それというのも
実は、混ぜ物ナシ純度100%の鶏団子が好きなのだ。
以前、あまりに時間がない時にたまたま編み出した横着ワザなのだが、食べてみたら意外においしくて、以来ときどき作っている。
ひき肉を買ってきたら、ラップをはがして、
適量を手にとり、そのままコロコロ転がして整形するだけ でOK。ギュッと力を加えることは厳禁。
つなぎの類を一切入れなくとも大丈夫なものだし、脂がテラテラと輝く様は、ただそれだけで美しい。
何も加えないことで、鶏の味がよりハッキリと分かる。よって、ケチらないでいい肉を買ってくると本当においしいのだ。
この肉団子を食べた人に「これ、鴨?」と聞かれ、思わずほくそ笑んだことがあるが、よっぽど肉の味が濃かったのだろうと思う。
どうです、このツヤめくピンク色ときたら!
でも、ひき肉料理特有の「噛んだら肉汁がジュワー」の快感も捨てがたい。ふわふわした食感が魅力的なのも理解できる。
というわけで、どんな素材をつなぎとして入れればいいのか、あれこれ試してみることにした。
まずは水から
実は、ひき肉はよく水を吸う。これによって仕上がりがふっくらしてくれる…と、以前なにかで見た記憶があるので試してみた。
水をちょっとずつ入れては揉む、を繰り返します。
あ、入れすぎた…! と思うも、焦らず混ぜる。
なんとか吸ってくれました。ただし超とろとろ。
どうにか団子状に。だいたい一個10グラムくらい。
大きさを揃えるため、3個30グラムを基準とすることに決めた。
あれこれ試すぞ
次は、多くの料理レシピに登場する卵を試してみたい。
なんとか吸ってくれました。ただし超とろとろ。
さらに多くのレシピで登場するネギも投入。これは柔らか さではなく、臭み取りのためですね。
どうにもまとまりそうになかったので片栗粉を。これもよ く登場する材料ですよね、つるんとするし。
ゆるゆるながらも、どうにか団子になった。
続いては豆腐だ。豆腐も肉団子に混ぜ込む食材としてメジャーな存在の一つである。
確かに食べた時の感触が柔らかくなりそうだし、肉の量を抑えるカサ増し要員としても、かなり優秀と言えよう。
ほぼ肉と同量の豆腐(きっちり水切りした木綿)にてチャ レンジ。ネギも入りました。
ずいぶん色の白い団子になりそうだな…。
カサ増し&保水力
お麩の吸水性は抜群だ。これを利用しない手はない。
きっと食べたときにフワッと柔らかく、ジュワッと肉汁があふれ出すに違いない。ゆるい団子を整形しやすくしてくれるし、作る側にも大歓迎の食材だ。
さすがにこのままでは使えないので
包丁で荒くみじん切りに。固まりが大きくても問題ないと 思われますので適当に。
肉、たったのこれっぽっちで大丈夫か…。
ちゃんと混ざりました。お麩の表面の茶色が思ったより目 立ちますね。ちょっとチーズっぽい。
ついでに、お麩に近い存在のアレも試してみたい。
こっちは包丁で切ったりしなくていいから、それだけでラクちんだ。
ハンバーグの時は、いつもお世話になっております
こちらもパン粉を大量に使ってみたのですが、
結果、なんと肉の水分をパン粉が吸いまくり、パサパサし すぎて団子にならず。
卵を足すことで、なんとかしっとりしてくれました。パン 粉、おそるべし。
定番ふわふわ要員
最後は野菜に登場してもらおう。お好み焼きなどでも「入れると生地がふわふわになる」と評判の、ごぞんじ長芋です。
それにしても、長芋の分量が多すぎた。そのせいか、だん だん「山かけ」に見えてきました。
案の定トロトロのままだったので、パン粉をバサッと投 入。なんとか団子化できそう。
以上、計7種類の鶏団子ができた。土鍋に入れた出汁を熱し、ポン酢の用意もできた。
さっそく、肉団子オンリーの一人鍋を始めようではないか!
具が一種類というのは、こんなにも気が楽なものか。煮え具合を気にするような野菜類が一切ないのがこれほど嬉しいとは…。つくづく鍋はシンプルなのがいいですね。
では順番に食べていこう。
ああ、何度見てもいいツヤだこと…。
なんせ肉オンリーなので、ずっしりと重みがあります。
ポン酢にサッと付けて…と。うん、箸で持っても崩れる気 配すらない。さすが、見るからに厳(いか)つい。
そして肉汁の流出はゼロ。その手のサービスなし。
ほとんど練ってないのでボロボロかと思いきや、まとまり はちゃんとあります。
ブリッとした食感だ。わずか10グラムの団子なのに、ものすごく食べごたえがある。そして「団子はこれでいいんじゃない?」と言いたくなるほど、うまい。
連想する言葉…
硬派、質実剛健。
時間が経つと、じわじわ水が染みだしてくるので要注意。
これはいちいち団子状にせず、スプーンですくうのが正解 ですね。それくらいに柔らかい。
こころなしか軽いような…。
うわー! 箸を入れたとたん、肉汁がジュワーッと流出! サービス満点ですなー。これを口中でやられたら…!
柔らかい。柔らかすぎる…。
なんとジューシーな! と感激したのは確かだが、実際に食べてみると「え?」という気分になった。柔らかすぎて心もとないのだ。食べた気がしない、と言い換えてもいい。
連想する食べ物…
エアーインチョコ。
基本中の基本といっていい鶏団子ですね。
お、肉汁流出いただきました。さすがの柔らかさです。
そして片栗粉の影響か、つるんとなめらかです。
ひとくち食べてみて「あ、これ知ってる」と思った。鶏団子といえばコレ!とも言うべき基本の味である。ネギを入れたせいか鶏自体の味が弱くなってしまい、それは残念だった。うーむ。
連想した単語…
普通、平凡、凡庸。
豆腐の白が入ることで、キレイな団子になりました。
弾力はあんまり。肉汁サービスもほぼゼロ。あれ?
しかし白いな…。
口に入れた途端「あ、豆腐の味!」と思った。当たり前すぎて申し訳ないが、正直それ以上でも、それ以下でもない。豆腐好きにはたまらない団子であろう。適度な柔らかさは好感が持てる。
連想した食べ物…
湯豆腐。
まるでチーズを入れたように黄色くなった。
通常、団子は鍋に入れるといったん沈み込み、火が通るにつれてプカーッと浮き上がってくるものであるが…。
お麩を入れすぎたせいか、最初っから浮いた。
それでも無事に火が通りました。そして、けっこうずっし りしてますよ。
肉汁はほとんど出ず。これ、ほぼ肉だ!
これがおいしかった。肉の味を邪魔せず、噛み心地も肉のそれにほぼ近い。柔らかいけど柔らかすぎないという、絶妙のラインを保っている。これはいい。
連想した食べ物…
グルテンミート。
やはり、こちらも鍋に入れた直後から浮きました。
弾力および肉汁流出サービス、ほぼナシ。
「ちゃんと噛めてるなぁ」という感覚が嬉しい。
お麩に負けず、こちらもおいしい。ずっしりしてて、食べ応えがちゃんとあるのに決して固くないのが素晴らしいと思う。肉をケチりたい時など、積極的に入れたいくらいだ。
連想したテレビ番組…
大家族スペシャル。
パン粉のおかげで、どうにか団子として成立しました。
火が通ると、箸で持つのがやっとなくらいツルツル&ブニ ョブニョに。
もっちりネチネチしすぎて、これはもう鶏団子じゃない。 っていうか、どう考えても肉が少なすぎるだろう。
こういう実験モノをやると、つい極端なものを作ってしまいがちだが、これがいい例だ。メインはあくまで鶏肉なのに、すっかり立場が逆転しておるではないか。
連想した食べ物…
餅。
どれもそれなりにおいしい
きっと、どんな食材がつなぎとして入っていようとも、鶏の肉が一定以上の割合で入っていれば、それは十分においしい鶏団子だということが分かった。固いとか柔らかいとかは完全に好みの問題だし、こうしてわざわざ食べ比べるから違いが表面化するのである。企画全体を無にする発言のようだが、本当のことだ。
甲乙など付けられるはずもなく、最終的にワケが分からなくなり、全部の材料をめちゃくちゃに混ぜ、さらにそこへレンコンを細かく切って加え、特製の鶏団子を作っていた。もちろんすばらしくおいしかったが、鶏100%の団子もやっぱり好きだ。
もはや「肉が丸くなってりゃ何でもいいのか?」という疑念も生じているくらいだが、どれもうまいんだからしょうがない。
みなさんも鶏団子を作るときは、いろいろ混ぜると楽しい しおいしいですよ。もちろん混ぜなくても!