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みんなのレビュー11件

みんなの評価3.9

評価内訳

11 件中 1 件~ 11 件を表示

類例無き大名君

2006/08/16 04:02

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 天皇陛下に評価をするというのは全く論外の暴挙ではあるが、明治帝の名君ぶりは、世界史において完全に突出している。そのことをアメリカ人のドナルドキーンも断言しており、キーンは敬意を込めて「大帝」と表現している。実際、中国史を戦国春秋から溥儀時代に至るまで思い浮かべてみても、大帝ほど民衆と一体となって自らを律し、思いやりと諸外国への配慮をされた皇帝は存在しない。そこには、この国への愛と臣下赤子への愛が常に感じ取れる。
 そんな大帝の一日というのはいかなるものであったのか。朝起床され就寝なされるまでの御日常を明確に伝えるのが本書である。そこには、風呂嫌いであられる一面や大飲される御日常が一面として存在すると共に、ストイックなまでに御倹約なされ、しかもそれらが全て「国民とともに」とご本心からお思いになられていた姿が浮かび上がる。
 明治維新後の日本は、改革後ということもあって誠に貧しい国家であった。金や銀は良質な金貨としての小判大判がアメリカに騙し取られ、産業もほとんどない。もちろんそれでも天皇陛下は国家の主柱であられる以上、各地に避暑地の別荘があった。しかし、大帝は一度たりとも参らなかった。その理由は「朕は参らぬ。日本人の多くが酷暑酷寒で働いているのに、なぜ朕だけが静養できよう。」。脚気を患って岩倉具視が空気の良い場所へ離宮をと薦めたが「脚気は朕だけの病気ではない。国民みんなが助かる方法でなければ意味が無い」と一蹴された。
 日清戦争においても、前線の兵士を思い、朝鮮に近い広島大本営で皇后も近寄らせず質素な椅子とと机とベッドしかない木造2階建てでひたすら兵士の苦労を祈り続けておられた。戦争指導者などは兵士の痛みなど忘れて享楽しがちだが、陛下のそれは全く違う。
 トルコ人などは特に日露戦争を勝利に導いた英帝として、尊敬の念が厚い。エルトゥールル号事件で大帝によって命を救われたトルコ人たちは今でも世界一の親日といってよい。初代大統領で建国の父と呼ばれるアタチュルクは陛下の肖像をデスクに置いていたという。
 日露戦争を影で支えてくれた大英帝国も、陛下の崩御の際にはこちらが驚くほどの賛辞の嵐であった。この頃の日本は、全く国家としての品格に満ち溢れていた。その品格の光源は、26世紀にわたり一系を貫いた一種の神威によるところが大きい。その神威の絶頂が明治大帝の治世下であったといえる。無論、昭和大帝も稀に見る名君であられるし、今上天皇陛下も穏やかなる名君に違いない。
 日本は、そうした世界がひざまずく神威を放つ伝統を持っているのである。日本は降伏の条件として連合国に「これが飲まれなければ日本は灰に成るまで戦う」とまで大見得を切ってまでなんとか「象徴」としての皇室を残すことができた。
 しかし、現実には総理「大臣」であり要するに日本は未だ英国と同じく緩やかな立憲君主国家としかいいようがない。大統領が居ないのに総理「大臣」しかいないのだし、外交上は国際上天皇陛下を君主として扱っていることからも明らかである。
 明治大帝は紛れも無い名君であった。それは赤子の1人として誠に誇り高いところである。そんな大帝の御日常をしれば、その敬愛はさらに深まるであろう。ぜひ一読をお勧めしたい。併せて大帝の「大帝」たる所以を外国人が語った貴重な書として『明治天皇を語る』(ドナルドキーン著)を読むと万全だろう。
 最近突如、昭和大帝の靖国関連のメモが公表されたが、あれこそ正しく天皇制を廃止し日本を米国と同じ共和国にしようと画策する共和主義者の陰謀の最初の号砲である。これは絶対に防がなければいけない。皇室を失えば、日本は将来必ず「国家」を維持出来なくなる。陛下は今でも毎日国民の安全を祈念しておられるし、日本人が日本人であることの確認の共通項は皇室しかないのである。

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2006/10/02 10:39

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2007/01/01 22:29

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2010/06/30 20:37

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2011/04/21 16:03

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2011/08/27 12:27

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2012/03/05 17:05

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2013/03/20 09:38

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2013/04/13 09:51

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2015/05/29 20:42

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2016/06/21 23:54

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