2024年10月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 この夏、お盆休みの長い山登りでちょっとした事故に遭った。50cm四方、厚さ20cmほどの岩が左頭上から落ちてきて、その下を歩いていた私は瞬時に左足を引っ込めたが間に合わず、足先に激しい痛みを覚えた。「ガッ」と一撃された感じだった。声が出ないほどの痛み、という表現があった気もするが、数メートル前 にいた仲間、マッチャンこと松原憲彦は「声を聞かなかった」と言うので、声をあげなかったのだろう。だが、痛みは存外味わったことのないものだった。 足先が切れたような感覚があった。すぐに地下足袋と軍足を脱ぐと、前に向かって声をかけた。「おーい、足、やられた!…