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ハードボイルドの成立しにくい時代になったという。痩せ我慢が男の美学だった時代は終わったのか。改行毀れていく男の美学を様式美としてでなく1人の人間の切実な衝動と行動を通じて描いてみせてくれる北方氏の圧倒的な筆力が際だつ。文庫本493p。長編ではあるが一気に読ませる展開と作品世界の魅力に脱帽。
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エリートサラリーマンが、さりげなく奇妙な世界に嵌っていく様が見事。心理描写がするどく、純文学を読んだような感触が残ります。
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最初から静かに、しかし逸らすことを許さない力強さで惹きつける。それが主人公、立原という男であり、『擬態』という物語である。
平凡な会社員である立原が、取引先のビルの立ち退きから生じた抗争の中で少しずつ毀れていく様は、恐ろしくもあり、そしてまた快感でもある。圧倒的なリアリティをもって立原と読者の仕切りを取り払ってしまうからだ。読者は日常という枠の中にいながら、本書を読むことによってその枠を飛び越え、自分が体験したことのない境地を覗くことができる。
しかしどんなに追体験しても、読者は立原ではない。日常を忘れて熱中し、会社に遅れるなどということがないようにご注意を。
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全体の3分の2は、檻よりもいいぐらいだ。どんどんそぎ落とされていく感覚がいい。終盤、刑事と対話させるよりもモノローグでよかったのではとも感じるが、この辺は好みだろうな。
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北方謙三のハードボイルドをはじめて読む。あの人の風貌は嫌いではない。ハードボイルドを地でいっている雰囲気が好きだ。だが、こちら『擬態』については星三つ以下。破綻の仕方が中途半端であり、壊れ方にいたっては平凡なのである。読者はさらなる過激な世界を欲している。
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北方節全開、似たような話しを何回も読んだ気がするがそれでも嵌る。夜なべして読了。ただ惜しいのは刑事の浜名の顔が良く見えなかったこと。途中から重要なポジションになるがその割りに最後までイメージが掴めず。
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何かの雑誌で紹介されていて読んだのかな。
果たしてそれはどんな紹介文だったろうか。
この作品、体裁はハードボイルドだろう。
だが書かれているのは只のサイコパスだ。
北方謙三の歴史小説は好きだ。
特に三国志には心酔していると言っても良い。
憐憫が男を強くし、艶っぽくさせるのだろうか。
この主人公に魅力はなく、
いびつで真っ暗な器を、
持て余していただけにしか見えてこなかった。
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四十になる平凡なサラリーマン。
ある日、仕事でビル内の立ち退きの仕事が舞い込む。
この立ち退きに応じない黒い会社から、抗争事件へと巻き込まれてゆく。
平凡なサラリーマンが、対企業、対ヤクザと次第に戦う内に変容してゆく。いや、本来の自分が現れてくる。
虚無感が漂う中、どこか哀愁めいたものを感じる。
生きてゆく中で、喜怒哀楽の波が乏しく、ただ目の前の選択肢をこなしているだけのような。
何でこんなことをしているのだろうと懐疑するわけでもなく、ただそうしたかったからそうなったと淡々と。
主人公の本来の持つ人間性が徐々に剥き出しにされ、毀れてゆく様は実に読み応えがある一冊でした。