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阿弖流為の活躍が四半世紀前に描かれていた
2005/09/05 20:05
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は81年に出版されたものを文庫化したものである。物語は平安時代の初期に征夷大将軍に任ぜられた坂上田村麻呂が蝦夷の酋長である阿弖流為を制圧して陸奥を平定したことに題材を得ている。
それで思い出すのが、高橋克彦氏の『火怨』である。話の主題は同じである。私はてっきりこの蝦夷対朝廷の戦いは高橋氏が掘り起こしたテーマだとばかり思っていたが、もう四半世紀前に澤田ふじ子氏が開拓済みであった。解説にもこの作品が嚆矢となったと書かれている。
全体の流れは史実同様であるが、蝦夷の敗因がどこにあったのかは『続日本紀』のこの時代の部分が失われているので、何ともいえない。こういう場合こそ作家の創造力を発揮するチャンスである。
蝦夷の敗因は、朝廷側の懐柔策に対して族長たちが抵抗できず、阿弖流為や盤具公母礼等らのリーダーから離反したことにしている。当初はそれなりの勢力を備えていながら、案外あっさりと坂上田村麻呂に下った辺りは、さもありなんと思える敗北原因である。自分の生活に懸命な蝦夷に朝廷を相手に戦っている余裕はなかったということである。
蝦夷側には薬師寺で修行をしていた蝦夷の僧果安が、一方、征東大使に任命された紀古佐美の諜者耳無などの挿話がなかなか楽しませてくれる。
歴史上の戦を多様な角度から読むことは、たとえ小説といえども歴史への関心を深めることになるし、史観もより広くなるような気がする。
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