Superflyは2007年に「ハロー・ハロー」でデビューした女性ソロアーティスト。デビューして1年でブレイクし、以降10年以上に渡りヒット曲を大量輩出している。日本レコード協会によれば、これまでにダウンロード売上10万以上を記録した曲は20曲(トータス松本とのコラボも含めれば21曲)で、認定総ダウンロード売上は530万(歴代16位)となっている。これらのデータをランキング化した表は以下のとおりである。この表をもとにしながら、Superflyのヒット史を振り返る。
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2007年-2009年
この時期の曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
Superflyは当初ボーカル 越智志帆とギターの多保孝一の2人組ユニットとしてデビューしていた。デビュー曲「ハロー・ハロー」発売時はまだ認知度が低い状態だったが、期待の新人としていきなりミュージックステーションへの出演を果たしたこともあり、CD売上チャートで週間最高31位を記録する上々の滑り出しとなった。配信では、2014年1月に10万ダウンロードを突破している。
その後、3rdシングル発売を以て多保が編曲業に専念するため表舞台から退き、以降は越智のソロプロジェクトに移行した。
配信1位「愛をこめて花束を」
2008年2月には、ソロプロジェクト移行後初のシングルとなる「愛をこめて花束を」を発売。これが配信ミリオンを突破する自身最大ヒットとなり、完全にブレイクを果たした。売上推移は以下のとおり。
- 配信開始1ヶ月後の2008年3月に10万ダウンロード突破
- 配信開始2ヶ月後の2008年4月に20万ダウンロード
- 配信開始3ヶ月後の2008年5月に35万ダウンロード
- 配信開始9ヶ月後の2008年11月に60万ダウンロード
- 配信開始1年1ヶ月後の2009年3月に75万ダウンロード
- 配信開始4年2ヶ月後の2012年4月に配信ミリオン突破
- 配信開始5年3ヶ月後の2013年5月に125万ダウンロード達成
見てのとおり2008年内に60万ダウンロードを突破。4年後には着うたフルとPC配信の合算でミリオンを突破し、最終的な売上は125万ダウンロードとなっている。息の長い人気曲であることが分かる。
ここまでの大ヒットとなった理由は、最高視聴率12.1%を記録したドラマ「エジソンの母」主題歌に起用されたことで一気に認知度が拡大したことも大きい。しかし何より相手への思いやりにあふれた幸せな雰囲気に包まれた楽曲内容や、越智のパワフルながらも心地よいボーカルが多くの支持を集めたことに尽きる。現在では結婚式の定番曲にもなった。
なおCD売上はたったの4万枚である。既に当時音楽環境はCDから配信へシフトしており、CD売上は楽曲人気指標としての機能を大部分失っていた。なおSuperflyはCD売上10万枚を超えたシングルが「Wildflower」以外では一作もない。シングルCD売上だけ見ていてはSuperflyの人気に気づくことができないので、人気を過小評価することがないよう、必ず配信売上に目を通す必要がある。
CD売上チャートの週間最高位も13位だったが、複合チャートBillboard JAPAN Hot 100では最高7位を記録している。ビルボードは当時CD売上以外にラジオも集計対象だったことで、この曲の人気の捕捉に成功した。年間でも2008年の27位となり、CD売上チャート年間TOP100圏外とは全く異なる結果を生み出した。どちらが楽曲人気指標に相応しいかは両者の結果を比較すれば自明である。
さらにビルボードは本曲の人気の息の長さも可視化しており、なんと本曲は2018年の年間で83位に再登場した。翌2019年も年間89位にランクインしている。この推移の原動力となったのは、2010年代後半に急速に普及したストリーミングサービスでの再生回数である。ストリーミングは定番人気曲が長期に渡り再生される傾向が強く、Billboard JAPAN Streaming Songsでも年間で2017年50位→2018年26位→2019年89位と推移している。累計再生数は、日本レコード協会が2020年4月に開始したストリーミング認定によれば、5,000万再生を突破している。
なぜ2018年が最も高順位になっているのかというと、2017年末の紅白歌合戦にて、体調不良による休養からの復帰後初のTV出演という形で本曲が歌唱された効果が表れたためである。この様子はBillboard JAPANの指標別動向閲覧サービスChart Insightの本曲の推移で確認できる。
このような長期人気の持続により、YouTubeにおける本曲のMVも1.3億再生を突破している。YouTubeを代表とする動画ストリーミングサービスは2010年代に入ってから普及したため、大ヒットの基準である1億を突破したMVは殆ど2010年代発売曲だが、2000年代以前の発売曲でMV1億再生を突破した国内楽曲は他に数曲しかない。
このように、本曲は2000年代後半以降の主要楽曲人気指標全てで絶大な数字を叩き出しており、2000年代を代表する大ヒット曲であることに疑いの余地はない。
「愛をこめて花束を」の大ヒットを受け、続けて2008年4月に発売された5thシングルCD表題曲「Hi-Five」は配信1ヶ月で10万ダウンロードを突破。最終的な累計は25万ダウンロードを記録した。CD売上は1万枚で最高位も30位だったが、Billboard JAPAN Hot 100では週間7位に入り、年間でも2008年の87位となった。
この勢いのまま、5月に発売された1stオリジナルアルバム『Superfly』はいきなりBillboard JAPAN Top Albums Salesで初登場1位を獲得。累計51万枚をセールスした。なお当時は数字が見える週間配信売上チャートが国内に存在せず、CD売上チャートにばかり注目が集まっていたため、シングルCD売上が多くないSuperflyの1stアルバムがここまでのヒットとなったことを意外視する声も多かったが、配信売上を見ていれば分かるとおりアルバムのヒットは当然である。
2008年9月には6thシングル「How Do I Survive?」が発売され、表題曲が20万ダウンロードを記録。CD売上は2万枚だったがどうにか週間10位を記録するまでにはなった。Billboard JAPAN Hot 100では週間3位となり当時の自己最高位を更新。年間でも2008年の85位に入った。
2009年5月には7thシングル「My Best Of My Life」が発売され、表題曲が25万ダウンロードを記録。CD売上は3万枚で週間でも11位だったが、Billboard JAPAN Hot 100では「How Do I Survive?」に続き週間3位を獲得した。
配信3位「Alright!!」
翌2009年6月には自身初の配信限定シングル「Alright!!」を発売。これが自身第3位となる50万ダウンロードを記録するヒットとなった。本曲は最高視聴率20.7%を記録した大ヒットドラマ「BOSS」のオープニングテーマに起用され、印象的なメロディや圧倒的な歌唱力が存分に堪能できるサビが人気となった。
「愛をこめて花束を」と違い、この曲は時間をかけて人気が浸透していく形となり、20万ダウンロード突破までには配信開始から1年4か月を要した。2011年4月にはドラマ「BOSS」の2ndシーズンが始まり、引き続きこの曲がオープニングに起用され、このタイミングで35万ダウンロードを突破。50万ダウンロード達成は配信から3年11ヶ月後の2013年5月となっている。
50万ダウンロードという数字は配信限定発売にしたことで得られる配信への売上集中だけでは説明できず、確かな楽曲人気の持続によるものである。既にこの時期、人気曲はシングルCD化されているとは限らなくなっていた。そんな中でもCD売上チャートだけに注目が集まる旧態依然の傾向は変わらず、配信限定曲のヒットがなかなか可視化されず見過ごされてきたことは残念である。
2009年7月には8thシングル『恋する瞳は美しい/やさしい気持ちで』を発売し、CD売上では週間12位を獲得して2万枚をセールス。1曲目の「恋する瞳は美しい」は配信20万ダウンロードを記録したほか、Billboard JAPAN Hot 100ではCD売上のポイントが1曲目に加算されたことで週間6位を獲得、年間でも2009年の36位を獲得した。
しかし実は2曲目の「やさしい気持ちで」は配信売上で1曲目を上回る25万ダウンロードを記録している。CD売上があまり参考にならないことや、当時のビルボードが配信売上集計前だったことを考えると、実際は2曲目が1曲目を上回る人気となっているようである。その証拠に、MV再生数でも「やさしい気持ちで」が900万再生、「恋する瞳は美しい」が200万再生となっている。
好調が持続する配信売上を背景にして、9月に発売された2ndオリジナルアルバム『Box Emotions』は自身最大売上となる56万枚をセールス。Billboard JAPAN Top Albums Salesでも2009年の7位に入った。
2009年11月には9thシングル「Dancing On The Fire」を発売し、表題曲が配信10万ダウンロードを売り上げた。
2010年以降
この時期の曲を配信開始日順に並べたダウンロード売上データは以下のとおり。
配信2位「タマシイレボリューション」
2010年6月には、NHKサッカーW杯のテーマソングに起用された「タマシイレボリューション」をシングルCD発売に先駆けて配信で先行発売した。大型タイアップにより楽曲は強力な後押しを得て普及していき、最終的に75万ダウンロードを突破するヒットを記録した。売上推移は以下のとおり。
- 配信開始1週間で20万ダウンロード突破
- 配信開始1年1ヶ月後の2011年7月に35万ダウンロード
- 配信開始2年後に2012年6月に50万ダウンロード
- 配信開始7年2ヶ月後の2017年8月に75万ダウンロード達成
見てのとおり、配信から僅か1週間という自己最速ペースで20万ダウンロードを突破している。その後も息の長い人気が続き、7年2ヶ月経過した2017年8月に75万ダウンロードに到達した。
持ち前のパワフルな歌唱力や、選手を前向きに鼓舞する楽曲は応援歌としてピッタリの内容であり、歴代のNHKサッカーW杯テーマソングの中でも屈指のダウンロード売上を記録する人気曲となっている。
これだけの人気曲でありながら、なぜかシングルCD表題曲に据えられず、9月発売のシングル『Wildflower』のc/wという位置に収まった。このため、CDシングル売上が実態と異なり楽曲人気指標として重視されていた当時は、この曲の人気が可視化されなかった。「Alright!!」もそうだったが、Superflyの場合はシングルCDという形態に拘らない形でヒット曲を多く輩出しており、当時の音楽チャートの機能不全が目立つ結果となった。
そんな中でも本曲はBillboard JAPAN Hot 100で週間5位を獲得した。シングルCD売上のポイントは全て表題曲の「Wildflower」に加算されており、本曲はラジオのポイントだけで週間TOP10入りを果たしたことになる。配信売上がまだ集計対象外だったことは残念だが、ラジオ指標によって「人気曲なのに音楽チャートにランクインできない」という最悪の事態は避けることができたと言える。
2010年8月には「タマシイレボリューション」に続き「Roll Over The Rainbow」をシングルCD発売に先駆けて配信で先行発売し、10万ダウンロードを記録した。
2010年9月には、この2曲をc/wにした10thシングル『Wildflower & Cover Songs:Complete Best 'TRACK 3'』を発売。このシングルは10枚目のシングルであることを記念した豪華な収録内容となり、シングル『Wildflower』とこれまでシングルのc/wで発表してきた洋楽のカバー曲をまとめたアルバム『Cover Songs:Complete Best 'TRACK 3'』をセットにした商品となった。
やや複雑な発売形態に対し音楽チャートの対応も異なり、オリコンでは収録曲の多さからアルバムとして扱われた一方、Billboard JAPANではアーティスト側が公式にシングルと銘打っていることが考慮されシングルとして扱われた。
この結果、Billboard JAPAN Hot 100では表題曲「Wildflower」にCD売上ポイントが加算され、本曲が自身初の週間1位を獲得することとなった。なお同週のオリコンシングルチャート1位はV6『only dreaming/Catch』だったが、CD売上は5万枚と多くなかったため、初動14万枚を売り上げた「Wildflower」が1位となった。
累計売上は31万枚を記録し、年間でも2010年の12位に入った。配信では「Wildflower」は25万ダウンロードを記録している。
Superfly 『Wildflower』Music Video
2010年12月には11thシングル「Eyes On Me」を発売。表題曲は10万ダウンロードを記録した。
2011年5月にはアルバム先行シングル「Rollin' Days」を配信限定で発売し、10万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100ではこの年からiTunesの売上が加算対象になり、配信限定だったこの曲も加点源が増えたことで週間5位となったほか、2011年の年間38位に入った。6月に発売された3rdオリジナルアルバム『Mind Travel』は35万枚をセールスした。
2012年7月にはウルフルズのトータス松本とのコラボが実現。Superfly & トータス松本名義でシングル「STARS」を発売し、10万ダウンロードを売り上げた。
8月には15thシングル『輝く月のように/The Bird Without Wings』が発売され、1曲目の「輝く月のように」が25万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100でも2012年の年間19位に入った。この曲も収録した4thオリジナルアルバム『Force』は22万枚をセールスした。
2013年には自身初のベストアルバム『Superfly BEST』が発売され、40万枚を売り上げた。Billboard JAPAN Top Albums Salesでも2013年の年間10位を獲得した。新曲も3曲収録されており、このうち「Bi-Li-Li Emotion」が10万ダウンロードを記録した。
2014年は、10月にCDシングル発売に先駆けて配信開始された「愛をからだに吹き込んで」が10万ダウンロードを記録した。CDシングルは11月に発売されたが、相変わらず売上は1万枚に留まっており、楽曲人気実態を示していない。
2015年は5月に5thオリジナルアルバム『WHITE』を発売し、17万枚を売り上げた。アルバム曲のうち、リードトラックである「Beautiful」が特に人気となり、25万ダウンロードを記録している。この曲も非シングルCD化曲だが、Billboard JAPAN Hot 100ではしっかり人気を捕捉し、2015年の年間32位を獲得した。
同年12月には、20thシングル『黒い雫 & Coupling Songs: 'Side B'』を発売。このシングルは「Wildflower」と似たような発売形態で、シングル『黒い雫』とカップリングベストアルバム『Coupling Songs: 'Side B'』がセットで発売された。配信では表題曲「黒い雫」が10万ダウンロードを記録。Billboard JAPAN Hot 100でも、CD売上が「Wildflower」同様に加算され、2016年の年間60位に入った。
2016年7月にはボーカル越智が喉の不調に伴う休養に入った。休養中にはオールタイムベストアルバム『Superfly 10th Anniversary Greatest Hits “LOVE, PEACE & FIRE”』が発売され、10万枚を売り上げている。2017年末に活動を再開してからは安定した活動が継続しており、2019年11月にはNHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」主題歌に起用された「フレア」が「黒い雫」以来久々に10万ダウンロードを記録した。
まとめ
以上まで見てきたとおり、2000年代後半にデビューしたSuperflyは、当時の音楽環境のCDから配信への売上シフトを象徴するように、CDシングルではなく配信ダウンロードを中心にしてヒット曲を大量輩出していた。CDシングル売上が実態と異なり楽曲人気指標として注目されていた当時は、どの曲が一番人気なのか分かりにくい状況になっていたが、実際は配信売上を見れば代表曲TOP3は一目瞭然であった。
これらのヒット曲を手っ取り早く入手するには、2017年に発売されたベストアルバム『Superfly 10th Anniversary Greatest Hits “LOVE, PEACE & FIRE”』がおすすめ。25万ダウンロード以上を記録した楽曲は全て収録されている。
Superfly 10th Anniversary Greatest Hits『LOVE, PEACE & FIRE』<通常盤>
- アーティスト:Superfly
- 発売日: 2017/04/04
- メディア: CD
いきなり3枚組CDは重いという場合は、1枚のCDに収録曲を厳選した『Superfly “LOVE, PEACE & FIRE” -Special Edition-』も発売されているので、こちらを選択すると良い。
この記事で紹介したダウンロードデータは日本レコード協会HP内の下記サイトで検索することができる。新たな発見の宝庫なので、時間があれば好きな曲やアーティストのダウンロード数を検索してみることをおすすめする。