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みんなのレビュー7件

みんなの評価3.8

評価内訳

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7 件中 1 件~ 7 件を表示

帝王カラヤンの音楽ビジネス盛衰史

2008/06/08 21:15

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 カラヤンが亡くなってからすでに20年近くが経過した。私自身はカラヤンの演奏を生で聴いたことはない。何しろ演奏会の値段が高過ぎたからである。しかし憧れの的であることは変わりなかった。
 カラヤンといえばベルリン・フィルハーモニーである。昔はこのように指揮者がオーケストラと継続的な関係を持つことが普通であった。しかし、その少し前はベルリン・フィルだけではなかったのだ。ウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めていたし、ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団とも深い絆で結ばれていた。
 著者がカラヤン帝国と呼ぶのはこうした時代のことである。フルトヴェングラー、チェリビダッケ、クレンペラー、クナッパーツブッシュ。これらの指揮者は主に戦後に活躍した巨匠たちであるが、私にとっても伝説の指揮者である。チェリビダッケは読響を振りにきた1977年に本番は勿論、リハーサルまで聞いたことがあるが、指揮棒から出てきた音楽はやはり伝説的な響きであった。
 カラヤンはオーケストラなどの演奏団体、レコード会社、音楽祭をうまく手玉にとって交渉を重ね、その地位を拡大していった。当初は巨匠たち、とりわけフルトヴェングラーに睨まれていたが、それをものともせずに立ち向かっていく。チェリビダッケの後任に選ばれたのも政治手腕が冴えたからに他ならない。
 本書では、こうしてカラヤンが駆け出しの頃から領土を拡張し、ベルリン、ウィーン、ロンドンと制圧していく姿を時間を追って描いている。ウィーンを手放した後はベルリンとの関係が深まり、カラヤン・ベルリンフィルの強力な関係ができ上がる。反面オペラを演奏する機会はあまりなかった。
 しかし、カラヤンも年齢には勝てない。ベルリンフィルとの間にも不協和音が聞こえてくるようになる。とりわけ有名なのが、サビーネ・マイヤーという女性クラリネット奏者の採用をめぐって楽員と鋭く対立した事件である。
 そこからは低迷する一途で、カラヤンは失意のうちに亡くなるわけである。日本との関係にも触れられている。中川氏によれば、日本はカラヤンにとって『植民地』だったという。本書では日本は『植民地』という表現が使われている。上得意だったということである。聴衆の金離れもよい。演奏会は常に満席である。本当に良いお客さんだったようだ。
 政治的な手腕や交渉術に長けている人は珍しくない。しかし、指揮者としての才能が秀でた人はそうはいない。この2つが結びついたからこそカラヤン帝国が出現したわけである。本書はカラヤンがいかに帝国を築いていったか、いかに領土を拡張していったか、いかに老いて没落していったかが丁寧に時間を追って記している。まるで小説でも読んだかのような読後感があった。
 カラヤンが来日した際、某大学オケの学生がカラヤンに指揮を依頼したところ、快く引き受けて実際に練習場に姿を現し、皆を驚かせたこともあった。意外な一面を持っていたのも確かだったようだ。

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2008/05/13 22:54

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2008/09/06 20:42

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2010/09/07 21:44

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2011/06/05 12:52

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2012/05/26 22:00

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2014/01/09 10:13

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