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物事の背景を探り、聖書の意味を三浦綾子の小説から知る。
2010/05/12 10:33
17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説は実際に起きた鉄道事故を基に書かれたものだが、めったにこの著者の作品を手にしないのに、この作品を読もうと思ったのは明治時代に起きた「お召し列車事件」という別の列車事故を考えてみたいと思ったからだ。
北海道塩狩峠で明治42年2月28日、暴走する列車がカーブで転覆しそうになる巨大事故を一人の鉄道員が自らの命を捨てて防いだ。片や、「お召し列車事件」は明治44年11月10日に明治天皇が九州巡幸にあたり乗車予定であった列車が脱線事故を起こし、死傷者は居ないにも関わらず、その管理責任を問われて鉄道員が鉄道に飛び込んで自殺をしてしまった。
乗客の生命を守るために自らの命を捨てた鉄道員、管理上の不手際から自責の念に駆られて自殺してしまった鉄道員。ともに鉄道に生きる身でありながら、その二人を取り巻く人々の感情の違いを知りたかったからである。
この作品はキリスト教信仰に生きる鉄道員の自己犠牲の姿を描いている。まさに、キリスト教信仰に目覚めた、三浦綾子にしか書けない内容の小説だった。
「お召し列車事件」では、飛び込み自殺をした鉄道員の顕彰碑建立の意見が出たことに対して、「福岡日日新聞」という地元紙に九州帝国大学総長の山川健次郎が意見記事を出したことから紛糾した。反天皇ともとれる内容であったために問題とされたが、山川健次郎の物理学会における功績の大きさもあってか、不問となり、後に東京帝国大学の総長に再就任までしている。
もしかしたら、山川健次郎は明治42年の事件を知っていて、あえて、バッシング覚悟で意見記事を出したのではないかと思える。それも、山川健次郎の妹でありクリスチャンの大山捨松(薩摩閥の大山巌の夫人)から塩狩峠での鉄道員の自己犠牲を聞いて知っていたのではないかと推察する。明治初年、朝敵となった会津若松の白虎隊生き残りが山川健次郎だが、生命の尊さ、自らの生命を捨てるのは他者のためという信念を持っていたからではと考える。
本来、小説についての評を記さなければならないのだが、山川健次郎が日本全国を敵に回してでも意見を曲げなかった背景を知るには、この小説を読むしかないと思った次第だが、山川健次郎はアメリカ留学時代に聖書を読んでいたのか、などとも。
日常、聖書に触れる機会が皆無に等しいため、山川健次郎の心象風景を洞察するため、三浦綾子のこの小説を選んだ。
絶対最強、愛のうた。
2017/05/31 21:11
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
三浦綾子さんは信仰に生きた人で、キリスト教を扱った作品が多い。
この物語も、明治四十二年に北海道の塩狩峠で起きた、
クリスチャンの青年の行動を下敷きにしている。
旭川六条教会のつながりで、三浦さんはある方の信仰の
手記を目にし、長野政雄さんという方の生涯を知って
深く激しい感動を覚えた。
本人の希望で日記などの主だった記録は焼却されており、
周りに残っていた断片情報を聞き取りながら人物像を
作り上げたようだ。だからこの作品は間違いなく小説だし、
創作部分も多いのだが、鬼気迫るとはまさにこのことであった。
少年時代、祖母と父に育てられ、実の母は死んだと
聞かされていた永野信夫。東京の本郷の屋敷住まいだ。
きかん坊で士族のプライドを祖母に植え付けられた少年は、
しかし父を失望させる。父の気持ちが理解できない永野。
祖母が突然の死を迎えたあと、ある日、母と名乗る女性が
現れた。しかも少女を連れ、妹だという。
聞けば、キリスト教の信仰が原因で祖母から絶縁状態に
されていたらしい。しかし永野は納得がいかない。
実の子どもと別れてまで選ぶキリスト教なんてとんでもないと。
永野は、ことあるごとに信仰の不可思議さに戸惑いながら
成長していく。小学校で、無二の親友となる吉川と
足の悪い妹との出会いも、永野の人格形成に
大きな影響を与える。
明治の頃は、キリスト教はヤソと呼ばれ、忌み嫌われた時代。
その中で、真実とは何か、こころとは罪とは死とはなど、
人間の根源に関わる思索を深めていく永野の人間性に、
知らず知らず惹きこまれていくのである。
だから……泣いた。泣いたよ。
泣き系小説とか、恋愛小説とかいろいろ読んできたが、
なんというか、この作品は質が違った。
どっちが上とか書いたら作者から怒られそうだが、でも、
次元の違いを見せつけられた気がするんだよね。
大事な情報を一つ。裏表紙の紹介文は読まないほうがいい。
氷点も同じだったのだが、新潮文庫の古い作品は、
どうも裏表紙の紹介を書き過ぎているきらいがある。
注意されたい。
心が洗われるような一冊。
2002/04/20 23:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よしの - この投稿者のレビュー一覧を見る
母はいないと思って育った主人公『信夫』。しかし祖母の死をきっかけに母に出会い、キリスト教に出会う…。そして信夫はキリスト教により生き、キリスト教により死んだ。
とにかく泣けます。信夫の信仰に対する熱い思いには誰もが胸を打たれ、そして信夫の死には誰もが涙すると思います。キリスト教徒としての信夫の姿が中心に描かれていますが、『ふじ子』への思いも人間らしく描かれているラブストーリーとも言えます。是非読んで欲しい一冊です、
何となく想像できた
2016/12/03 18:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまぜみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
結末であった。実話を基にしたフィクションであるが、心に響いた。のめりこめた。
中学生の時衝撃を受けた本
2016/11/29 13:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふたちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学校の時の国語の先生に勧められ、友達が購入したものを借りて読んだのですが、そのとき、「こんな生き方もあるのか!!」とものすごい衝撃を受けました。大人になり、また読みたくなって購入しました。
心の底から泣ける
2016/09/07 02:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぱやぱや - この投稿者のレビュー一覧を見る
心の底から泣けました。読み終えたあと,なんだかとても心が温まる気がしました。人間,命,人生,宗教…,本当に色々なことを考えさせられます。主人公の信夫のように僕も生きることができるだろうか。きっと難しいだろう。でも,目の前にいる人々を少しでも幸せにできるように日々過ごしていきたい。僕にとって本当に大切な1冊になりました。贈ってくれた友人に感謝です。
りん
2015/12/25 13:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鈴木涼子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の言葉に引き込まれてしまいました。ただただ、素晴らしい
One of the Best
2014/09/13 05:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JY - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人の小説はあまり読まないですが、この本は今まで読んだ本の中でベストの部類に入る良作でした。この作家が好きになりました。
背表紙は絶対に読まないで下さい!
2004/12/29 15:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KUNkun - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミッション系の高校で宗教の授業の際に紹介され読みました。
私自身は無宗教なので、宗教色の強いものには抵抗がありました。
しかし、ページを進めるうちに引き込まれ一気に読み終えてしまいました。
自己中心的な人間が増えている現在、自己を犠牲にする尊さを気づかされました。
三浦綾子さんといえば『氷点』が代表作ですが、それを凌ぐ作品です。
“この本を読んで涙が出ないやつは人間じゃねえ!”と叫びたい、絶対お薦めの一冊です。クライマックスでは涙だけでなく声を出して泣いてしまいました。
私自身は背表紙を読んでから購入したのですが、これから読まれる方は背表紙を読まずに本文を読んで下さい。
人にはそれぞれ役割があることを、命がけで教えてくれた
2002/07/06 15:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
聖書には「人がその友のために命を捨てること、これよりも大きな愛はない」という一節がある。まさにこれを自らの命をもって示したのがこの小説の主人公、永野信夫である。読み終わって何日もこの本のことばかり考えていた。それほど心に深く入り込んできた小説だった。
自分の命を捨てることで大勢の命を救った彼の生き方に、「自分は何のために生まれてきたのか」という自らへの問いかけをせずにはいられない。普段何も考えずに生活していることが多いものだが、人はそれぞれ役割を持って生まれてきている。もちろん、生まれてすぐに亡くなる赤ん坊にも何らかの役割があったのである。それがいったい何なのか。自らにこう問いかけ続けて生きる姿勢は、その人生をも何倍も豊かに、実りあるものに変えるはずだとこの小説を読んで痛感した。
キリスト教信者の物語、ということだけでは語り尽くせない奥深さがあると感じる。最後に出てくる聖書の言葉「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん」にこの小説の意義が集約されている。聖書ではこのあと「もし死なば、多くの果を結ぶべし」と続くのだが、この言葉どおり、多くの果を結ばせた主人公の死は決して単なる「人の死」ではない。自分は他人のために命を投げ出すことなどとてもできないだろうが、せめて自分の存在が人の役に立っている、そんな生き方をしたいものだと心から思うようになった。
一粒の麦
2022/03/23 23:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たま - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤優氏「読解力の強化書」にて特別講義の題とされていた本書に興味を持ち読みました。
信夫がどうにも完璧過ぎて現代では現実感無く感じてしまいます。はー、聖人のようなお方だー。どうにも後半は三堀に感情移入してしまいました。恩を被せられるようで嫌だよね、うん。この鬱屈した感情は信夫のような人には絶対理解してもらえない。そんな三堀や読者の私でも、あのラストの行動は胸を打つ。キリスト教についてはよく知らなかったのですが、成程このような考え方を持つ人々なのか、と見る目が変わりそう。同時に銀河鉄道の夜なども思い出しました。
宗教と複雑深遠な感情との狭間で
2022/01/09 19:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の勉強不足でこの方の名前を存じておりませんでしたが、どの小説紹介サイトでも、ミングウェイや名立たる名作の中に本作がランクインすることが多く、それで興味を持ち、読みました。圧巻の一言でした。主人公の生い立ちから信仰や宗教の話を絡めて、家の伝統的なしきたりとの葛藤を描くその描写に心を打たれました。また、それだけではなく、過去の時代と現代の時代のリンクや思いのすれ違いを描くうまさも、今まで読んできた小説の中では光るものがあります。読んで損がない、というよりも、読まないといけない作品と言っても過言ではありません。
塩狩峠
2021/10/12 01:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際にあった事件を元に書かれた小説。まだキリスト教が耶蘇と呼ばれていた時代にキリスト教に入信した主人公が、病気が原因で長い事結婚できずにいた婚約者の下に結納にいく列車で自己にあい、自分の身を投げ出して乗客を救う。感動的な話だった。
塩狩峠読了しました。
2018/02/26 16:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おむすび - この投稿者のレビュー一覧を見る
北海道の旭川へ、今回縁あって赴くことになり、三浦綾子さんの『塩狩峠』を読みました。
感動した。何度も読みたくなる。と評判の良い書籍でしたので、期待半分、不安半分の気持ちで読み進め、あっという間に読み終えてしまいました。
三浦綾子さんの本を手にとったのは今回が初めてでしたが、とても爽やかな筆致で読みやすくそれでいてどこか儚さをはらんでいるように思えました。
さて、本の内容ですが、率直に申しまして多くの方がおっしゃられているように感動した。とまでは言えませんが、心に何かを残していくようなそんなお話でした。
宗教の考え方を超えた、人とは何かについて考える、そんな機会になったのではないかと思います。
殊更に、この小説の中で、主人公とその友人が述べている『人間は不自由だな』と言っていた言葉に関しては、その言葉の表面以上の厚みを持って私の中に残っています。
まだ20の私には理解し得ない多くの事を得た時、これから先もう少し歳を重ねた時にこの小説ともう一度、向き合えたらと思います。
考えさせられます
2016/05/02 08:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黄成 - この投稿者のレビュー一覧を見る
評価が非常に高く、泣ける話としても紹介されていたので読んでみました。
実際かなりきつい話です、実話を基にしている様ですが、著者の三浦さんの宗教観も強く影響しているようです。
この話で泣けない人は少ないかもしれません。
・・・ただ、そのあまりの禁欲振りに、自分だったら・・・まわりの方々の気持ち・・・など、
ついていけない部分も少しあったのが本音でした。