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立て続けに読んだ北欧ミステリーも家庭崩壊が著しく、しかも何とも共感しにくい描かれ方ばかり(同じような崩壊状況とその理由)。でも、この家族の物語は、単純そうでいて複雑な関係がかなり綿密に描かれていて読み応えがある。途中で挫折しなければ…。
長いうえにかなりの忍耐を必要とした。『ラストチャイルド』も忍耐を要したけど、本書は主人公の短気ぶりにも苛立たされる。5年前の事件があるからこその同情や共感ではなく、5年前の事件があるからこそ、もっと上手く立ち回ればいいのに、と何度も思わされた。そんな調子で長々と続くものだから、途中がちょっと辛い。おまけに途中があれだけ長いのに、最後がかなりあっさりしていて、主人公の社会的な名誉回復もなされぬまま、真犯人と共犯者の立場も守られたままってどうなの?と正直不満。そのうやむやさが、新たな関係の破綻を招いているのに(新たな事件にさえなりかねない)。
いつの時代を想定しているのか定かではないが、5年前の雑な捜査(目撃証言以外殆ど物的証拠なし)に戦後すぐ?なんて思ったら、驚いたことに携帯電話が出てきた。大都市以外の州は、あんな杜撰な捜査をして起訴まで持ち込むのかとびっくり。長い割には5年前の事件の顛末があまり語られていないが、街の大半の人達に疑われ憎まれているのに、なぜ裁判で無罪になったんだろう?
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どうしてもミリアムに同情しちゃう。目の前で愛する人が他の人を愛しているのを見せつけられるのって拷問だ。恋人より父親の方が傷つけていたんだろう。ジャニスが偽証したのって、ちょっと考えれば、愛する者を守るためってのは気づけた筈。アダムも父親もその可能性考えなかったのかな。嘘を吐きながら、アダムにあんな態度を取れるなんて、怖い女だ、ジャニスは。
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アダム・チェイスは殺人の容疑で拘留されるが、結果として証拠不十分として無実となる。が、狭いコミュニティの中で立場を回復する事は叶わず、失意のうちにニューヨークで新たな生活を送っていた。
それから5年後故郷に居る親友のダニーから連絡有り、苦境を救うために帰って来て欲しいと言うのだった。その場では断るものの、アダムの頭の中には故郷の事で一杯になる。
故郷に戻った彼を待っていたのは、5年前の殺人の現場を見たと嘘の証言をした継母、勘当し和解されていない父、彼に置き去りにされ、警官の仕事に没頭する元恋人のロビン、妹のように大事にしてきた隣家の少女グレイスへの犯人不明の暴行、そして新たな殺人・・・・。
複雑に絡み合う「血」の絆と淀んだ時間の中にどんな真実を見出せばいいのか。果たして真実など存在するのか・・・・。
何しろ濃い濃い。僕がアダムなら向う30年は連絡もせず音信不通になる事必至だと思う。
血縁と顔見知りだけで構成されている人間関係は、いい関係でいられる時には比べる事も出来ないくらいのパワーになるけれども、一度こじれると何十年にも渡って禍根を残すことになる。
アダムが幼い頃、彼の目の前で拳銃自殺した最愛の母、彼にとってはそれ以降とそれ以前では人生の意味合いが全く違っている。父と息子の禍根はここに端を発しているが。その原因はそれ以前から・・・これ以上は言えない・・・。
さて、この本の骨子はまさに「血」
綿々と受け継がれていた歴史としての「血」
象徴として登場する川。それは時間の流れと共に流れる血液の流れではないだろうか。
僕は前回読んだ「ラストチャイルド」の個人への感情移入に対してこの本では、特にこれと言って感情移入をすることなく読んだ。
何故かと考えたときにこの主人公「アダム」には顔が無いと感じた。憤り、怒り、悲しみ、愛し、色々な感情が渦巻いていたが、案外とあっさりとしたキャラクター作りだと思った。
これは僕独自の解釈だけれども、作者の意図として主人公は人物ではなく、この家族およびコミュニティーの「血」の歴史ではなかったのか、と感じた。
むしろ父や、グレイスの育ての父ドルフにこそ感情移入しやすい位だった。彼らは前述した「血」の体現者だから。
アダムはこの滔々と流れる歴史の語り部なのではないだろうかと感じた。
とても力作で筆圧を感じる作品で、読むに足る本だと思う。
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マニラ駐在時に、日本人会図書館で買った古本。(約30円でした)
トラブルに巻き込まれ、故郷を追われるように去った主人公が、親友からの連絡をきっかけに帰郷する。故郷はトラブルに満ち溢れ、巻き起こる事件。家族、友人、恋人、そして故郷を考えさせるミステリー。
いや、面白い。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作だそうです。トクした気分。
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5年前の冤罪で始まるミステリー、と思いきや
実は何年にも渡る、家族と土地の歴史を描いた重い作品
過酷な運命に翻弄された主人公と、不幸な秘密を抱え続ける彼の家族。
私はどの登場人物にも感情移入できなかったのだが、読んでいてとてもつらい。
特に父と息子の関係が悲しく、救いがない。
切ない映画を見た後のような気分になった。
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親友のダニーからの電話でアダム・チェイスは故郷に帰ることにした。五年前、妹の誕生パーティの夜、男が殺され、継母によってアダムの仕業だと証言された。判決は無罪だったが、父は再婚相手の言葉を信じ、アダムに家を出るよう命じた。五年ぶりに帰った故郷は原発誘致の騒ぎの渦中にあった。賛成派と反対派とは敵対し、農場を売ろうとしないアダムの父は賛成派の恨みを買っていた。ダニーのモーテルを訪ねたアダムは、誘致を迫るダニーの父にからまれ、大けがを負う。
町中から総スカンにあっている男が久しぶりに帰郷すると、待っていたのは電話をしてきた親友の死体。ただ一人無罪を信じてくれた昔の恋人ロビンは刑事に昇進していた。そんな時、妹のようにかわいがっていたグレイスがアダムとの再会後、何者かによって暴行される。事件を担当する刑事は、当然のようにアダムを疑い、その元恋人ロビンと対立する。
最新作『終わりなき道』と限りなく似た構図だ。もちろん、こちらの方がもとで、新作がその焼き直し。それにしてもよく似たシチュエーションを何度も使うものだ。アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞したこの作品のファンなら、新作を読んで、既視感を抱くにちがいない。結果的には、よく似た設定ながら『川は静かに流れ』の方がすぐれている。家族の歴史に隠された秘密に触れた伏線が、ストーリー展開の中で自然に回収されていて無理がない。
息子の自分より、再婚した妻を信用されたら、実の息子としてはたまったもんじゃない。ただ、それより前に息子と父は問題を抱えていた。アダムが五歳の時、母は自殺をしている。しかも、コーヒーを運んで行った息子がドアを開けると同時に自分の頭に向けた銃の弾きがねを引いたのだ。良い子だったアダムはそれ以後変わった。ダニーとつるんで喧嘩三昧に明け暮れ、成績は下落。父は息子を見放していた。
継母のジャニスにはジェイミーとミリアムという双子の連れ子がおり、母を忘れられないアダムとの間はうまくいっていなかった。一方、家の近くに父の右腕を務めるドルフが孫のグレイスと住んでいた。グレイスはアダムを慕っていたが、五年前に黙って家を出たことを今でも怒っている。二十歳になったグレイスは今ではローワン郡一の美人に育ち、男たちの注目を集めていた。
ダニーが自分を呼び戻した理由は何だったのか。なぜ殺されねばならなかったのか。ダニーの死は三週間前にさかのぼるが、その当時、アダムは仕事をやめ家に引き籠もっていてアリバイがない。アダムの視点で一貫しているので、読者は無実を知っているだけにやきもきするが、刑事でないアダムには捜査権はないので、場当たり式に事件を追うしかない。少しずつ隠されてい事情が明らかになり、アダムが疑われた殺人事件とダニーを殺害した犯人にたどり着く。派手などんでん返しはないが、犯罪に至る動機の説明は納得がいく。
作者自身もいうように、これはミステリであるとともに家族の物語である。問題を含んだ家族の在り方に、歪みが生じ、ひいては人の命にかかわる事件へと発展してゆく。すべては過去に起因していて、時は何の解決にもならない。南部という国柄のせいか家族というものに対する比重のかけ方がかなり重い。これで、ジョン・ハートは二作目だが、個人的に相性が悪いのか、今一つ好印象が持てない。それでいて、けっこう読まされるから力量は感じている。あと一作読んでみて評価を定めたい。
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前作同様、家族が中心に進むお話。
テンポも展開もよく一気に読んだけれども、事件そのものがすっきり解決するわけでなく、家族や人間の赦しというものがメインにきている気がする。
アダムもロビンも心が広過ぎ…。
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主人公アダムがヘタレすぎる。冤罪(裁判では無罪だったけど)を晴らすこともせず、父親に勘当されてN.Yに行く辺りも読んでいて、モヤモヤした 男やったら戦え!と言ってやりたい
最後、真相を知った父親の行動も理解しがたいし、嫌な終わり方だった
登場人物(特にアダム)が悪すぎるし、中身の割には長かった
「ラスト・チャイルド」はまぁまあ良かったから、期待したけど残念だ。
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良くも悪くも、ザ・アメリカ小説と云う感じ。
主人公=ヒーロー。モテる。強い。色々持っている。そして正義の人。悪意無く事件に巻き込まれ(大体容疑者)身の潔白を証明する為に、そして愛する人と家族を救う為に戦う。
500頁超の長編ですので、こういうのが苦手だけど苦行したいという方にはうってつけ。
実はワタシには最後まで犯人が解らなかったので、その為にダラダラ読み続けてしまった…。
うん、でも面白かったです。最後の一文もとても印象的でした。前作も読んでみようかな。
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2010年エドガー賞『ラストチャイルド』を先に読んで
2008年エドガー賞『川は静かに流れ』も読んでみた。
長かった割にはって感じ
『ラストチャイルド』の方が好み
解説で北上次郎さんが
ダニーとアダムの友情を描く小説であり、ロビンとの愛を描く小説でもあるが、同時に親と子の、兄弟の絆を哀しくやるせなく、そして鮮やかに描いた物語であると
友情、愛もそんなに感じなかったなぁ
最後はなんか完全家庭崩壊みたいな
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「キングの死」と同じ作者だったので。
読み始めてすぐ、
また情ない男の話がうだうだ続くのか、と心配になった。
殺人の容疑者、父親との葛藤、守るべき妹、よく似ている。
でも、「キングの死」とは違って、
早めに事態が動き出して新しい死体が見つかり、
犯人探しへと進む主人公。
主人公が故郷を追われ、いや逃げだした原因である過去の殺人も
解決して良かった。
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さすがジョン・ハート。期待通りの人間小説、家族小説だった。この作品もやっぱりブルース・スプリングスティーンがBGMにぴったりくる。アメリカ白人文化の根底に澱む灰汁のようなものを、少し甘く切なさと苦さ多めに味付けした傑作。
【すごいネタばらしです注意】
主人公目線で物語が進むので、感情移入は主人公にしてしまうのだが、俺らの歳になると気になるのが、主人公の父親。腕っぷしが強くて、経営者としてそれなりに辣腕で、家族と友情を大切にするガンコ者…。でもなぁ、この男とてつもなく駄目なおっさんなんよなぁ。ミステリーとしての犯人は違うのだが、ようはこのおっさんが、もうちょっとシャンとしてたら、すべての事件は起こってないし、いざこざももうちょっと違う形になってたはずで…。
でも、この駄目な父親がすごく良く分かる、主人公以上に感情移入できてしまう。「うわっ情けな、うわっヒデー男…でも、そうする気持ちは分かるで」…俺も駄目なおっさんである以上、駄目なおっさんにシンパシー抱いてしまうのである。
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あ~、やっぱりジェームズ・ディーンだ~。
頭の中で、主人公アダムが「エデンの東」「ジャイアント」などのジェームズ・ディーンとして映像化されてしまう。
神の存在を問うような運命、大土地所有に絡む名家と住民の根暗な物語は、アメリカ人がホント好きそう。
家族への疑心暗鬼と、青春の苛立ち、煮え切らない、カッコつけ
金持ちの坊ちゃんの中途半端な自暴自棄
人の話を聞かない、人にうまく伝えられない頑固で弱い父
ネガティブで暗い後妻とその子供たち
金と名誉とやっかみの入り混じる住民たち
川を題名とした小説はどうしてこうも暗いのか
「ミスティックリバー」デニス・ルヘイン
「クリムゾン・リバー」ジャン・クリフトフ・グランデ
「深い河」遠藤周作
後半は打って変わってアダムが探偵役として活躍するが、相変わらず危なっかしい。
不必要とも思えてしまうほど込み入った人間関係が徐々に明らかになっていき、最後の最後に悲劇とともにくっつく。
アダムが最初から知ってることを刑事に話していたら……物語にならないか。
一人称の小説たけど、ちょっと主人公の言ってること疑ってたし。
やっぱり、この人の小説は、最後まで読んで初めて報われるな~。
……気合、要るよ。
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アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『川は静かに流れ(原題:Down River)』を読みました。
「エラリー・クイーン」、「ヘンリー・スレッサー」の作品に続き、アメリカのミステリ作品です… 「ジョン・ハート」の作品は3年近く前に読んだ『キングの死』以来ですね。
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「僕という人間を形作った出来事はすべてその川の近くで起こった。
川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。
父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われた「アダム」。
苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
解説:「北上次郎」。
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2007年(平成19年)に発表された「ジョン・ハート」の第2作で、同年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。
アメリカ・ノースカロライナ州… 「アダム・チェイス」は5年ぶりに故郷に戻ってきた、、、
「アダム」が故郷から出た理由は、5年前に発生した殺人事件の犯人として告訴され裁判の結果無罪(濡衣だが)となったものの、目撃証言をしたのが自分の継母「ジャニス」であり、継母の証言を信じた父親「ジェイコブ」との間にも溝ができたことが原因だった… 親友「ダニー・フェイス」からの助けを乞う電話で故郷に帰るが、原子力発電所の建設計画から土地が高騰し、建設推進派と反対派で町は緊迫している。
大農園主である「アダム」の父「ジェイコブ」は土地を売ろうとしないため様々な嫌がらせや事件が起こっていた… そんな中、ついに殺人事件が、、、
父親・継母・双子の義弟妹「ジェイミー」と「ミリアム」、兄妹同然に育った「グレイス」、5年前故郷を去る時に分かれた元恋人「ロビン・アレグザンダー」、親友「ダニー」… 犯人は誰なのか、警察の捜査とは別に「アダム」は動く。
しかし、事件は意外な方向に展開する… 愛情、友情、信頼、裏切り、嘘、憎しみ、信頼、赦し、、、
5年の歳月を経て次々と直面する複雑な人間関係… 「アダム」は事件を解決に導くことはできるのか、そして家族を守ることはできるのか……。
殺人事件の謎を追うミステリなのですが… 事件とあわせて「グレイス」の出生の謎も解きながら、家族の在り方や絆を問いかけてくるヒューマンドラマでもありましたね、、、
結局、血を分けた者同士しか理解し合えないのかなぁ… 考えさせられましたね。
主人公の性格にはやや感情移入し難い部分もありましたが… 翻訳も良いのか、600ページ近いボリュームにしては読みやすかったです。
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積読になってて読むの億劫になってたが、とりあえず開いてみたらまぁ面白いこと!ミステリー要素多くて良かったです。
モテる主人公ってのもプラス。