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渾身のルポルタージュ
2002/07/31 09:45
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投稿者:奥原 朝之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
メキシコ、新彊ウイグル自治区、クルドなどこれまでに著者の作品で描かれたその土地その土地を取材した記録である。
そもそも船戸与一氏の視点は、いわゆる弱者の視点である。そういう立場からこれまでの作品が出来上がっており、最終的には強大な力を持った権力者潰されてしまうもの悲しさが描かれている。
おそらく著者はそういう国家体制を告発したいわけではないのだろう。ただ、今現在の実体をえぐり出し、そこにスポットライトを当て、弱者側の動きを歴史に埋もれさせないようにしたいだけなのではないだろうか。砂のクロニクル然り、蝦夷地別件然りである。
本書は精力的に取材したその過程を克明に記した著者渾身のルポルタージュである。
船戸与一作品のお好きな方にはお勧めである。
船戸与一の弱者の視点は叛アメリカ史(豊浦志朗 名義)が出発点ではないかと思うので、この本も併せてお薦めする。
取材記
2002/05/13 11:57
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投稿者:LR45 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国家による犯罪をテーマにした取材記録。
テロやゲリラなど、国家と闘うマイノリティを題材にした作品が多い船戸与一の取材録をもとにしたと思われる、ノンフィクション作品である。
小説ではないがノンフィクションにしては読みやすい。
クルド人や中国の少数民族など、船戸与一の作品で舞台になった土地を中心にノンフィクションで語られる。
取材の濃厚さに定評のある船戸与一の作品なので、内容に厚みがあるように思える。
アラビア語とトルコ語の違いが分からないと
2023/05/02 23:58
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本で著者がダライ・ラマにインタビューした時に「わたしに言わせれば、ゲリラ活動はただの戯言だ。問題外だよ。意味のない自殺行為だし、あまりにも愚かしい命の無駄遣いだから」と無責任な発言を引き出した時に「正直に言おう。わたしはこの発言に一瞬、脳裏が真っ白になるのを感じた」と思ったそうだ。随分とダライ・ラマに対して否定的だと思ったが、結果的に自分自身の孫の未来の妻姉妹を愚弄する発言をも呈した真宗大谷派の同朋会運動の創始者やカトリックに帰依したユダヤ人を見捨てた「ローマ教皇ピウス12世」と並んで現実のダライ・ラマがトンデモない人物(暗殺教団という前例はあるにしろ、自殺を禁じる教義に反するはずの「殉教作戦」という名の自爆テロを引き起こす邪教徒は言うまでもなく)だと知ってしまうと、ここには書かれていないが、戒律に反して堕地獄の境地になる事を知った上で還俗してゲリラになった僧侶など本当はどうでもいいのだろう。ここにあるように1959年にラサからインドに亡命した時に身を持って人民解放軍に立ち向かった僧侶がいるだろうに。「チベットの英知」の体現者として取り上げられる事が多い14世の「本音」を引き出した事は重要だろう。
これはいいとしても、著者はムスタファ・ケマルによってトルコ語が「アラブ文字を廃止してローマ字を採用する文字改革の実施。印刷物やあらゆる標識がローマ字化されたのだ。これは十数年後のトルコの若者たちがコーランを読めなくなることを意味した」と書いている。つまり著者はクルアーンに記されている言葉がアラビア語であってトルコ語ではないのを知らないのではないのか?アラビア文字が読める人ならばアラビア文字で記されていたら、アラビア語だろうとトルコ語だろうとクルド語だろうと他の言語だろうと「読める」とでも思っているのか?ローマ字で書いてあったら英語だろうとトルコ語だろうと「読める」というのを同じだ。続いて書いているようにムスタファ・ケマルは「アラブ語やペルシア語に由来する外来語を追放し、純粋トルコ語使用運動が開始された」から、オスマン朝時代のオスマン語と共和制になってからのトルコ語では断絶があるのを見落としているし。幾らムスタファ・ケマルをこき下ろしたいからって無責任な話だ。
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