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竜馬像の原型
2009/05/09 03:45
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白みそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある小説の登場前後で、歴史上の人物の評価が一変することがまれにある。
例えば、吉川英治が宮本武蔵を描かなければ「五輪の書」が現在のように広く読まれることはなかったであろう。吉川英治が描いた武蔵は、現代の日本人が描く武蔵像そのものであるといっても言い過ぎではない。
坂本竜馬についても、同じことが言える。司馬遼太郎が描く竜馬は現代の日本人の竜馬像そのものといえるだろう。
だが、どれだけ史料を渉猟しても、小説である以上、それは作者が創作した世界であり、その小説が優れたものであればあるほど、作者の創造力がその世界に巧みに組み込まれているものなのだ。
司馬遼太郎が描く竜馬は魅力的である。もちろん、竜馬がもともと魅力的な人物でなければ司馬が小説の主人公に選ぶことはなかったであろうが、史料の中に埋もれかけ、教科書や百科事典の中にしか記されない人物になりかねなかった人物をこれほど生きいきした姿で描く司馬遼太郎の想像力は驚嘆に値する。
多くの読者が、小説であると知りながら、司馬の描く竜馬が坂本竜馬そのものであるという感覚にとらわれるのは、史料という縦糸と自己の創造力という横糸を巧みに織りあげた作者の力量ゆえであろう。
司馬は吉川の作り上げた武蔵像に挑戦するように「真説 宮本武蔵」を著した。司馬の作り上げた竜馬像に挑戦し成功する小説家は現れるであろうか。
竜馬がゆく
2006/10/09 20:13
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読み幕末という時代に興味を持ちました。
今までこれほど影響を受けた本はありません。
読めば読むほど引き込まれていく。
そんな魅力のある本です。
いきなり痛快な剣士の生い立ちに魅了された
2020/08/23 09:20
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
身の回りでよくみる有名な竜馬の写真。その風貌だけではそれほど豪傑な人柄とは思えなかったことと、文庫8巻分の長さに圧倒されていたことで食わず嫌い的にこの本を手に取ることを避けていた。しかし同じく風貌だけで少し敬遠していた高杉晋作を『世に棲む日々』で読み、その生き方に感銘を受けたあと、同じく幕末を動かした竜馬を読まなければと思い立ち手に取った。
今まで読まなかったことが迂闊だった。巻を開き、いきなり数ページ目から面白い。竜馬の素直で飾らない生き方、そして剣士として成長していく過程を武市半平太、桂小五郎など剣の達人たちとの息をのむような出会いや、魅力溢れる女性たちとの甘酸っぱいやりとりなどが織り交ぜられながら描かれていく。
片道20分ばかりの毎日の電車の中でページをめくる速度はどんどん上がってゆき、数日で読み終えてしまった。それほど痛快で面白く、また全くの素人である私も剣道の世界の精神的深さとその歴史に引きずりこまれていった。
司馬先生の代表作を食わず嫌いした自分を恥ずかしく思った一冊だった。
永遠のバイブル
2019/02/05 09:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説で龍馬が人気者になってから「実は坂本龍馬なんて、すごい人じゃなかったんですよ」的な本がたくさん出版されたと思いますが、そんなことは関係ありません。私が尊敬するのはいつまでも、司馬氏の本に出てくる龍馬なのですから
僕は、司馬さんの作品から大いに日本史を学んだ。司馬さん、ありがとう。
2011/09/21 03:18
6人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トグサ - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬作品ほど日本人によく読まれている作家はいないと思います。
僕は、漱石と並んで、司馬さんは、偉大な国民的作家であると思っています。
が、今は、『この国かたち』の影響でしょうか。
ネットを中心に活動している、にわか保守(保守陣営には、高坂正堯さんはじめ学ぶべき人は大勢いるので、失礼のないように便宜的にこう呼ばせてもらいます。)に、おもちゃか何かのように扱われ、また、ほとんど『この国のかたち』の類の本を、ほんの少しなぞっただけの左翼連中に、心ない攻撃をされている現状は、とてもやるせない気持ちで一杯です。
もともと司馬さんが、過去の日本人を躍動感溢れ描いたのは、司馬さんの「敗戦で落ち込んだ日本人を少しでも勇気づけたい」という心意気がありました。
現在、”原発”の是非を中心に、被災者の人々の心とは、無縁な形で、ネット上では心無い無責任な言葉が交わされています。
今後、司馬さんのような心意気を持った作家なり芸術家が果たして現れるでしょうか。
また、司馬さんには直観像資質という特異な才能があり、膨大な資料を読みほぐしてから、作品を構築しています。
直観像資質:自分が読んだ本が映像として頭の中に映り、この資質の持ち主は、この映像をなぞることによって、その本の内容を再現できる。
余談ですが、少年Aもこの特異的才能の持ち主であったらしい。
司馬さんと同じ関西人である僕は、司馬さんと同じく腹黒い徳川家康が大嫌いです。
関西以外の人には、中々理解してもらえないのですが、あの大坂の陣が負けたことを口惜しくて口惜しくて仕方ないという関西人は、少なくないのではないでしょうか。
最近、何か本になりましたね^^
さてはて、肝心の『竜馬がゆく』ですが、何故、本棚に全巻揃っていたのか、今では定かではありませんが、ふとなにげなく第1巻をとってみると、みるみるその世界にはまり込み、面白くて面白くて、全巻、読み通すのに、1週間もかからなかったと思います。
山本周五郎の市井の歴史に埋もれた人を描く作品は、たしかに面白いのですが、僕にとってどうも貧乏臭く感じていました。
吉川英治の『宮本武蔵』は、全て全てそう描いているわけではないだろうが、聖人君子の立派な話を読まされているようで、『宮本武蔵』は半ば義務感で読み終えました。
ところが、司馬さんの作品は違う。
司馬作品の主人公たちには、躍動感溢れ、わくわくさせられ、胸踊るのである。
また、ステロタイプされない人物ばかりです。
豪傑と呼ばれる人物にも、どこかおかしみがあり、人間的かわいらしさを併せ持つのである。
果たして、今盛んに叫ばれている正々堂々とした武士なんて、ほんとに実在したのでしょうか?
司馬作品に登場する武士は、『竜馬がゆく』は、どこな爽やかですが、他の作品では、大抵、抜け目なく、時に卑怯な手も使う一筋縄で行かない手練の者たちばかりでした。
そうじゃないと、彼らは生き残れなかった。
今では、“命”こそ極上の価値で、長生きすることのみが至上命題となっているようですが、我々には、命を賭してでも守らなければならないものがあるはず。
自分の国??
はぁ??
僕にとって、それは名誉や誇りであるかもしれない。
僕の最も尊敬する人物。
真田幸村親子。
今、歴女と呼ばれる人たちが出没し、再び歴史にスポットライトが当たっているようですが、ゲーム上の人物だけではなく、九度山の不遇時代、大名という身分であった幸村が、どんな心情で金の無心をしていたかなどにも思いを馳せて欲しい。
大阪の陣で、幸村が思いを描いていたのは、歴史上に自分の名を残すのだいう想いのみのはず。
それは、あるいは誇りのようなものかも知れない。
話は、大分それますが、ルース・ベネディクト『菊と刀』で一般に流布されている(実際の内容は違うらしいですが)「日本人の恥の文化」。
たしかに、そのような世間様に恥ずかしいという、いわば横のベクトルが働く”恥”の文化を、かつては持っていたように思います。
でも、僕は前々から思っていたのですが、われわれは、ご先祖様に恥ずかしい、末代までの恥という、いわば縦へと連なる“恥”の文化も持つ。
縦へと連なる“恥”の文化は、倫理、人間としての誇りを生み出すのではないでしょうか。
バブル以降、日本人は変質してしまい、こんな事を言ってみても虚しいばかりですが。
これも司馬の作品に詳しいが、真田幸村は、しかし、決して圧倒的不利な状況でも、籠城を主張したり、負けない戦さを主張したのではない。
家康の首を取りに行ったのである。
あの時、秀頼が太閤桐の家紋をつけた旗を掲げて、戦場に、ほんの少し登場していてくれたりしたら・・・。
なにも武人だけではない、わが街にも、命をもって江戸まで出かけ直訴した人々も存在する。
僕は、今の日本史などほとんど解っていないであろう連中が、“日本大好き、日本大好き”と連呼する状況を、とても苦々しく思っています。
日本史を知ろうと思う方には、是非、司馬作品をお勧めします。
面白くて、愉快で、それでいて学べる。
他に、読んだ時の詳しい印象を忘れてしまったのですが、やはり『坂の上の雲』。
『新選組血風録』なんか読むと、戦地で散るよりも内規で粛清されたものの方が圧倒的に多い、この異常集団の特異さが解ると思います。
僕の記憶が確かなら、どこかの作品で「新選組」のことを、司馬は単なる“人斬り集団”と切って捨てていたはずだ。
だが、この集団がおそらく今日の武士のイメージを形作ったのであろう、桜の花のように、儚い命で消えていく彼らは、やはり美しい。
また、乃木のことを司馬は、どうしようもない無能な人と描いていたはずだ。
そういう事を、今日のにわか保守の面々は、知っているのであろうか。
意外なところでは『項羽と劉邦』も、とても面白かったです。
歴史は、なにも武将然とした項羽に傾かなかった。
ほんと歴史は、奥深く、興味が尽きない。
『国盗り物語』で乱世に生きる人々のしたたかさを堪能するのもいい。
歴史上の出来事において、推し量るとき、現代の尺度、価値観でもってすべきでない。
そんな歴史を語る上でのイロハも司馬さんから学びました。
昔の日本人が持っていた判官びいき。
勝者よりも敗者に愛着を感じる心情。
司馬の作品は、確かに誰もが知る英雄たちを扱いながら、そんな心情に彩られている。
ちなみに、判官とは、源義経のことである。
僕自身の興味は、もはや大名や偉大な人物よりも、江戸の粋な町人、歴史自体への流れ、の方へ行っているが、ティーン・エイジャーの頃に、司馬遼太郎に出会えたことに、感謝のしようがない。
歴史に「もし、たら」など存在しないのかも知れない。
しかし、後世の人間が、歴史について、様々な想像を巡らすことほど楽しいものはない。
今は、幸村が九度山で軍略本を一心不乱に読んで耐え忍んでいたような時期なのかも知れない。
なんで、こんな日本になってしまったのやら。
大人になる前に志を学ぶための必読書
2005/01/18 23:23
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kaz0775 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大人(社会人)になる前にこの本を読んでおくことを強く奨める。幕末の動乱期。坂本龍馬の偉業を一言でいえば、尊皇攘夷派と開国派、ポスト政権をねらう薩摩、長州の対立を収束させた陰の立役者。現政権の敵・味方、正義や生硬な理念を振りかざすのでなく、動物的感覚で時流を判断して、世の中の流れに関わっていく志には文句なしに引きつけられる。
彼の判断の価値基準はいったい何だったろうか。文章の表層には現れていないが、それは、教義、イデオロギーではなく、資本主義の経済の論理と感じる。理屈で押し通す長州、薩摩を説き伏せたのも最後は現実的な損得のロジックだった。清河八郎に集められた浪人が行き場をなくしたとき,北海道開拓をその行き先として提案したり、亀岡社中という貿易会社を興して軍事力ならぬ経済力で組織の力をアピールした事から、彼は資本主義が日本の富国だけでなく、社会として国民の利になることを実践した最初の日本人のように思える。
彼が生きていた時代、人を動かす動機づけは、封建制に基づく立場の利害は当然の事として、自分が属する組織との一体感、献身の美徳であった。ゆえに幕末の騒動時に水戸学派のような狂信的な国粋主義が跋扈していたわけで、竜馬がその異様な盛り上がりを冷静に傍観していたのは評価すべきことだ。
思想の異なる藩、国家が連係するには、あくまでも現実的な(経済的な)交渉こそが意味を持つことを竜馬はみぬいていた。
「竜馬がゆく」のあちこちに影のように登場する岩崎弥太郎は、その後、後藤象二郎の庇護のもと、生きながらえて、日本の資本主義経済社会を築いていく。ある意味では竜馬が光だとすると、彼は影のような存在である。歴史の皮肉なところは、光が先に消え、影だけが残ったことだ。
現在の社会もみると、資本主義は世界を譴責し、多くの課題を我々に提示している。これは竜馬が我々に残した課題かもしれない。本書を読んだ若人がその課題を解きほどく志を抱いてほしいと願ってやまない。
まさしく“歴史は小説よりドラマティックなのかもしれない。”
2003/11/09 01:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
激動の時代を生き抜いた幕末の若者たちが次々と登場してくるシーンは読んでいてワクワクさせてくれる。
1巻目は竜馬が土佐から江戸に出て、千葉道場に入門、一旦土佐に戻ってふたたび江戸に戻り、安政諸流試合で桂小五郎と対戦するまでを描いている。
年齢で言えば、19歳から23歳当たりまでで、時代的にはペリーが浦賀に来航した年前後。
竜馬自身、剣術に励み、思想的にはまだ固まってない感もあるが、持ち前の独特の物怖じしない気性は存分に発揮されていて、とにかく爽快に読める点が嬉しい限りである。
とにかく本書はいろんなエピソードが怒涛の如く読者の前に提供される。
個人的には桂小五郎との運命的な出会いが印象的だ。
また、女性に対する初心な気持ちなんかも読んでいて面白い。
共に竜馬に惚れるさな子の意地らしさとお田鶴の切なさ、あと冒頭における姉の乙女の一本気な性格も印象的だ。
このシリーズの魅力のひとつに次々と史上の有名人物が出てくる点があげれると思うが、三菱王国を築いた岩崎弥太郎が出てきたシーンなんかは思わず驚愕した。
司馬さんは、1巻目は竜馬の自由奔放さを読者に垣間見させたかったのだと思っております。
ひとつ褒め称えたいのは、あるエピソードがあって、その事後談を結構わかりやすく読者に提供してくれるのも司馬文学の特徴であるような気がした。
土佐の高知が生み出した男・竜馬
2002/05/18 23:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は高知出身でありながら、竜馬の逸話をほとんど知らなかった。でもあまりに有名なこの本を読まないでいるのも…といった程度で手にしたはずが、あっという間に竜馬と司馬遼のファンに。激動の時代、薩長同盟という当時では絶対無茶だと言われた同盟を結ばせ、大政奉還にまでこぎ着けた男。剣の腕前は一品で、不思議と誰からも好かれる愛嬌を持ち、自らの足だけを頼りに日本全国を奔走する様はひどく痛快だ。日本の歴史をこれほど楽しいと実感したのも初めてであった。勝海舟や西郷隆盛などの歴史上の重要人物もさることながら、乙女ねえやにお竜など、竜馬を取り巻く愛すべき人物達の描写も見事! 読み終えた後は何だか充実感でいっぱいであった。歴史が苦手な方にもオススメの作品だ。
最高傑作
2002/04/24 15:35
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投稿者:キシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎の作品はかなり読みましたが、「竜馬がゆく」は僕の読んだ中で、この作品の右に出る物はないような気がします。
金も権力もない人間が自分の志一つで、今の世の中を変えられるわけがないのに、竜馬はやってのける、その姿を見ると自分にも何か出来る事があるんではないかと思わしてくれます。「世に生を得るは、事を為すにあり」この竜馬が言った言葉は、一生忘れないくらい生きる力が湧きます。今の混沌とした世の中だからこそ竜馬の生き様を読んで何かを感じ取って欲しいと思います。
いうまでもない名作
2002/02/05 10:23
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投稿者:LR45 - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎の代表作といってもいいくらいの有名作。内容は坂本竜馬を描いた作品で、司馬遼太郎のもう一つの代表作「坂の上の雲」と比べると竜馬がゆくの方が読みやすいし、小説っぽい。
一巻は竜馬誕生から江戸剣術修業時代までを描く。
司馬遼太郎の作品には読みにくいものが稀にあると思うのだが、竜馬がゆくは極めて読みやすい。時代が幕末ということもあって、歴史に全く興味がない人には尊王攘夷だとか倒幕だとかという用語がわかりづらいと思うが、そういうのを考慮に入れても面白い小説だと思う。歴史好きならなおのことである。
一人の人間の力が時代を動かす!
2001/04/03 19:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:blues - この投稿者のレビュー一覧を見る
坂本竜馬。その名前と歴史的偉業、人気の高さは誰でも知っているが、それ以上はあまり知らない、私自身そうだった。あらためてその人物にせまってみようと思って読んだところ、完全に坂本竜馬の虜になってしまった。時代に対する一人の人間がもつ影響力、坂本竜馬の魅力はそこにあると思う。
「薩長連合、大政奉還、あれァ、ぜんぶ竜馬一人がやったことさ」と勝海舟が言ったように、坂本竜馬はまさに幕末の奇蹟である。司馬さん特有の生き生きとした人物描写、竜馬以外の人物もたいへん魅力的だ。
この本を読めば、竜馬を知っている人でも、まだよく知らないという人も坂本竜馬を好きになると思う。
坂本龍馬を描いて空前絶後、歴史に残る傑作
2010/07/04 23:24
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞連載の後、昭和41年に刊行された司馬遼太郎の初期の作品です。司馬遼太郎の著作は『梟の城』『国盗り物語』『新撰組血風録』『項羽と劉邦』は面白く読んだのですが、『翔ぶが如く』や『空海の風景』となると西郷隆盛、空海の評伝のようで、なるほどと勉強にはなったがロマンとしてわくわくするところがありませんでした。今のところ司馬遼太郎の代表作といわれる『坂の上の雲』も日露戦争論のように思えて読む気持ちになれません。
『竜馬がゆく』を読んでいるんだけどすごく面白いんだな、と言ったら、友達連中から何十年も前のものだろう、今頃になって読んでいるのかと茶化されてしまいました。たしかに、私が会社に入ったころですから40年以上も前の作品になります。そして、今放映中のNHK大河ドラマ『龍馬伝』を欠かさず見ていると坂本龍馬のことはまるで知らなかったんだと気づく。
だいたい幕末や明治維新の歴史などほとんど知らないんですね。中学・高校の歴史の勉強は「人はいつ見たペリーの黒船」から「いやむなしくと大政奉還」までの年次暗記でしたから。
思えば小学生の時に熱狂した嵐寛寿郎の主演した映画・鞍馬天狗がいけませんでした。勤皇の志士を助ける正義の剣士です。だから幕府を倒そうと命を賭ける勤皇の志士はよい人、幕府を守り勤皇の志士に白刃を振るう新撰組は悪い人。なにしろ「杉作!もうすぐ日本の夜明けだ。」などのセリフが印象的でしたから、勤皇は将来を見通せる開国主義で幕府は頑固な鎖国主義だと刷り込まれてしまいました。尊王がどうして攘夷なんだろう?とこの刷り込みがなんとなく変だと感じたことはありました。でもあまり深く追求しませんでした。それで特段困ったということがあったかといえば、そんな記憶は全くありません。幸いにしてこれまでの人生では「君は坂本龍馬の生きかたをどう思うか?」というような愚問にはあわずにこられました。
文芸春秋社文庫版は全8巻で、第4巻まで読み終わったところです。
第1巻 竜馬19歳~23歳
「薩長連合、大政奉還、あれァ、ぜんぶ竜馬一人がやったことさと、勝海舟はいった。坂本竜馬は幕末維新史上の奇蹟といわれる。かれは土佐の郷土の次男坊にすぎず、しかも浪人の身でありながらこの大動乱期に卓抜した仕事をなしえた。竜馬の劇的な生涯を中心に、同じ時代を生きた若者たちを描く長編小説全八巻」
1853年 ペリー来航。竜馬は19歳、千葉道場で剣術修業
1854年 日米和親条約
第2巻 竜馬24歳~28歳
「黒船の出現以来、猛然と湧き上がった勤皇・攘夷の勢力と、巻き返しを図る幕府との抗争は次第に激化してきた。先進の薩摩、長州に遅れまいと、固陋な土佐藩でクーデターを起こし、藩ぐるみ勤皇化して天下へ押し出そうとする武市半平太のやり方に、限界を感じた坂本竜馬は、さらに大きな飛躍を求めて、ついに脱藩した。」
1858年 井伊直弼、大老に就任
同年 日米修好通商条約
同年 安政の大獄、始まる
1860年 勝海舟 咸臨丸訪米
同年 桜田門外の変
1861年 土佐勤皇党結成
1862年 吉田東洋暗殺
第3巻 竜馬28歳~29歳
「浪人となった竜馬は、幕府の要職にある勝海舟と運命的な出会いをする。勝との触れ合いによって、かれはどの勤王の志士ともちがう独自の道を歩き始めた。生麦事件など攘夷熱の高まる中で竜馬は逆に日本は開国して、海外と交易しなければならない、とひそかに考える。そのためにこそ幕府を倒さなければならないのだ、とも。」
1862年 寺田屋騒動
同年 生麦事件
第4巻 竜馬29歳~30歳
「志士たちで船隊を操り、大いに交易をやり、時いたらば倒幕のために海軍にする………竜馬の志士活動の発想は奇異であり、ホラ吹きといわれた。世の中はそんな竜馬の迂遠さを嘲笑うように騒然としている。反動の時代………長州の没落、薩摩の保守化、土佐の勤王政権も瓦解した。が、竜馬はついに一隻の軍艦を手に入れたのであった。」
1863年 長州藩、米・仏・蘭艦船を砲撃
同年 高杉晋作、奇兵隊
同年 イギリス艦隊、薩摩藩を攻撃
同年 天誅組(土佐脱藩人が主力)大和で決起、やがて壊滅
同年 禁門の変(七卿落ち)、薩摩・会津による長州追い落としのクーデター
同年 土佐勤皇党・武市半平太、死罪切腹
一気にここまでを読みきりました。とにかく受験用でしたから幕末史を事件の名称と年次だけの断片で理解してきたものにとっては、それぞれの事件の因果がつまびらかにされるプロセスはまさに大型エンタテインメント並み。ドラマティックであり、上等なミステリー同様に謎の提起と謎解きの連続です。その緊迫感を大いに楽しむことができました。坂本竜馬の人物像はなるほど魅力的ですね。圧倒的に強い剣客としての見せ場もふんだんです。それぞれが剣豪小説なみの工夫があります。NHKドラマではこの凄さがありません。竜馬に思いを寄せる美女たちの競艶も詳細でして、これもNHKドラマにはない楽しさがいっぱいでした。
さて、この作品はあえて「竜馬」であって「龍馬」ではありません。司馬遼太郎はもちろん坂本龍馬の史料を丹念に分析した上でのことですが、著者自身の自由な発想で思い切り濃い味付けをした司馬龍馬を作りたかったのではないでしょうか。すでに坂本龍馬は国民的な英雄として定着しています。ただし、おそらく誰しもがイメージするのは司馬遼太郎の手になる坂本竜馬像です。そしてこのイメージを変えるような坂本龍馬はこれからも登場しないのではないかと思われます。坂本龍馬を描いて空前絶後、歴史に残る傑作と言えます。
さすが司馬遼太郎
2017/12/14 13:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:本大好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎は面白い。龍馬の名が知れ渡るきっかけにもなった1冊。
30代にして初めて読む竜馬がゆく
2012/08/05 15:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sleeping lion - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで多くの方から一度は読んだ方がいいよ、と言われつつ30年。
やっと、読んでみようかと思った。
で、読みました。
面白い!なるほど、大人の皆さんが進める理由がわかったわ。
坂本龍馬という男はどうしてできたのか。
幕末という時代に生まれ、土佐という上下関係の厳格すぎる藩に生まれ、
偶然の積み重ねで彼は坂本龍馬になった。
坂本龍馬が取る判断、結果的に行う行動、考え方。
この本をもしかしたら、就職活動前に読んでおいた方が良い本かもしれない。
自分が置かれた環境、自分が育ってきた環境、自分は何をすべきなのか。
龍馬の自問自答が、時に自分が置かれている状況とも重なる。
それが、今この時代を生きる私達にもきっとヒントになります。
まだまだ1巻目は序盤、土佐から江戸へ剣術修行へ旅立つところから、
江戸における他流試合までを収録。幕末はまだ、黒船が来たばかりの頃です。
これから読み進めるのが楽しみです。
坂本龍馬のイメージを植え付けた大著
2021/07/31 19:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
坂本龍馬のイメージを日本人に植え付けることとなった著者の代表作。世間に膾炙される坂本龍馬の人物像は本書に端を発しているわけで、こんなことを成し遂げられるのは著者以外に知らない。さて本巻は土佐藩の郷士の家に生まれた龍馬が江戸への剣術修行に赴き、ペリーの浦賀来航による社会の動揺と、そこで幕末明治初期に名を残す人物と出逢うところまで。描かれていることの大半はフィクションらしいのだが、時代が大きく動くなかで龍馬の英雄的なキャラクターが徐々に芽生え始める様子が実に躍動的に描かれ楽しい読書だった。