あら懐かしい。はてなブログのアクセス解析によれば、随分と古い過去投稿(2016年時点)が最近急浮上してきた様です。
21世紀にはインターネット上の接続単位をソーシャルグラフ(Social Graph 現実世界の人間関係の射影)からインタレストグラフ(Interest Graph 各人の興味に基づく情報主体のネットワーク)に推移させる解釈上のパラダイム・シフトが存在した。
- ソシオメトリー(Sociometry)の世界観においては、あくまで「点(Node、個人)」が主で「線(Edge、人間関係)」は従。さらに「線を流れる情報」に至っては2つの点の相互影響問題(「魅力」と「拒絶」)しか扱わない。それに対してインタレストグラフの世界では「線を流れる情報」こそが主役で残りは全て従となる。ある種「カンニングし放題の試験会場」に似た側面があって状況により「正解に最も回覧が集中する」とも「回覧が最も集中するのが正解」とされ、各点(匿名アカウントだが正解率チェックは可能)は、原則として「どうすれば最も効率よく高頻度でその状態が達成可能か」について工夫をこらす。
- ソーシャルグラフの発展は原則として植物的(自分を起点に不可逆的な形で知り合いの数が増えて行くだけで、その逆はない)。相互フォローは人間として守るべき最低限の礼儀で、そのルールを破って良いのは多くの人にフォローされる「人格的優位者」のみとされ、このスウェーデンリレー状態がいわゆる「SNS疲れ」の原因となる訳だが、それに対してインタレストグラフの発展は原則として動物的(現在欲しい情報が効率的に入ってくる様に絶えず連絡網をメンテナンスし続けている)。「ポケモン第二世代(金銀)のポケギア連絡網(登録数に上限があり、不要連絡先は次々と削除されていく)こそ私が最初に知り、いまだに最高であり続けているSNS」発言まであり、Facebook感覚で相互フォローを求めてくる初心者が「教育される」場面が日常の一部になっている。
- ソーシャルグラフの駆動原理が「各アカウント間の相手を自分に従属させようとする力学」なのに対し、インタレストグラフの駆動原理はあくまで「回覧内容の系統進化」。皮肉にもFacebookでなくFacemashこそが正解だったとも。ちなみにそのプロセスは最近トレンドとなっている機械学習(Future Learning)と酷似しており、実際アルゴリズムとして重なる部分があると推測されている。
*フェイスマッシュ(Facemash)…ハーバード大学の学生だった頃のマーク・ザッカーバーグがハッキングをして得た女子学生の身分証明写真をインターネット上に公開した「公開した女子学生の顔を比べて勝ち抜き投票させる」ゲーム。これが大学内で問題になって半年間の保護観察処分を受けたザッカーバーグはこの路線を諦めてFacebook開発に着手する。
機械学習でエロ画像つくるやつ、まずおっぱいが形成される辺り人の進化の歴史を物語っててなんか壮大だな
— 居石信吾 (@Icy_Cool) 2021年1月14日
乳首を認識できなかった個体は赤子のうちに淘汰されていったのだろうな
機械学習エロ画像、もうこれ電車の中でうかつに開けないくらいにはエロ画像だよ pic.twitter.com/JWw8GlnhYv
— 居石信吾 (@Icy_Cool) 2021年1月21日
機械学習エロ画像、顔が可愛くなっておる pic.twitter.com/hx6MBNZxOT
— 居石信吾 (@Icy_Cool) 2021年1月23日
ところが、こうして匿名性を保証された精神的開放感から投稿と回覧が活発化し「高頻度進化論(High Frequency Darwinism)」によって独特の価値観が生み出されて急速に洗練され、ネット社会全体に影響を与えていく「国際SNS上の関心空間」には、以下の形でマネタイズ上の問題が存在するのである。
- 「老若男女のカテゴリー化は可能か?」「頻繁に利用してるプラットフォーム比率は割り出せるか?」「各アカウントの地域分布は?」といった質問への答えが存在しない…そもそもこうした活動の主舞台に選ばれた国際SNSの多くが「そうしたデータを収集して第三者に開示しない」と宣言したからこそ匿名アカウントの楽園になったのである。さらにはリアル割れを極度に恐れる国際SNS上の関心空間の匿名アカウントは、活動に熱心なほどそうした個人特定につながる証拠の末梢ノウハウもしっかり共有している。
*実際にはこれら匿名アカウントを、その行動パターンの分類によってある程度までサブグループ化する事くらいは可能。- 「匿名アカウント」と「中の人の日常活動」は一致しているか?…多くの比率を占める「Facebook上では良い子にしてないといけないストレスを発散しにきた匿名アカウント」とか「肉親や知人に知られたくない趣味を堪能させに来た匿名アカウント」についてそれが成立する筈がない。
*これって実は「実名アカウントの消費行動なら認識可能で理解可能で制御可能」という原則論も同じくらい危うい事を意味してるのだけど、それについてはあえて目を瞑る人も多い。カエサルいわく「人は自分にとって望ましい事をこそを喜んで信じる(libenter homines id quod volunt credunt、ガリア戦記 3-18)」という訳である。- 各アカウントの行動に一貫したアイデンティティが見られるか?…いいえ。「中の人」の関心が推移すればそのアカウントがフォローする相手も、そのアカウントをフォローしてる相手も多くが入れ替わってしまう。極端な例ではほとんど総入れ替えとなるどころか「入れ替え作業」の手間を惜しみ、突如として削除される展開も。時々自己申告もあるが(「ごめん、彼女が出来た。間違ってもこのサイトを見られたくない」とか)、概ね厨二病全開系やエロ堪能系アカウントの最後はこれである。
- テキスト・ベースの投稿サイトに比べて回覧内容の評価が極めて困難…AI技術の発展によってテキストの構文解析技術は飛躍的に向上。TwitterやRedditの様なテキスト投稿サイトにそこを流れる情報を統計学的に解明しようとする挑戦者達が群がって一方、この問題のせいでGitHubなどを眺めても「国際SNS上の関心空間」への関心は恐ろしく低い。なにしろメインで流れてるのが静止画、GIF、音声、動画で、BotやAIの類にとっては単なるブラックボックスなのである。
*機械学習によるこうしたデータのパターン認識技術も急速に発展中で、そちらはそちらで人が群がっているが、逆を言えばその結果のさらなる統計処理なんて現在は夢また夢の状態とも。割と八方塞がり感が高くて、それで最近は「国際SNS上の関心空間なんて商業的にも学術的にも鶏肋」という意見が主流となりつつある始末。まぁこれは2011年から2012年にかけてアメリカ議会にSOPA(Stop Online Piracy Act)を撤回させたり、Netflixを倒産寸前に追い込んだ様な大規模な動きを以降見せてないせいもある様ですが。
*以降内部多様化が進んで当時の様な一斉蜂起が難しくなったのもまた事実。人はもう2度と動き出さないと信じられる様になったゴジラは意識の外に追い出すものだ?
残念ながらここに挙げた「インタレストグラフは鶏肋?」問題、まだまだ未解決な部分が多いのです。2020年代にさらなるパラダイムシフトがあると面白いのですが…