一人の作曲家の一つの作品が幾通りもの楽器で演奏される。狙いは楽器の表現力の違いを味わおうというところだろうか。 しかしそんなふうに演奏される作曲家といえば誰だろう。自分にはバッハ、しいて言えばスカルラッティ位しか思い浮かばない。バッハには数え切れない程の鍵盤曲がある。もともと教会のオルガニストであったバッハは大量のオルガン曲を書いたし、クラビィア曲もまた同様だ。 当時存在していた楽器は、空気でパイプを振動させるパイプオルガン、そして弦を爪で弾くチェンバロ(ハープシコード)の2種類しかない。弦を叩いて音を出すハンマークラヴィーア(ピアノ)が世に出るのはまだ先の話。 現在バッハのクラビィア曲はピア…