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泡坂得意の職人達の恋愛短編集。
折鶴は最後に着物の鶴が車に挟まれて死んでいたというラストでだから折鶴という悲しいタイトル。他にも結ばれない寂しい話でしんみりさせる。
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折鶴がどこにも登場しなかったのは肩透かしだったが、 それを差し引いたとしても十分面白かった。 マイナーな職人を登場させる連作だが、 題材が新奇なので、とても興味深い。 ミステリー風味は押さえ気味だが、それでも必ず捻りがある。「亜愛一郎」や「乱れからくり」といった初期傑作には及ばないが、 円熟期の佳作といってよい。
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もう50年以上前の作品なのに面白かった。4篇の短編集。全部着物にまつわる職人と女の人との話。ちょっとミステリーの要素も入ってるけど、それより人間関係とか、職人の仕事が時代とともに変わっていくのが切なくも面白い。こういう静かな小説もいい。この人は本当に多彩だ。はずれなし。
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まだよく理解していない作家。個人的には2冊目。
前回は玩具職人の薀蓄を絡めた殺人事件の推理という話だったが、こちらの短編ではなかなか事件らしい事件が起こらないので、読んでいく重心をどこに取れば良いのかなかなか悩む。
とはいえ、蒔絵師に浄瑠璃、染師、縫箔(ぬいはく)師などという、江戸の技術の職人の世界や古典芸能を軸足にしてるんだなというところはよくわかった。
4篇納められているが、真ん中2篇は結構印象は薄い。最近の小説に慣れすぎているので、専門知識と散文的な会話を元に、本当に純文学をやられるとついて行けずに「もう終わり?」となるのだな。落ちるポイントはわかりやすいけれども。
しかし、この本のメインは、やはり「忍火山恋唄」と「折鶴」であろう。ちゃんと(?)事件が起こるので、読みやすいし筋も置いやすいし、さらに現代である描写も十分。古典の素人なりについていける適当なペースもよろしい。あとで知ったが、両作とも直木賞候補なのね。ふむ。
速読にあまり向かないし、独特の会話の記述など、もう一冊買って読むかわからないけど、電子書籍で買って読むには、本作はちょうどいいんじゃないかね。
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最近(とは云っても同著者の『ゆきなだれ』以来だが)触れていない純文学の香気に酔わせて頂きました。しかも日本の伝統工芸の職人の世界を基に繰広げられる恋愛物語ということで日本情緒溢れる芳醇さが堪らなかった。
それぞれの4作品に通底するのは、登場人物達の頑なまでのストイックさ。奔放な登場人物など1人としていず、それがまたぷんぷんと市井の暖かみを行間から立ち上がらせてくるのだ。
正に“職人”泡坂妻夫が丹念に織り込んだ短編集と云えるだろう。
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泡坂妻夫の短篇ミステリ作品集『折鶴』を読みました。
『奇跡の男』に続き、泡坂妻夫の作品です。
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滅びゆく職人の世界に身を置く男と、手広く事業を営むかつての恋人との再会が、悲劇的な結末へつき進む。
直木賞受賞作家による、宿命の愛の行方を見すえた小説四篇。(小杉健治)
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昭和61年(1986年)から昭和62年(1987年)に発表された以下の4篇を収録して昭和63年(1988年)に刊行された短篇集です。
■忍火山恋唄
■駈落
■角館にて
■折鶴
■解説 小杉健治
縫箔の職人・田毎(たごと)はパーティでかつての恋人だった鶴子と再会した… かたくなに手仕事をつづける田毎と手広く事業を広げる鶴子、、、
この二人の出逢いが悲劇へとつながる表題作『折鶴』。
友禅差しの模様師・脇田が旅先でふと聞いた新内がきっかけで、酒と女で身を持ちくずした名新内語りの末路を知る『忍火山恋唄』の直木賞候補作2篇に、『駆落』『角館にて』を収めた… 自ら紋章上絵師という職を持つ筆者が、職人の世界に男と女の結びつきの不可解さをからませて描く好短篇集。
友禅差しの模様師、悉皆屋、漆工、縫箔屋… 普段馴染みのない、衰退していく一方の伝統職人の誇りや葛藤、そこに関わる男女の機微が中心に描かれた4篇、、、
そこに、控えめにミステリの味付けがしてある感じで、純文学寄りの作品ばかりなので物足りなかったですね… そんな中ではミステリ色が強めの『忍火山恋唄』と『折鶴』が印象的でしたね。