる指示とわずかな食糧だけで生活をするという、食欲、物欲、性欲などあらゆる欲を払い落とす修行をしていました。しかし、その島に酒に酔った乱暴な男たちが乱入してきたことから、3人の欲望の抑制は崩壊していくのです。
【穏やかな日々に潜む洗脳】
前半は、欲を払い落とすプログラムを真面目に遂行する3人の穏やかな日々が描かれているのですが、その日々は実に滑稽!
朝起きると3人は三角形を描くように座り、互いの足の裏を合わせ瞑想。夢の報告を正直に行い、少しでもその夢に欲が見えたら、掘った穴の中で反省をするのです。
この人たちはいったい何をやっているんだ……と思わずにいられないのですが、彼らは本気! 本部の先生は彼らの神であり、先生に従っていれば幸せになれると信じています。人間として限界の生活をしているのに、何も起こらないことが幸福なことであるとでも思っているよう。
でも、もしかしたらこの3人はかつて絶望的な日々を送ってきたのかもしれません。
【平穏が破られてからの衝撃!】
ところが、孤島にクルーザーが漂着。酒に酔った男たちが島にやってきたことで、彼らの規則正しい生活は乱れていきます。というのも、その男たちが副議長を襲おうとしたのです。オペレーターと議長は外部の男たちを消しますが、その一件をきっかけに、3人は封印していた性欲が抑えきれなくなります。
やがてオペレーターと副議長は、議長の目を盗んで体を求め合うように。でも議長はそれを覗き見していたんです!
【愚かで滑稽な狂信の姿】
その後、議長は2人に対して厳しい姿勢で接しますが、それはもはや狂気! 特に副議長への命令は、自分の立場を利用した最高に気持ち悪いセクハラです。「それが正しい行いなのだ」とか言っているけれど、自分の欲望を満たしたいだけ。「宗教って何? あなたたちの信じる世界って何?」とつっこみたくなりましたよ。
矛盾だらけの信仰にカルト宗教の一端を垣間見た気がしましたし、人間って愚かで滑稽だとも思いました。ちなみにオペレーターと副議長も議長と同じです。議長ほどヘンタイではありませんが、2人だけの世界で愛欲に溺れまくってましたからね。
【磯村さん、宇野さん、北村さんの役者魂】
それにしても主要キャストの3人は本当に体当たりの超熱演でした。磯村さんは売れっ子俳優なのに、ここまで徹底的な濡れ場を演じるとは! と、正直驚きました。『娼年』のときに娼夫を演じた松坂桃李さんに負けない凄さでした。
また副議長を演じた北村優衣さんも、びっくりするほどの脱ぎっぷり! 男優ふたりとの愛欲シーンの大胆な演技は素晴らしく、拍手を送りたい気持ちです。女優とはいえ20代前半の女性なので、かなり勇気がいったと思うのですが、この作品の中で、女優として生きる覚悟を見せてくれました!
後半は性的なシーンが多いとはいえ、下品にならないところは城定秀夫監督の上手さなのかなと。2022年『愛なのに』(瀬戸康史主演)、『女子高生に愛されたい』(田中圭主演)と公開作が続く、業界で人気上昇中の監督の力作です!
ぜひ、ドキドキしながら観てください。
執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:© 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会
『ビリーバーズ』
(2022年7月8日公開)
監督・脚本:城定秀夫
原作:山本直樹「ビリーバーズ」(小学館「ビッグスピックコミックス」刊)
出演:磯村勇斗、宇野祥平、北村優衣/毎熊克哉、山本直樹
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