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警視庁刑事課に配属された夕子は、いきなり迷宮入り間近の家族3人が惨殺された羽田事件を任される。しかし、まったく手がかりもなく聞き込みをしている最中、かつて警察学校で指導を受けた椎葉が、代々木公園のホームレスの炊き出しにいるところを発見。椎葉に近づこうとした矢先、羽田事件の重要な関係者である女子高生が殺される…。
樋口有介らしい、事件よりも日常感の充実したミステリ+αなドラマ仕立ての1本。夕子と元刑事で、事件と見ると虫のできない椎葉を中心に、解決に向けているんだか向けていないんだかという、人間の動きを見ることが中心の作品。
まあとにかく、思っていたよりも長い。そして全然解決に向かっているんだかいないんだかわからない状況を眺めるようなところが醍醐味。
実際に、事件の真相はと言うと、良く言えば予想外だが、はっきり行ってどう着地しても文句のいえない程度のワタワタ感で、なんとかしようとしている部分はあまり要求されていないのだろう。
逆にヤキモキする部分が多いともいえ、なんでその描写をいちいち取り上げるかなあと思ってしまうのは、ミステリとして読みすぎているのではないか。
読むべきところは多分そこではない。椎葉のホームレスとしての生活であるとか、夕子のセクハラに対する対応であるとか、美亜の鬱屈して入るが、あっけらかんとした生き方なのだろう。
難点としては、自然と切り替わっているとはいえ、夕子と椎葉の両方の視点でみてしまっているので、見えない部分がわからずボケているような感覚は有った。
どこまで純粋なミステリとして楽しむか、読む側のスタンスで印象が異なってくる1冊だ。