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浅見の探偵以外の生活や性格を描いてみるヒントとなる作品
2009/12/07 23:13
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅見光彦が活躍するシリーズの一作である。本編は内田が解説欄で自ら述べているように、政治色が多分に含まれた探偵譚である。同じ類に属するものとしては、『贄門島』とさらにさかのぼって『氷雪の殺人』があるという。後者は忘れてしまったが、前者は本編と同様北朝鮮による拉致問題を扱っていた記憶がある。
内田としては、今回はさらに踏み込んで北朝鮮との関係が現実には完全に行き詰まっている点を分析し、新たな提案をしているところが新鮮である。ただし、この提案は現在のわが国では到底受け入れられないもので、多くの国民から袋叩きにあることは間違いなかろう。
本編が上下2編に分割されているほど長編になってしまった原因も、作者内田の見解を浅見光彦を通じて語らせているところにあるとみてよい。どうしても黙ってはいられなかったのであろう。
その内田の提案内容の是非はともかく、小説としては楽しむことができた。中心となる舞台が長崎の軍艦島である。随分昔に閉鎖され、現在は無人島となって荒廃した島である。ここがタイトルの棄霊島である。この島は昭和40年代までは実際に人々が生活をする島であった。それまでは炭鉱の島であったが、閉山とともに遺棄された経緯がある。
これ以外には、長野、静岡の御前崎、岡崎など、今回も浅見は北区西が原の自宅を中心に大活躍であった。とても、サラリーマンではできない時間の使い方を披露して、読者を羨ましがらせているようだ。
長崎では以前にといっても20年以上も前に書かれた『長崎殺人事件』で登場したキャラクターを再登場させたり、そのキャラクターの友人も登場させている。内田はその友人に浅見との結婚を考えさせたり、色々な角度から浅見の行く末を示唆している。いずれにしても小説の中では浅見はモテモテで、そのモテる理由として浅見の性格を細かく説明しているところが傑作である。
せっかくだからこれからもこういうキャラクターを再登場、再再登場させて、名探偵としての浅見の側面だけでなく、一人の青年としての浅見をたっぷりと描いてみてはどうであろうか?
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