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「重く」はないのだけれど、彼女たちと自分に共通点があるからか、ひしひしとくるものがあってなかなか読み終わらない。
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DVから脱出するため、子どもの養育費を貯めるため、彼氏の借金を肩代わりするため、寝る場所を確保するため、欲しいものを買うため…、売春(ワリキリというらしい)という手段が必然的な手段になってしまっている状況の一端を実際にワリキリをしている女性への聞き取りから伝えようとしている。
これは、途上国での出来事ではなく、この日本で静かに日常的風景になりつつあるのだろうか…
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「ワリキリ」という行為に、著者自身が100人を超えるインタビュー取材を敢行し切り込む。
個人の道徳、倫理観として捉えられがちな問題を、真摯で穏やかな対話と様々なデータを元に読み解いていく。
印象として、女性個々の生活歴、現状に違いはあるが共通項として精神疾患
を持ち合わせている女性が多い。
しかし、その原因は単なる個人的な要因以上に、周囲の無理解や不当な悪意、定まらない社会構造など、環境による要因が大きいと思わされる。
不安定な社会情勢の中で、自分とは違う世界の出来事では無いと認識させてくれる良書。
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宮台真司なんかが盛り上げてしまった「性的自己決定」vs「女性に対する暴力」論からここ20年、売春に関する議論は、ひどく不毛な状況が続いてきた。「被害者」への同情論か、フェミニズムをまったく理解してない風俗ライターばっかりの中で、実態調査にもとづいて現実的提言をおこなう、たいへんにまっとうな本。はっきりいって、自分の業績のために体裁をととのえ適当な分析を披露してみせるそこらの学者の本よりは、よっぽど役に立ちます。
出会い喫茶やテレクラを利用する100人以上の「ワリキリ」女性とのインタビュー調査からうかびあがってくるのは、貧困、精神疾患、暴力被害、自己尊重感や安定感の欠如・・・正直、読んでいて辛くなることもあった。
しかし著者は、売春を彼女たちの「心の問題」や社会の病理に還元したり、救済されるべき被害者扱いすることを慎重に避け、かわりに、いわゆるまっとうな社会の側が彼女たちを排斥する要因と、売春の世界が彼女たちをひきこむ要因とを注意深くとりだし、かつ、そうした個々の要因のくみあわせのなかで選択をおこなう女性たちの主体性を決して軽視しない。
売春という「社会問題」に大ナタをふるうのでなく、「n個の排除の数だけ、n個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめさせたいなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ」という提言は、まったく、ほんとに、まっとうだ。売買春を一発で解決する魔法の弾丸なんか存在しない。ていねいに、自分たちの問題としてかんがえていくしかないのだ。
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これは、現代の日本社会にとってかなり有意義な本やと思う。
荻上チキさんが数年前から全国の売春、「ワリキリ」をおこなっている女性に取材し、その内容をまとめた本。
まず、内容が厚くて、データ量が半端じゃない。筆者の信念と覚悟がうかがえる。
往々にして批判されがちな売春をする女性。しかし彼女たちには彼女たちの論理がある。
それは「今よりマシ」になるための行いであるから、もっとよいかたちで、「もっとマシ」になるための社会を提示することが大切である。
売春という引力だけではなく、そこには社会からの斥力も同時に働いているのではないか、と筆者は問いかける。
そういうのを踏まえて、このタイトルも秀逸です。社会からの斥力、出会い系の引力。荻上さん、好きになりました。
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学術書ではないのでしょうがないが、主観的な文章で読みにくかった。解説なしに多用される様々な用語のせいでもあるかもしれない。しかし、重要な問題提起がたくさんあった。
・社会からの排除とアウトサイドの包摂
・売春という行為こそが、彼女たちに残された最後の「自立」手段であるということ
・湯浅誠さんの指摘する五重の排除に加えて、「ジェンダーによる排除(一般的な平均所得でみても女性の方が低い、路上生活をするには男性以上の危険をともなう等)」、「社会問題からの排除(現在の貧困問題は「男性が貧困化して初めて慌てだした」という側面があり、女性の問題は長らく放置されてきた)」という「二重の追い討打ち」
etc...
なにより、多くの女性へのインタビューによって、ワリキリを行う女性の事情が、本当に多種多様であることを明かしたことによって、「売春婦には道徳が欠如している」という議論の空虚さ、「自分で選んでやっている」と個人の問題として切り捨ててしまうことの罪を示したことが重要だと思う。
彼女たちの売春、それは私たちの社会の問題。
考えさせられた一冊だった。
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昔、好きだった人が簡単に自分の身体を売っていることを知って、
その時は全く彼女の考えというものが理解できなかった。
その人とはそれ以来疎遠になって、
今では連絡を取り合うこともないけれど、
未だに頭の片隅にこびり付いて離れない記憶を少しでも整理できればと思い、
彼女のことを理解しようと思ってこの本を手に取りました。
売春を取り巻く現状は様々だけど、
貧困からしょうがなくという例を見る度に
他人事とは思えず、
何か自分の身近に起こっていることとして認識できない、
あくまでこれは日本の何処かにいる女性の話であり、これから自分が生きていく上では出会うことや関わる事はないだろうと、
半ば強引に目を背けました。
今まで僕らが教わってきた道徳という絵空事のせいで、
こんな現実も直視できない自分が不安です、、
なんだか上手く言葉にできませんが、
売春を知る入り口には最適だと思います。
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そうそう「個人問題を社会問題する力」が大切なのに「社会問題を個人問題化」する力がここずーっとこの国は強いのだ。
チキさんの湛然な聞き取りから彼女たちの顔が見えたり、見えなかったりした。若い男性っていうポディディションだからこその記録というのはあるだろうな。
でもどおしても自分に引き付けて考えてしまうことだから後でまたゆっくり書きます。
てか男性より女性の貧困のほうがずっと昔から大変でそんなこととっくに分かってたんだけど、この本を読んで改めてそうだよってがつんってされた。
なのにおかしい。見えないから。ホームレスさんとかある意味分かりやすく見えるし、日常の風景に溶け込んでしまってる男性の貧困。でも女性は「女性の貧困は深刻だ」と言われて、言われ続けているけれど、二の次でいやもっと後ろかもなんだけど、最後には女性は体を売ればいいからなーとか言われる始末。
おいおいおい。
あと割と「気持ち悪い」、「つらい」って言ってる割り切り女子が多いのに驚いた。
臭いのとかはもちろん嫌なんだけど、気持ちいいってのは別に好きは関係ない。向こうが穴と思って利用しているのと同じで、棒。まーバイブとかと変わんないと思う。
男の性欲は穴を求めるもの、恋愛感情とは違うところで本能なんだから仕方ないって開き直ってそれが通念になってるけど、女性はまだまだ開き直りきれない。
開き直ったやつらからいやいやいやと責めらめる。
買う側の男たちがワリキリの彼女たちにそういうことを言ってくるのが普通っていうこの状況のほうが冗談としか思えない。
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風俗ではない,個人で行なう現代日本の売春の実態。よく調べて書かれてる。デカフェや出会い系サイトから多くの当事者女性に取材して,売る側の事情,買う側の論理,それを生み出す社会の構図を考察。全く知らない世界だけれど,その一端が垣間見えた気がした。
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ここでは出会い系サイトや出会い喫茶などのいわゆる『出会い系メディア』を用いて組織に所属するのではなく、個人で「ワリキリ」と呼ばれる行為(はっきりいえば売春)をする女性達の言葉やデータを記録した本です。
現在では売春のことを『ワリキリ』というのだそうですね。 ここでは出会い系サイトや出会い喫茶などのいわゆる出会い系メディアを通じて“ワリキリ"を行う女性100人超に筆者が体当たりでインタビューを敢行し、一冊にまとめるというなんとも根気の要る作業を行っております。
ここに記されている彼女達の独白に耳を傾けるということは、そのまま現在の社会が一体どのような状況にあるかということを確認する作業のように思われて、今の社会はここまで『壊れて』いるのか…という事実を突きつけられたような気がして、読み終えた後にはなんとも暗澹たる気持ちになってしまいました。
戦後に春を鬻ぐ女性は社会の問題と位置づけられ、政治的にも一応の解決が見られたとされ、それでも行う場合は個人の自由意志、もしくは「心の問題」と片付けられてきたのだそうです。しかし。彼女達一人ひとりの独白から浮かび上がってくるものはDV、精神疾患、家庭環境、雇用不足、男女格差、借金…etcというあまりにも昔から変わらない、そして現代では『なかったこと』にされている問題のような気がしてなりませんでした。
その隙間を埋めるため、もしくは居場所を求めるため彼女達いわく『今よりマシになるため』の手段を求めて、出会い系メディアを通じて春を鬻ぐ女性たちの独白を狂気に近いような執念で拾い集めていく筆者。それは東京とないだけではなく、地方にまで足を運びます。ある女性は精神的な原因で昼職につけなかったり、またある女性は虐待やDVから逃れるため。またある女性は離婚して、子供を抱えたシングルマザーとして生きていくためと、「ワリキリ」を行う理由は十人十色でしたが、そのどれもが非常に重い告白で、読んでいてかなり気落ちするものも多かったです。
それに加えて、あの「3・11」が起こり、彼女達を取り巻く状況もその影響を大きく受けたりするのです。そんな中でも僕が一番面白いと思ったのは後半に出てくるナナという女性で、彼女は抜群のコミュニケーション能力を持って、筆者のアシスタント的な役割を果たすようになります。彼女の協力のお陰で、様々なデータが集まり、こうして世に問うことが出来たのだそうで、これについては及ばずながら、僕もこの場を借りてお礼を述べさせていただきたいです。彼女は本命の彼氏との『妊娠』をきっかけに『卒業』していくのですが、これは例外といっていいのかもしれません。
さらに、『買う側の論理』や大阪で『出会い喫茶のルーツ』といえる店の創業者のインタビューが続くのですが、どっちも面白く、同時にまた思い内容で、僕の心に鉛のように思い現実を突きつけてくれるのでした。ここに掲載されている彼女達の独白及び詳細なデータベースは筆者が文字通り『足で稼いだ』貴重な情報です。出来ればこの本が広く読まれ、光が当たらない側面を照らしてくれることを切に願っております。
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読んでいて非常に辛い内容。
ここまでの調査を行った著者に敬服する。
貧困や精神疾患などによって、ワリキリという名の売春をしなければならない女性たちがいる。この本はそんな女性たちへのインタビューをまとめたものである。
ただ、留意が必要なのは、ワリキリを行う女性たちは、必ずしも困窮している人ではないとも著者が記していることである。実際に、それ以外の女性のインタビューも本文中に登場する。
一方で、ワリキリに頼らざるをえない女性たちも相当数存在する。
そんな状況は過去のものだという言説は全くの間違いであることを本書は指摘する。
本書の中で印象的だったのは、女性たちのエピソードもさることながら、出会い喫茶の創設者へのインタビューである。どこまで本音を話しているのかは疑う必要があるであろうが、この創設者は出会い喫茶を行き場がなくなった人々の生きていく場であると答えている。本文中にもそれを示すように必要悪という言葉が何度も登場する。
合法な世界で生きていくことが困難になった人々は、グレーな世界に足を踏み入れる。そのグレーな世界がつぶされれば、また別のグレーな世界が生まれ、そこに人が集まる。
そのグレーな世界を批判するのであれば、人々がそこに足を踏み入れなくてもいいような社会設計をしなければならない。それが著者の言う、「売春男に彼女たちを抱かせることをやめたいなら、社会が彼女たちを抱きしめてやれ」(p313)という言葉である。
余談だが、この本と『AV女優の社会学』との関係が気になった。『AV女優の社会学』では、女性たちがAV女優になる理由は非常にありふれた理由であり、著者はその点に関してはあまり関心がないことを記している。
そのありふれた理由がどういったものだったのかということが気になった。
それははたしてこの本(『彼女たちの売春』)で書かれたような理由と強い相関性があるのか、はたまたそれは単なるこちらの勝手な想像なのか。そういったテーマで書かれた本があれば読んでみたい。
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出会い喫茶をベースにしたワリキリ(売春)のインタビューとデータ。社会からの斥力、出会い系の引力、というサブタイトルがついているが、どうも引力のほうが強いように感じる。ただ、社会からの斥力という言葉にはドキッとする何かがあり、それを確かめるように読む、のだけど、カジュアルな下半身の話にもみ消されてしまうかのようで…いろんな「彼女たち」が出てくる。同情したくなる人やら、怒りたくなるような人やら。読み手の修行が足りませんな、こりゃ。
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出会い喫茶や出会い系サイトを利用しての非管理買春である「ワリキリ」を行う女性たちについてのフィールドワークをまとめた本
虐待やネグレクト、貧困、DV、精神疾患や依存症、身体障害、母子家庭・・・読んでいて胸が痛む境遇がほとんどで,どうしたらいいのかと考え込まざるを得ない。
というわけで、非常に有益な本なのだが、欠点が2つ
1 文章。冷静な描写や分析が続くのに、各章の最後が突如ポエム的になるので面食らった。
2 専門用語(?)の説明がなくて不親切。「セクキャバ」「バンギャ」等の用語にについて、巻末に五十音順の解説がほしかった。
特に印象に残った点
・ 最近の「貧困問題」は男性も貧困に陥ったので慌てて騒ぎ出した側面がある、との指摘
・ 「ワリキリ」は「風俗」等に比べて搾取が少ない、という事実
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売春を貧困の文脈でちゃんと捉えるのは大事ですね。あまりに、「心の闇」みたいなぼやっとした感じで語られがちなことなので。
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彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力
本書は、ワリキリ業界 (?) についてのルポ。数多くのワリキリを行っている女性にインタビューを試みて、それをまとめている訳だが、"社会からの斥力、出会い系の引力" とあるように、斥力と引力の結果として現状があると分析している。これが重要。
# 斥力は、斥けようとする力のこと。排斥とか。
引力側 (要するに "業界") をいくら規制しても、斥力側を解決しなければ、問題は解決しない。斥力がある以上、異なる引力に流れるだけに過ぎないって訳だ。そりゃそうだ。生活してゆくためには、なんらかの方法で収入を得なければならないのだから。
ちょうどタイミング良く、 AV に出演していた女性教諭のニュースが流れてきたが、彼女が解雇されれば収入源を奪われる訳で、そうなれば "社会からの斥力" ということで、引力のあるところへ流れてゆく結果が待っている。霞を食べて生きていけるハズなどないのだ。女性だけの職場など、差別なく受け入れてくれる社会があればいいのだが…。
本書に登場する女性の中には、割のいい収入源として自由意志で選択している女性もいることはいる。需要があって供給があるので、ワリキリが悪いことだとはまったく思わないので、そこはいいとして…。
現実は、他の方法で稼げないために妥協している人が多数を占めているようだ。望まないのなら、なんとか社会の手助けはできないものか…と思うのだが…。ま、簡単な話ではないね…。