Portraits of Roses

横浜イングリッシュガーデン(YEG)のバラを中心に様々なバラを紹介します

ホワイト・リコリス White Licorice

好き嫌いがわかれる味

 

写真↑  は、今年の春の花。
中心部がレモンイエローで、何だかおいしそう。
名前の「ホワイト・リコリス」は、花色が白色系でリコリスの香りがすることからついたようです。

リコリスは、甘草の根を使ったお菓子。真っ黒なグミみたいな姿をしていることが多いです。
キャンディタイプはオランダが発祥ということですが、北欧やアメリカ、イギリスでもポピュラーなお菓子。
味は、なんというか、漢方薬みたいな甘さがあって・・・ちょっと苦手。
日本人にはあまりウケない味です。
実際に黒いグミみたいなののまわりを、ホワイトチョコレートとか砂糖でコーティングした見た目がホワイトなリコリスもあります。

 

ホワイト・リコリス White Licorice

アメリカ 2007年以前
Christian Bédard 作出

作出者のクリスチャン・ベダール氏は、前に紹介した「ケチャップ・アンド・マスタード」、「コーヒー・ビーン」を作出した方。
2000年からウィークス・ローゼズ社に勤務されていますが、2012年からトム・カルース氏(「ジュリア・チャイルド」や「ベティ・ブープ」を作出)の後任として、バラの交配を担当しています。

 

トム・カルース氏についてのロサンゼルスタイムズの記事(2019年)中にバラの名付けについてのちょっと面白い話が出ていました。

カルース氏が25年間交配者として過ごしたポモナのウィークス・ローゼズ社の育種施設では、バラの名付けに関しては、スタッフ全員が関わることが多かったそうです。
特にマキシン・ギリアムさんという、元は秘書で、後に研究部門に移って、カルース氏のアシスタントとなった方が命名に長けており、「センチメンタル」も彼女の名付けだそう。

そのギリアムさんが特に思い出深いバラの名付けについてのエピソードを語っています。

カルース氏の下でベダール氏が作出した、花びらの表が赤で、裏が黄色の「ケチャップ・アンド・マスタード」は、当初カルース氏だけがわかる文字と数字からなる名前が付けられていました。
それで、スタッフは、通称として「ケチャップとマスタードのバラ」と呼ぶようになっていたのですが、いざ、正式な名前を決めるという段階になった時、スタッフには、もうそれ以外の名前が思い浮かばなくなっていました。
カルース氏は「これは美しいバラだ。美しい名前で世に出すべきだ」と言いましたが、皆で何度も考えたけれど、結局、会社には「ケチャップ・アンド・マスタード」で提出しました。
会社では、全員が「そんな名前はダメだ」と顔をしかめたものの、もっといい名前は誰にも思い浮かばず、最終的に「ケチャップ・アンド・マスタード」に落ち着いたのでした。

 

「ケチャップ・アンド・マスタード」、バラの名前としては、ちょっと強烈というか、バラらしからぬ名前だけれど、一度、この名前でバラを見てしまったら、即座に脳内でバラの姿と名前が結びついてしまうのはすごくわかる。

 

portraitsofroses.hatenadiary.jp

 

ことによると、この「ホワイト・リコリス」の命名もギリアムさんら、スタッフの発案かもしれないですね。

今年の秋の花↓

マキシン・ギリアムさんは、今年の8月に84歳で亡くなられたそうです。50年以上に渡り、バラの仕事に携わってこられたそう。
彼女の名前、Ruby Maxine(Maxwell)Gilliam にちなみ、「ルビー・ルビー」というバラもあるのだそうです。
死亡記事にも「バラの命名における並外れた才能で賞賛されていた」とありました。

またどこかで、それとはわからないかもしれないけれど、彼女の名付けたバラや「ルビー・ルビー」に出会えるかもしれません。

 

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