『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』についてもう少し。
ネタバレしますのでご注意を。
ドタバタ追いかけっこ作品。いわば銭形とルパン三世的なノリを想像していたのですが実際の本作は「父母の愛情を求めた少年が得られず新しい父親と出会えた」という物語でした。
実の父の破産で父親は以前の風格を失い母親は離婚して別の家庭を持ってしまった。16歳の少年は「金を稼げば父母の愛を取り戻せる」と思いつき持ち前のずば抜けた詐欺の才能で大金を稼ぎだしてしまう。
少年はすぐさま父親の元へ走り新車の鍵を渡して「ママを取り戻して」というのだが、父親は喜ばなかったのでした。
この話はジェームズ・ディーンの『エデンの東』を思い出します。
ジミー演じるキャルは不良っぽい少年でいつも兄弟と比較されていますが実は父親の愛情を欲しています。父親が仕事で失敗し損害を出してしまったことからこれを補填すれば父の信頼を得られると思い戦争での需要を利用して商売をします。
ところが清廉な父親は金儲けの理由を知ってこれを嫌い金を拒否してしまうのです。
キャルの絶望の場面は有名ですね。
こんなにも激しいエモーショナルは発揮されないものの本作のフランクもまた「詐欺で得た金」を喜ばれはされず「金さえ手に入れば元通りになる」と信じた家族は戻りませんでした。
『エデンの東』とはまったく違うコメディなので気づきにくいかもしれませんがその土台はあの名作と同じなのではないかと感じました。
母親も『エデンの東』とは違いますが父と離婚し別の男性と関係していることが少年の心に痛みを与えます。
違うのはラストですね。
『エデンの東』では父親の愛情をやっと手に入れられるのですがコメディの本作のほうが辛辣にもその夢はかないません。母親ももう戻ることはありませんでした。
代わりに自分が切り開いた(?)詐欺のおかげで知り合えたFBI捜査官と親子のような友情を手に入れることになりました。
実話がベースになっているのにもかかわらずこの展開も事実というのは凄いことです。
まさに現実のほうが奇なりです。
ドタバタコメディなのにその土台はかなり真面目な物語と言えそうです。