THE BIKERIDERS ザ・バイクライダーズ & PIG ピッグ

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ストーリー:1960年代、シカゴ近郊の整備士ニッキー(トム・ハーディー)は友人たちとバイクのクラブを立ち上げる。VANDALSというそのクラブの溜まり場に連れられてこられたキャシー(ジョディ・カマー)はベニー(オースティン・バトラー)に一目惚れし結婚する。無口で何にもとらわれないベニーは家族よりバイクとクラブを大切にしている男。クラブはだんだんと拡大して変質していく.....

1968年に出版された写真集がインスパイア元。作者はOutlawsというクラブのメンバーになり、仲間にインタビューして写真を撮り、それを本にした。本作の主人公たちもモデルがいるし、リンク先を見ると「このカット、映画にあった」という写真がいくつもある。

 The Bikeriders – Twin Palms Publishers

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映画は本の作者(マイク・ファイスト)がインタビューし、ベニーの妻キャシーが昔を振り返るナラティブの形で進む。舞台が1960年代後半を描いたノスタルジックなものだから、回想の形で描くのはしっくりくる。語り手がいることで登場人物たちはなんだか神話的な空気をまとうようになる。語り手の「現在」も50年くらい前だ。

クラブは1960年代にダートバイクでレースを楽しんでいたニッキーが仲間と結成した。オフロード時代とはバイクも変わって、クラシックなハーレーでゆったりと走る。この辺りビンテージバイクに詳しい人ならいくらでも掘りがいがありそうだ。

物語自体はっきりいって大したことない。あまりにも既視感ある展開だ。仲間たちと楽しくやろうと始めたクラブがだんだんデカくなる。知らない奴らがメンバーになりたいとやってくる。よその街でも支部を作りたいと話がくる。過激な暴力を求める下の世代がメンバーに入ってくるとクラブの空気も変わってしまう。そして犯罪組織そのものになっていく。ラスト前の展開もクリシェそのものだ。ぼくはギャング映画や無数のヤンキー漫画でこの手の物語を摂取してきた。

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(c)Universal Pictures 2024

イカーズクラブの多くは本格的に犯罪者集団になっていき、物語のモデルになった"アウトローズ"もFBIに犯罪組織として指定されている。本作ではその辺りのシリアスな部分はほとんど描かれない。あくまでもメンバーの妻だった女性が語る思い出の「物語」なのだ。

本作のコアはストーリーテリングや展開じゃない。定番の物語は観客を連れていく乗り物で、見える景色はトム・ハーディーやオースティン・バトラーやマイケル・シャノンたち絵になりすぎる役者たちが描き出す。ベニーは漫画的なまでに絵になり、無口でメランコリックで束縛を嫌い突然暴力の発作を起こすブロンドリーゼントの美青年、ヤンキー系少女漫画の憧れの彼氏像そのものだ。そして気持ちよくエイジングされたレザーやデニムのコスチューム、ビンテージのバイク、オハイオの風景。

そんな「世界」を、写真集を開いたときにモノクロで息づいていた数十年前の世界を、空気感ごと映し出したかったんだろう。それはたしかに完成している。昔話を語り終えた、平穏な暮らしに戻ったキャシーは、いま幸せかと聞かれて「うん、幸せだよ」と答える。そんなに幸せそうじゃなく。


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ストーリー:オレゴンの森の中でひっそりと暮らすロブ(ニコラス・ケイジ)。彼は孤独ではなかった。愛するブタとトリュフを探し夜は一緒に寝る。毎週仲買人がトリュフを買い付けロブは暮らしていた。ところがある夜ブタが強奪される。ロブはブタを取り返すために仲買人と街まで出る。かつて妻と暮らし名シェフとして働いていたポートランドだった.....

まず言っておかなければいけないのが、ここで出てくるブタは皆さんが想像するような肌色で太り切った鈍重な家畜じゃない。トリュフを嗅ぎ分ける特殊能力のあるブタで、毛並みはブラウン、体もスリムで顔もそこそこシュッとした、雰囲気的にはペットの犬みたいな存在だ。とはいえタイトルが一言「ブタ」だと観客はどんな物語を想像すればいいのか、あまりにも手がかりがなさすぎる。

ブタは物語的にいえばマクガフィンのようなものだ。つまり主人公の動機としてだけ機能する。だからブタは物語序盤で姿を消してしまう。強奪されてるからね。物語的にはブタでなくてもいいのだ。トリュフ犬だって世の中にはいる。味わい重視なんだろう。愛犬への想いが動機になるとジョン・ウィックになってしまう。

本作のニコラス・ケイジの演技は各方面で称賛されている。どっしりとした重量感があって、薄汚れたへんくつな老人の風体ながら、物語をひっぱっていく目の離せない何かがちゃんとある。とはいえだいぶ人相が変わっていて年齢とヒゲのせいだけとも思えない。特殊メイクをしていそうだ。言われないとケイジだとわからない。

物語としてはかなり薄味で強烈な起伏はない。男の喪失の物語で、すでに大事なものを失った主人公は物語の中でまた大事なものを失おうとしている。そんな怒りと悲しみの中にいる彼は、でも戦いでじゃなく、与えることで人を動かそうとする。シェフとして昔無数の人々に幸せを与えてきた料理でだ。彼は色々なものを失うけれど与える能力が残っている。だから本当のからっぽにはならないのだ。最後にかかる曲、古い古いカセットテープから聞こえる、彼の記憶の中の声だ。

本作は舞台になるポートランドと周辺で撮影している。ポートランド付近のオレゴンでトリュフはじっさいに取れるそうだ。イタリアものほど高価じゃないらしい。超余談だけどポートランドってグリーンインフラ関係者が何かというと視察に行きたがる街だ。ロケ地は例えばこんなところ。

 

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