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京都の上っ面をなでて、ひたすら持ち上げるだけの、 既存の案内書に物足りなさを感じている方々に、うってつけ
2021/05/30 23:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
いなかもの。
おのぼりさん。
この本には、前者が8回、後者が22回登場します。
288頁ある文庫版で本書を読むとすると、
10頁に1回以上の頻度で
これらの言葉に出くわす計算になります。
もっともこれは、巻頭で著者が自分事として述べている、
「京都の人間の度しがたい中華思想のあらわれ」
のほんの一例に過ぎません。
また、こういう類の言葉を繰り返し用いてしまう態度は、
著者の性格に関する予備知識があれば、つまり例えば、
井上章一氏の「京都ぎらい」で取り上げられた
著者にまつわる挿話を知っていれば、
ちっとも意外ではありません。
これに類するくだりをさらりと受け流しつつ
読み進んでゆける人だけが、
この小冊の持つ滋味に辿り着けます。
最後に一つ言い添えておくと、
かの地への来訪者に対して、
常に愛想良く卒なく発せられる、
おいでやす、おおきに、の裏には、
この本の文面からうかがわれる心情が、
べったりと張り付いていてもおかしくない。
そう想像することは、いにしえの都での滞在を、
ある意味でずっと味わい深いものにしてくれるはずです。
大人向きの京都非観光ガイドブック
2005/11/01 08:21
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書が発刊されたのは1987年だという。私が仲間たちと一緒に民博館長だった梅棹氏の話をお聞きしたのはたしか1985年だったので、その2年後ということになる。梅棹氏といえば民族学博物館が思い浮かぶが、私は情報に関心を持ち続ける梅棹氏を知っていた。『知的生産の技術』であり、京大式カードであり、『情報産業論』である。
しかし本職は民族学だというではないか。不勉強な私には情報産業論も民族学も自分の中でしっかりとした像を結ばないうちに消滅してしまった。
その梅棹氏が書いた『梅棹忠夫の京都案内』が書店で目に止まったので手に取ってみたわけである。さすがに面白い。タイトルだけを見ていると何やら観光ガイドブックと見紛うようだが、当然観光案内ではなく、京都の文化紹介が主題になっている。
今までにも私は30年以上前に松本清張の書いた新書版のイラスト付案内書を読んだことがある。これも単なる観光案内だが、案内の対象を清張が選択し、解説を書いたものらしかった。
本書は初めの部分は京都の名所、すなわち寺社を解説したガイドになっている。これ以降は梅棹氏がそれまでに様々なメディアに書き綴った文章、原稿を京都案内にふさわしい体裁に集大成したものである。概して古いものが多く、昭和30年代のものも少なくない。
わが国で初めて走った路面電車や太秦の映画産業の話などいかにも京都の雰囲気が漂ってくる。京都という街は観光で成り立っているわけではない。人口100万人を超える都市が観光だけで喰っていけるわけがないという。
その京都という都市は戦後どの方面に活路を見出すべきかという課題に対して、梅棹氏は次のように提言している。つまり儀典都市である。政治や行政は霞ヶ関や永田町で行えば結構だが、天皇家が行う国事や皇室外交、皇室の儀典は京都で行うようにするというものである。天皇には京都にお帰り願えればよいという。
さすがに近年このような議論はあまり聞かないのだが、たしかに京都には御所もあるし、歴史的には京都が都であった期間が長いので、そういう議論もあったのだろう。
一方で、観光都市ではない京都は観光客に案外冷たいという。この頃にして観光客のマナーに対して厳しく、一見の客お断りなど京都の風習は、観光客に迎合することなく、京都市民のための文化、風習、習慣を守るべきだと主張する。
最後には京ことばに頁が割かれている。梅棹氏がある大学ですべて京ことばで講演をした原稿が紹介されている。読んでみてもなかなか面白い。もちろん、文章では抑揚が伝わらないのだが、それでも雰囲気は掴むことができる。ただし、講演に京ことばは向かないと結論付けている。本来会話向きのことばなので、講演のように多数に対して訴えるようにはできていないという。
かなり古い内容ではあるが、梅棹氏らしい主張を随所に見出すことができ、ふと目にして買い求めた文庫本としては大きな収穫があったと思う。
これこそ正統派京都案内
2012/05/30 10:33
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の観光案内は、きれいなカラー写真でまずは名所(神社仏閣)の紹介。次にグルメに名物、宿と続く。写真はプロが腕によりをかけて撮った、それはそれは美しいもので、さらに美しい部分だけが切り取られており、実際にそれほど美しい場面に出会えることは、滅多にない。グルメや名物も雑誌に載るようなものは、観光客向けであることが多いし、本当に伝統あるものでも、持ち帰った先の自分の暮らしにそぐわしいものであるかは、疑問だ。
だからといって、京都に魅力がないわけではない。京都はもっと奥深いものである。だから、京都を本当に味わいたいならば、活字ばかりのこの正統派京都案内を読んで出かけるのがいい。その方がずっと感動できるはずだ。
その点、本書は文章もしっかりしていて、京都人の町に対する思いや観光客に対する思いも伝わってくる。時に京都人(著者)の中華思想に辟易させられるが、それもまた京都の本質なのだと思う。
「京ことば」の章は、CDでも付けてもらわなければ、細かいニュアンスが分からないが、それを聴くためにだけでも、京都に出かけたくなる。関西の言葉を、関西弁と一括りにしてはいけない。滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良、みんな違う言葉を話している。
文庫化された2004年に加筆されたとはいえ、初版が1987年のため紙面が古くなってきているので、今の京都を伝える新たな洗練された京都案内をだれかが書いてくれることを待っています。
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