- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
人口減少・少子高齢社会よりも怖い下流社会(階層分離)
2005/10/08 22:18
17人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちょーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、フリーターやニートといった集団が話題となっています。また、一方では、レクサスを購買する人々も多くいます。つまり、よくいわれる「勝ち組、負け組」のことです。かっての資産家(ブルジョア)・労働者(プロレタリアート)という階級ではなく、富裕層と貧乏層という階層構造が確実に進行していることを本書は、マーケティングの手法を駆使し、東京近辺の実態調査に基づいて分析しております。
それによると、年収300万円未満と700万円以上とに分断されていて、結婚、子ども、消費形態、仕事に対する意欲、日常生活、教育などさまざまな分野で、差別化が発生していると指摘しています。男性では、ヤングエクゼクティブ系、ロハス系、SPA!系、フリーター系に分類され、女性では、お嫁系、ミリオネーゼ系、かまやつ系、ギャル系、普通のOL系に分かれているとし、典型的な人のインタビューも載せてあります。
ちなみに、下流階層の人の習性としては、だらける、朝寝坊、夜に子ども連れで居酒屋へ行く、ビビリー君でパラサイトが多い、料理を作らない、コンビニで何でもすます、NHKニュースではなくフジTVをよく観る、自分らしく生きる、ひとりでいることが好き、パソコンオタク、刹那主義、ファッションも自分流などなど。。。そこにいる、あ・な・たも、そうではないですか???
こうした階層分化は、かってのマルクスのような生産手段の有無に起因するのではなく、その階層の親の所得とか考え方が大きく影響していることを検証しています。すなわち、教育・職務水準の高い家庭に育ったこども世代は、必然的に高い教育を受け良い就職先にたどり着くことができ、それと反対に、教育・所得水準が低い親はこどもに、あまり教育も施すことができず結果として就職機会にも恵まれない、また、結婚にも重大な促進・阻害要因になっていることなども推察しております。
つまり、この上流階層と下流階層の乖離は、固定されて幾世代にも繋がっていく虞がある点をもっとも憂慮すべきことだと警告しています。上流階層の人々が下流階層の人々を見放してしまうことです。こうならないために、いま何が必要な政策かについても具体的に提言しております。
人口減少超高齢社会がすでに始まっている日本の行き先について、わたしたちも真剣に立ち向かわなければならないと率直に思いました。
下流社会?二次効果が注目だったりして
2006/11/06 12:21
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:T.コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
●下流?だからどうする?
本書は読者のチェックからはじまる。「あなたの「下流度」チェックを」というテストが最初のページにあり、12問中半分以上該当すれば下流だそうだ。自分は10問該当したので十二分に下流なのだが、ちょっと気になる点があった。設問の半数以上が個人主義的な要件を示すもので、自分らしく生きる、一人が好き、ファッションは自分流....などが問われている。これらはあきらかに個人主義の属性だ。すると個人主義的な、つまりは欧米的な価値観を持っている人間は日本では下流になるぞ、ということなのか?
ところが本書はその先を推論してしまう。しかもそれが当たっている可能性が高い。
つまり個人主義が下流を生むのではなく下流が個人主義を言い訳にしている、ということだ。
最後に著者は下流への対応策として「機会悪平等」を主張し、説得力ある5つの具体策が示されている。これは著者がマーケティングや企画を仕事としてきたために実効が前提として考えられているのでよくできている。『ファスト風土化する日本』でも最後に解決策を示していたが、クライアントがいるプロとしての提案であり、説得力があった。その点の著者の調査企画立案能力に関しては宮崎哲弥が高く評価している。専門用語を並べて喜んでいる理論だけのアカデミーオタクではないのだ。
●読者の反発が目立ったワケは?
最近まで国民の多くを占めると思われていた「中流」とは何だったのか?
本書は端的に、誰もが浮かれたバブル経済期の新中間層の中流意識は「「下」が「中流化」したのである」と指摘する。その多くを占めるのは資産は持っていないが世界一の経済発展によって可分所得が増加したサラリーマンであり、その中心的存在といって差し支えないのが団塊世代だ。そしてその子供である団塊ジュニアを中心に、今度は「「中」が「下流化」する」。それが本書が分析する現在のメガトレンドだ。
良くも悪くも潔いのが、その「下流」に関する「意欲、能力が低いのが「下流」」だという指摘。本書はこの容赦の無い判断ゆえに反発されてもいる。誰でもスバリと自分の短所を指摘されたらアタマにくる。もちろん「意欲が低い」ことが「下流」の原因のすべてではないし、それはある意味で結果だ。だからこそ、その原因を探る論議は積極的に行なわれるべきだと思う。
●ホントの問題は何か?
階層消費社会の指摘は20年以上前からある。
85年には『新・階層消費の時代—所得格差の拡大とその影響』が出版され、みんなが浮かれ出している時にその〝浮かれ気分〟を冷静に分析し、ついでに決して明るくない将来を予見して注目された。その前年には「○金○ビ」でリッチとビンボーを描いた『金魂巻』が大きな話題になっていた。どちらも冷静に下流とビンボーを描いていたが、どちらも読者から批判されたり否定的な評価を受けてはいない。それどころかウケていた。理由はカンタンだ。その頃の読者には余裕があったのだ。逆にいえば現在本書をめぐる状況には余裕が無くなってきている徴しがあるといえる。余裕の無い視点(人間性のもっともよく現われるもの)では本書は否定の対象にしかならない。その意味では本書は二次効果として現実を正直に照らし出してみせてもいる。そしてそれこそがホントに社会に余裕が無いことを反映しているのかもしれない。
“自分らしさ/個性”は引篭もりの“錦の御旗”
2008/04/04 02:46
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
みうらあつしは1958年(新潟県)生まれ。一橋大学(社会学部)卒業後,パルコ入社。マーケティング情報誌『アクロス』編集長(28歳就任)を経て,三菱総研へ。99年,独立(「カルチャー・スタディーズ」設立)。代表取締役じゃないの? 著作は多い。どっかの大学では非常勤もやっている(本文参照)。本作は著者48歳の作品。ご存知の話題作で,手許のものでは刊行約4ヶ月で11刷。売れてる。
第1章 「中流化」から「下流化」へ
第2章 階層化による消費者の分裂
第3章 団塊ジュニアの「下流化」は進む!
第4章 年収300万円では結婚できない!?
第5章 自分らしさを求めるのは「下流」である?
第6章 「下流」の男性はひきこもり,女性は歌って踊る
第7章 「下流」の性格,食生活,教育観
第8章 階層による居住地の固定化が起きている?
論旨は題名通り。“下流という階層集団の出現”。この階層の特徴は,上昇意識の欠如=無気力。「下流」というのは“上流”階級とか“中流”階層とかの援用で,管見では本書刊行で初めて知った。読者は知ってましたか? 「昭和ヒトケタ世代」は26-34年,「団塊の世代」を47-49年の3年間に生まれた270万人,「新人類」(三浦が関係してた『アクロス』誌が命名(84年))は,60-68年(社会学界的には55-73年,人数記入なし),「団塊ジュニアの世代」を71-74年の4年間に生まれた800万人,「真性団塊ジュニアの世代」を73-80年(人数記入なし)。“真性”というのは,統計的に三浦が推測して割り出した世代。三浦の世代分類に従えば,私は「新人類」だ。中年なのに「新人類」。うげぇー,困った,自覚不足だ。
村上泰亮『新中間大衆の時代』(84年)で,日本における「中流」階級出現が特筆大書されたが,このとき「真性団塊ジュニア」は保育園か幼稚園にいたってことになる(なぜ「中間」「中流」かと言うと,「中産」には,厳密には自営業者だけが含まれ,サラリーマン世帯は「中産」ではないってことを金融を専門とする大学教授から聞いたことがある)。
私が最も括目したのは,“自分らしさを求めるのは「下流」である”という命題。「『個性を尊重した家族』も『下』ほど多い」(162頁)とも。第5章題名として“?”が付いているのは,三浦の調査母体数が小さいことを謙遜しているから。だが,これはすばらしい発見だ。要するに,アンケート結果と人口動態を観察して,所謂“自分らしさ/個性”というのが引篭もりの“錦の御旗”(公的には誰も否定し得ない口実)になっているということを三浦は喝破したわけだ。
次に驚いたのは,男性の所得と既婚(初婚)率の相関を見たグラフ(124頁,図4-2)。高年収層ほど既婚率は高いという事実(年収1000万円以上で100%)。逆に,低所得層ほど未婚率が高い(年収150万以下など婚姻率は0%)。女は恐ろしい。こういうことを知っていたからこそ,バブル崩壊直後に“3高”(高身長・高学歴・高収入)を人目も憚らず叫んでいたのだ。結婚後の高学歴の女は仕事継続派と専業主婦派に分かれるようで,どちらにせよ配偶者である男性の協力か資力が不可欠だ。実に不愉快だったが,あっちも必死だったんだ・・・。(1335字)