Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
偽断熱過程下における積雲対流の数値実験
浅井 富雄
著者情報
ジャーナル フリー

1964 年 15 巻 1 号 p. 1-30

詳細
抄録

積雲対流の発展過程を調べるために簡単な垂直2次元大気モデルを用いて数値実験を行なう。
最初に,摂動法に基づいて積雲規模の熱対流を記述するのに適した力学方程式系を導出する。ここで非発散運動の仮定が許され,渦交換の導入の不可避なことが示される。
次に,積雲対流に対する非線型方程式系を導出し,若干の大気モデルについて数値積分を行ない,対流の時間的発展過程を追跡する。高さ5km,水平幅 10kmの領域を採用し,条件不安定な成層をなす湿潤な静止大気を想定する。この下半層に温度擾乱を与えて対流運動を惹起する。渦交換を別にすれば対流運動は偽断熱過程に従うものとし,更に境界を通して運動量,顕熱及び水蒸気の流出入のない閉じた系で取扱われる。
対流のライフタイムは一般に20~30minで,.対流の初期,即ち発達期は上昇域が下降域に比して次第に狭隆化し上昇速度が下降速度に比して強い循環系の強化により特徴づけられる。上昇速度や凝結率が最大になる最盛期に達すると,その後直ちに減衰期に入り,やがて減衰振動を示すに至る。この間における垂直熱輸送に基づくエネルギー変換が示され,又計算結果の妥当性も示される。
中緯度地帯における夏期及び冬期に対応する温暖及び寒冷な気層中での積雲対流に大きな差異の生ずることが示唆される。

著者関連情報
© 気象庁気象研究所
次の記事
feedback
Top
  翻译: