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テレビを見て荻上チキさんに興味が沸いて、そして見つけたこの本。
女が人前で読むにはちょっと抵抗あるタイトルでしたが、図書館で借りて読みました。
ワリキリなんて正直都会だけの話だと思ってたんですが、自分の住む街でも密かに行われているということにまず驚き。でもまぁ、田舎って車社会だから山の中にラブホテルあるし、誰にも知られずっていうのには案外やりやすいのかななんて思ったり…
被災地に住む身としては震災以降の話や被災地でのワリキリ市場も興味深かったです。
「売春=お金に困っている」という定義だけで見ていた自分の考えの浅はかさに気付けたし、女性が主役となる社会問題を解決することの困難さなど、色々と考えさせられました。
こちらのレビューでも書かれていますが、
「買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ。」
これには胸を打たれました。
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○ライターの荻上チキ氏の著作。
○”ワリキリ”を行う女性へのインタビューを通じて、なぜワリキリをしているのか、いつからしているのか、など、その理由や背景事情をまとめ、分析したもの。
○女性が”ワリキリ”を行う理由は様々であるが、「社会からの排斥」と「消極的選択(貧困)」というのが、一つの大きなテーマではないかと感じた。
○本書中にも批判的に書かれているが、私も、「好きでやっているんだから」と思っていた面も多いので、その実態を知り、衝撃的であった。絶対的な貧困がこれほど近くにあるということも。
○サイトはもちろんのこと、出会い喫茶という“場”が提供されるということは、その需要も供給もあるということなのだろう。不思議な感じ。
○チキさんの調査・分析が大変リアルで面白い。ぜひ他の作品も読みたい。
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全国の売春をする女性にインタビューし考察を加えたもの。売春をする女性に精神科系の病歴を持つ者が多いこと、出会い喫茶という存在が珍しいものではないことに衝撃を受けた。取材数が多く信頼できる。社会で疎外され、そこにしか生きる道を見出せない女性たちに、私たちの社会は何らかの手立てを考える必要性を感じた。
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出会い喫茶を介した個人売春(ワリキリ)の実態を著者のフィールドワークを通して明らかにした本。
実際に出会い喫茶に来た女性を毎年100人にインタビューをして、彼女たちの属性を調べる。こういった風俗は移り変わりも激しいので貴重な情報だ。インタビューをした女性の中から選んだひとりの女性に女性ならではの調査も依頼した情報も貴重だ。出会い喫茶に来た男性側の情報も集められている。男性と女性が互いに批判している様は悲しく滑稽だ。また、出会い喫茶というシステムを「発明」したという福田氏へのインタビューも印象的だ。
著者は、女性が個人売春を行う構図について、引力と斥力という言葉によって一面的な説明を避けることが必要だと説く。「社会的な引力と社会的な斥力のさまざまな絡み合い、つまりは引っ張る力と斥ける力の関係を見ることはとても重要だ。ワリキリをする女性の多くには、「ワリキリ」に引っ張られるのと同時に、「ワリキリ以外の稼ぎ方」に斥けられたという面があるのだから。」というときに、この「社会的な斥力」を分析することに力を注ぐ。そして同時に、個人に働く力の多様性も認識し、特定の事例の一般化を強く忌避する。そのために著者が取った手法がデータ調査という手法と言えるだろう。
例えば、実際に100人中30人が精神疾患の病歴(実際に通院し、疾患名を付けられた数)があるという。原因と結果がどのように関連しているのかはここからは分からない。その割合が突出して高いのは確かだろう。また、シングルマザーの割合も多い。これらも含めて(精神病の罹患もシングルマザーも直接的に経済問題を発生させる)、個々人の経済問題も厳然としてある。売春の問題は道徳の問題ではなく、貧困問題だと。少なくとも一面においては、特に女性の側から見ては、そう言える。
「n個の社会問題の数だけn個の処方箋、n個の刃所の数だけn個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいのなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ。そうすれば事態は幾分、マシになる。彼女たちの売春、それは僕たちの問題でもあるのだ。」
この本の読み方にもn個の読み方がある。
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だらだらと同じ様な事例紹介が続く。ワリキリというジャンルがあることは知れる。何故ワリキリの世界で生きる人がいるかの理由説明は特に驚きに値せず(精神疾患、育った環境、学歴等)、また社会からワリキリ女性を排除する斥力と彼女らを求める引力が有る限り状況は変わらない、批判するなら、弱者の受け入れ手段を提案すべきというのも至極当然の議論。あまり面白くなかった上に無駄に長かった。雑誌コラムで毎回1ページ位読むのが丁度いいのでは。
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出会い喫茶や出会い系サイトのフィールドワーク。そこに出入りする女性たちの貴重なナラティブであり、直接採集されたデータとしての価値は高い。
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出会い系喫茶や出会い系サイトで売春を行う女性たちへの、主にインタビューによるフィールドワーク。本書のテーマは、「出会い系」という場に彼女たちが吸い寄せられる「引力」と同時に、彼女たちをそこに追いやる「斥力」を見出そうとする試みだ。読んで思うのは、女性は、個人の問題を社会問題へ拡大化することによって解決しようとはせず、もっぱら自分で抱え込むのだな、ということ。たとえば昨今の貧困問題は、男性に起こったことだから初めて社会問題になったのであり、女性の貧困問題はそれまでにもずっと存在していた、という本書の指摘に端的にあらわれている。著者の狙いは、売春が社会問題というのであれば、「売春の当事者でないからといって社会問題の当事者でない」とは言えないというところにある。
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売春が「フツー」になってきた現状に驚く。。
そんだけ病んだ人間も多いってことっすね・・・。
( 一一)
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ワリキリと呼ばれる売春を行う女性たちを追ったルポタージュ。知らなかった世界にいる女性たちの人生の生々しさに圧倒させられる。社会から排斥されてきてしまった女性たちに、残された選択はそう多くはなかった。
でも今回のインタビューに答えられた人は、まだワリキリの最中で、どん底まで落ちている人たちではないのではないか。年齢がいって、もしくは精神的にやられて、もしくは病気になって、ワリキリさえできなくなった女性たちは案外と多いのではないか。今後はそういった女性たちもぜひとも追ってほしい。
ただ、ワリキリをしている若い女性たちの問題を丁寧に浮き彫りにした素晴らしいルポだと思う。
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著者自らが、出会い喫茶や出会い系サイトを通して、100人を超える"ワリキリ”女性への取材を基に構成されている。個人売春の実態を「統計的」と言える量まで収集・分析した筆者の取材力が凄い。しかも個々人の人格まで類推できる形で。
本調査から浮かび上がってきたものは貧困や虐待、孤独といった世代間・個人内での”負の連鎖”だ。売春という金銭獲得手段が目的になり目的が必然になり、自分を傷つけていくスパイラルからますます抜け出せなくなってしまっている。
「ワリキリ」とは買う側の視点であり、彼女たち側の視点では「アキラメ」や「オリアイ」と言ったほうが正しいかもしれない。インタビューで何人かが語るホストクラブに通う理由が、ホストのためではなくそこに居場所があるから、という発言は何とも物悲しく彼女たちの精神状態を端的に表しているように感じる。
”ワリキリ”は慢性的貧困や親の虐待など根深い社会問題を多分に含んでおり、解決まで一筋縄ではいかない問題ではあるが、本書はまず実態を知るうえでの道しるべとなりえよう。
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2012年刊。出会い系サイトから判明するデータの分析から出発し、同サイトや出会い系喫茶に集う女性に試みたインタビューを交え実情を検証。貧困、格差、社会的セーフティーネットの不在、シングルマザー、DV、児童虐待とその世代間連鎖、そしてその複合が背景にある点は、AV女優、古典的風俗系と同様か。ただ、一部に存在する、非貧困かつ格差・落差型成り上がり系女性が異質かも。自由が効く分、きちんとした自己管理が必要だから、そのような成り上がり系女性の受け皿となっているというが、自由は堕落と紙一重かも、との疑問もある。
他方、類書には珍しく男性側の意向もわずかだが言及。また、出会い系喫茶の創発者の意思にも言及している。売春する側のリサーチは興味本位のものも含め、それなりに出ているが、買春側のそれは皆無に等しい。もう買春側のリサーチ・統計データも必要な時期に来ていると思われる。性衝動が抑制できないといったステレオタイプ的要因が、その一つだけで現状が生じているというような単純な発想では、問題の縮減・消滅には到らないだろう。
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社会調査のような雰囲気で、同様のテーマを扱っている鈴木大介氏との風合いの違いが気になっていた。が、あとがきを読んで納得。
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調査しにくい世界について、時間とお金を傾けて行った調査報告。数の持つ説得力は、聞き書きそのものもさることながら生々しいインパクトがあって素晴らしい。別に難しい分析など挟まずとも、数にすることで得られる説得力はあるし、それはとても大事。