穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

烈火の大地

熱帯夜の所為だろう。ここ数日来、眠りが浅い。疲れがとれない質が甚だ悪いのだ。 (フリーゲーム『××』より) 昭和七年も暑かったらしい。 午前十時の段階で31.5℃を観測しただとか。 池水が煮えたようになり、養殖中の鯉や鰻がほとんど全滅、損害莫大なりだ…

言葉の廃墟に寝そべって

うまい言い回しを思いつく。 あるいは頓知の一種だろうか。戦前昭和、円が惨落した際に、人々はかかる現象を「円侮(・)曲」と呼び称し、半分以上ヤケクソ的に囃し立て、政府の無能をののしり倒す合言葉としたものだ。 なかなか以ってキレのある、良いセン…

土地は王様

土地に関する騒ぎというのは常に絶えないものらしい。 明治三十年の市区改正で、浅草区並木町通りは西に向かって五間ほど取り拡げられる運びとなった。 簡潔に云えば道路拡張、ためにまず、工事予定地買収が前提として不可欠である。 並木町通りに地所を持つ…

戦の後の女たち

二十世紀、女性の地位の向上は、得てして戦(いくさ)の後に来た。 これは戦争形態が部分(・・)ではなく総力(・・)へ――国家の持てるあらん限りの力を以って戦争目的遂行の一点に傾注するという、狂気の仕組みが齎した当然の作用であるらしい。 (第二次…

我が代表堂々退場す ―1894年、北京ver.―

日清戦争を契機とし、小村寿太郎の勇名は一躍朝野に轟いた。 彼の人生のハイライトとは、ポーツマスの講和会議にあらずして、むしろこっちの方にこそ見出せるのではあるまいか、と。そんな思いを抱かせるほど、英雄的な風貌を備えていたものだった。 (Wikip…

もっと輸血を

どうも昭和六年らしい。 わがくに売血事業の嚆矢は、そのとしの十月、――神無月の下旬にこそ見出せる。 飯島博と平石貞市、両医学博士の主唱によって創立された「日本輸血普及会」が、どうも発端であるようだ。採血量はグラム単位を基準とし、百グラムにつき…

目には目を、偏見には偏見を ―留学生の自衛法―

岡田三郎助の留学当時、パリの街は未だ城壁に囲われていた。 若き洋画家の繊細なる魂に、花の都は文字通り、城郭都市の重厚さで以って臨んだ。 (Wikipediaより、ティエールの城壁) きっとヨーロッパ随一の「芸術の街」で修行中、この異邦人を見舞った刺戟…

抜錨まで ―黒船来航前夜譚―

それは到底、見込みのない挑戦だと思われた。 マシュー・ペリーを司令に置いた艦隊編成の目的が「日本遠航」にあるのだとひとたび公にされるや否や、各新聞社は「すわ特ダネぞ」とこぞってこれを書き立てた。 主に悲観的なニュアンスで、だ。 (フリーゲーム…

すべてがギャンブル ―賭博瑣話―

何にだって賭けられる。天気だろうと、死期であろうと。 ダイスやカードなくしては賭博が出来ないなどというのはあまりに浅い考えだ。窮極、人と人とが居るならば、ギャンブルは成立させられる。 帝政ドイツの盛時には、モルトケの口数に於いてすら、彼の部…

田圃に泳ぐ水禽よ

合鴨を使うという発想は、未だない。 昭和六年、香川県農会が稲田に放った水禽は、これ悉くアヒルであった。 (Wikipediaより、アヒル) 大野村、多肥村、鷺田村、田佐村、十河村、田中村、等――香川・木田の両郡に亙り、およそ二千七百羽の購入斡旋を行って…

敗れたときこそ胸を張れ

なかなか役者だ、床次サンは、床次竹次郎という人は――。 「時局重大な時だ、鈴木、床次と争ってゐる場合ではない、鈴木が総裁になり、又大命が降下した場合、僕は入閣せんでも党務に骨身を入れてやる決心だ、これからが本当に政治をやるのだよ」 総裁選に敗…

おれの葬儀は ―山脇玄は遺言す―

冠婚葬祭の簡略化が口喧しく取り沙汰された時期がある。 大正から昭和にかけて、ちょうどエログロナンセンスの流行と被るぐらいの頃合いだ。 (増上寺霊屋) 自動車が街路を縦横し、 船のボイラーが石炭式から重油式へと移行して、 飛行機の航続可能限界が更…

雅楽洋楽アレンジャー

ざっくばらんに述べるなら、古代ギリシャ音楽の和風アレンジバージョンである。 遙かに遠く、紀元前。地中海にて誕生した旋律を、ほとんど地球の反対側の大和島根の楽器と感性(センス)で新生させる。 刺戟的な試みが、東京、ドイツ大使館の夜会に於いて実…

欲の焦点、色と金

慰謝料をふんだくるのを目的とした離婚訴訟が俄然増加の傾向を示すに至った発端は、大正四年にあるらしい。 皆川美彦が説いている。このとし一月二十六日、大審院にて画期的な判決が出た。 (Wikipediaより、大審院) 実質的な夫婦生活を送っているが、しか…

湿気、鬱屈、アルコール

どうも不調に陥った。 何も書くことが浮かばない。 連日の雨と湿気によって頭の中身が水っぽく、ふやけてしまったかのようだ。 (viprpg『さわやかになるひととき』より) 文章の組み立て方というものを見失っている状態である。こういう場合は下手に抵抗し…

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